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【GPT活用事例】 アーティストをAI化!「A.I.村治奏一」から感じたAI時代のファンコミュニケーションのあり方とは?

アーティストと会話ができるAIの登場

AIによって、アーティストの「ファンコミュニケーション」のあり方が大きく変わるのではないか?そんな可能性を感じさせられたのが「A.I.村治奏一」。

今回は、A.I.村治奏一の事例を実際に追って見えた、その可能性について触れていきます。

A.I.村治奏一とは?

「A.I.村治奏一」は、プロのクラシックギタリストとして大活躍されている村治奏一さんが、弊社の運営するmiiboを利用し、自ら開発をされたAIです。

村治奏一さんの公式サイト:

A.I.村治奏一の紹介 (公式サイトより)

村治奏一さんがトレーニングを行ったAIと、LINEもしくはWeb上で会話をすることが可能です。


会話の様子

日々、コツコツAIのトレーニングを行っているという村治さん。GPT-3.5登場直後からAIの開発に着手されており、すでにかなりの話題についてトレーニングが行われています。

コンサートの情報からギターに関する相談、プライベートな話まで、多種多様な会話を行えます。

LINEでの会話の様子
プライベートな質問にも回答


綿密なトレーニングにより、村治さんの個性も強く反映されています。初見の方はもちろん、村治さんをよく知るファンは特に会話を楽しめるAIとなっています。

アーティストのAIはどう活用されているのか?

「A.I.村治奏一」が担っている役割は主に3つありそうでした。

  1. ファンコミュニケーションの裾の尾を広げる

  2. ニーズを幅広く吸い上げる

  3. 本人とのコラボで楽しませる

1つ1つを見ていきましょう。

AIがファンコミュニケーションの裾の尾を広げる

「ファンの方やクラシックギターを嗜まれる方から様々な質問をいただくことはあるが、身一つでは常に受け付けることには限界がある」

元々、村治さんは上記のような想いを抱いていたと言います。この「もどかしさ」がA.I.村治奏一開発の原動力だったそうです。

アーティストのAIとファンが会話をできることは、身一つではできなかった、幅広いファンコミュニケーションを可能にしました。

ギターの悩み相談に親身に対応するA.I.村治奏一


そして、一昔前の「ロボット感」のあるチャットボットではない点がポイントです。GPTの能力を活かし、親しみのある会話ができるようトレーニングされています。

村治さん本人に直接質問するには遠慮をしてしまうような質問も、AIなら気軽に聞けますね。アーティストとファンのタッチポイントを増やしたり、より親近感を抱かせるために、アーティストのAI化は有効な手段と言えそうです。

ファンのニーズを幅広く吸い上げる

AIとの会話は、アーティスト本人へ還元されます。
ファンが何を求めているのか、どんなことを知りたがっているのか、AIとファンの会話を通して知ることができます。身一つでは吸い上げられなかったより多くの生の声を、吸い上げることができるようになっています。

AIとの会話でアーティスト本人へより親しみをもってもらい、実際にコンサートを訪れる。そして、コンサートの帰り道にAIに感想を伝え、その想いがアーティスト本人にも伝わり、次の活動の源泉となっていく・・・。

村治さんの取り組みを見ていると、こんな循環が確かに生まれています。
アーティストのAIは、ファンと本人をより密接につなぐ存在になり得るのだと感じます。

アーティスト本人とのコラボで楽しませる

私もA.I.村治奏一にコンサート情報を聞き、実際にコンサートへ行きました。
そこで驚いたのが、AIとアーティスト本人のコラボ演出でした。

下記の写真は、実際にコンサートで配布されていた演奏のプログラムです。

コンサートのプログラムの様子

演奏される曲目が書かれているのですが、なんと一部の曲は、A.I.村治奏一が選曲をしています。村治さんは曲のレパートリーをAIに学習させており、コンサートの内容に合わせて選曲をさせることができます。

そしてさらに、クラシックコンサートでは曲解説(プログラムノート)が配布されることが多いのですが、このコンサートでは「A.I.村治奏一」がすべての曲解説を手掛けていました。

いずれの事例も、強力な「生成AI」であるGPTの強みを生かした、とても粋な演出でワクワクしました。

他にも様々なコラボ方法があり得るかもしれません!

Generative AI時代のチャットボット

ここまでのA.I.村治奏一の事例で、AIがファンコミュニケーションにもたらす可能性の片鱗を感じていただけたかと思います。

こういった体験は、従来のチャットボットでは表現できないものでした。

GPTを始めとする表現力豊かな「Generative AI」は、個人の個性を反映した魅力的なAIを生み出すことが可能です。Generative AIが急激な進化を遂げている今、AIによるファンコミュニケーションは大きく進化していくものと、期待が膨らみます。

村治さんは、A.I.村治奏一を開発するに当たり、「GPT-3.5-turbo」を活用されています。(2023.7.16時点)

課題は生成AIの自由な発言のコントロール

A.I.村治奏一のようなAIを生み出すことの課題は、生成AIのアンコントローラブルな側面です。

生成AIは性質上、事実をでっちあげたり、開発者の意図しない発言をしてしまう可能性があります。アーティスト本人にとって、AIの失言がネガティブな影響を与えてしまう可能性もあります。

これを如何にコントロールし、リスクの少ない状態で提供をしていくかが鍵となります。村治さんは、A.I.村治奏一を作るに当たり、下記のような工夫を施されています。

  • プロンプトの工夫

  • 会話のログを見ながらPDCAを回す

  • 豊富なデータでトレーニングする

  • 一部「決め打ち」の応答を用意して、ブレてはいけない発言を固定する

  • 本人とは異なる「分身AI」としての新たな存在である、というコンセプトを明確に打ち出す

上手く生成AIの課題と向かい合いながら、開発を行っていただいています。
今後、GPT-4がより一般化したり、様々な高精度なLLMが登場すると、こういった課題もより軽減されるものと予想されます。

まとめ

自身のAIが本人の可能性を広げる

村治さんがより多くのファンの質問に寄り添いたいと思ったように、人間身一つでは限界があります。その制約を乗り越えられるのがAIのポテンシャルです。

インターネットの登場によって人々のできることの幅が大きく広がったように、AIの活用もまた、人々の活動の幅を拡張する大きなポテンシャルを秘めています。

今後、A.I.村治奏一がどのように進化していくか、目が離せません。

AI開発は民主化されていく

上述した通りハードルはまだ多いものの、自分でAIを構築する敷居は下がってきています。村治さんが開発に当たって利用を頂いた、弊社のmiiboというサービスも、AI開発を民主化するためのソリューションです。生成AIのアンコントローラブルな側面を補うための機能も多数そろえています。

エンジニアでなくても、誰もがAIを作成して自分を拡張できる、そんな時代が近づいています。今回の村治さんの事例のように、より多くの人がAIを作り、様々な面白い試みが行われていくと良いですね。

おわりに

miiboをご活用いただき、このような面白い試みにチャレンジされている村治さんに、この場を借りて感謝申し上げます。

A.I.村治奏一とは下記のリンクから会話ができます。
村治さんは、全国各地でコンサートを実施されています。ぜひA.I.村治奏一に次のコンサート情報を尋ねてみてくださいね。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
本記事でAI開発に興味をお持ちいただけた方は、ぜひ挑戦してみてください。


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