スプラトゥーン3で見る駆け引きの作り方
この記事はSplathon Advent Calendar 2023の12日目の記事です。
メリークリスマス!🎄(遅刻)
投稿がものすっごく遅れてしまいすみません。
いや、でもさ。これにはやんごとなき事情があって・・・。
ちょうど記事公開の直前のタイミングでコロナにかかったんですよ・・・。
つらい・・・。
それはさておき、この記事は「まけトピアのゲームについて思うこと 第N回」・・・ではないですが、スプラトゥーン3を題材にして、駆け引きの作られ方について考えてみたいと思います。
対戦ゲームにおける駆け引きとは
リスクとリターンの性質が異なる、複数の選択肢の中から1つを選ぶ場面のことを、「駆け引きがある」と呼ぶことが多いと思います。
「リスクとリターン」については、言うまでもなく本家桜井政博さんのYouTube動画がわかりやすいのでこちらをご覧ください。
さて、「性質が異なる、複数の選択肢」という話をしました。
これについて説明します。
例えば、「じゃんけん」はそのままではあまり駆け引きはないと思われます。
👊✌🖐の3つの選択肢がありますが、どの手を出しても勝てる確率は同じで、どの手で勝っても勝利の価値が同じです。
これが、グリコのように「どの手で勝つかで進める階段の数が変わる」となると、どの手を出すか?の迷いや、作戦が生まれることになります。
選択肢がいくつか用意されて、それぞれの価値が異なることで、プレイヤー同士の択の読み合いが発生します。
択の読み合いは、特に対人のゲームにおいては面白さを生む重要な要素になります。
スペシャルウェポンの駆け引き
この話を念頭においた上で、スプラトゥーン3の、特にスペシャルウェポンについて、どういう駆け引きの作り方をしてるのかの話をします。
とは言いましたが、全てのスペシャルウェポンに駆け引きを要求する設計がされているわけではないと思います。
例えば、メガホンレーザー5.1ch などは使われた側は、基本的にレーザーから逃げるという選択肢しかないので、駆け引きは感じづらいでしょう。
盤面の状況に変化を与えることが目的のスペシャルウェポンという色が強いです。
ウルトラショットとか、トリプルトルネードとかもそういうジャンルのスペシャルウェポンになると思います。
駆け引きがあるから面白い、ないから面白くない、あるから強い、ないから弱い、ということはないので、そこには留意してください。
ということで、いくつかピックアップして紹介します。
(もうスペシャルウェポンって19種類もあるんだ・・・)
グレートバリア
展開して中から射撃できる展開になれば、相手にいくつかの択を提示できます。
中に入って、使用者を倒す
中に入るまでが難しい(リスクが高い)
成功すれば、人数差も生まれるし、グレートバリア自体も破壊しやすいなど、次の展開が良い
完全に無視する
インクなどのリソースを消費しないというメリットがある
グレートバリアの中の敵や、グレートバリアに飛んでくる敵を意識することになるので、注意が分散してしまうという損失がある
外からバリアに対してダメージを与えて、バリアを破壊する
長射程ブキや味方が複数人フォーカスできる状況なら取れる択
インクを失ったり、ヘイトが取られるという少しの損失はある
対戦ゲームにおいて一般的な話ですが、相手に駆け引きを仕掛ける場合、相手の選択肢を潰す・あるいは強制させることを考えると、自分側に有利に動けるようになります。(いわゆる「択を押し付ける」という話)
グレートバリアのわかりやすい例でいうと、ガチエリア内に設置するというのがありますね。
「完全に無視する」という択が取りづらくなります。
キューインキ
使われた場合に相手に与えられる択は次がありそうです。
弾を限界まで吸わせ、そのまま倒す
DPSが高いブキ、もしくは味方が複数人いる場合は実行できる
インクとヘイトは持っていかれる損失があるけど、早期にキルまで持っていける可能性はある
横・後ろに回って倒す
位置関係が良ければできるかも
完全に無視する
吸ってる間は塗りも攻撃も発生せず、弾を吸わせなければその後の爆発が弱いので、合理的な択になりうる
非常にピーキーな性能をしているので、有効活用するには「択を押し付ける」的な考え方が非常に重要なスペシャルになってます。
例えば、「ガチホコを持ってる味方を守るようにして使う」のは、「横・後ろに回って倒す」「完全に無視する」の択を「その間にガチホコのカウントが進んでしまう」というリスクを増やして潰しやすい、という意味で強い使い方です。
スミナガシート
だいたいApexのフェロバリケードと一緒こちらも、使われた側の選択肢を考えてみます。
シートを避けて進む
色変化のデバフを受けずに済む
相手に読まれやすい
シートもお構いなしに突っ込んで進む
色変化のデバフを受ける
相手の意表を突きやすい
シートが動いて邪魔にならないところに行くまで待つ
地味に忘れやすいかも?
スミナガシートは作り方が面白いところが2つあると思います。
1つ目は、シートにデバフありとはいえ侵入可能な仕様です。
スプラッシュシールドのように、プレイヤーが弾き返されるようなギミックにすることも考えられそうですが、そうなると使われた側に避けることを強制するだけのオブジェクトになります。
そうではなくて、突っ込んでも突っ込まなくても良い、とすることで駆け引き的な要素を残しているし、「色変化デバフへの耐性をつける」といったプレイヤーの上達の幅を持たせているのが面白いと思います。果たしてカタリストにどれぐらいヒントは得たのでしょうか、私気になります。
2つ目は、シートが前進する仕様です。
単純に打開で使うときに使いやすいというのもあるのですが、使われた側が「待ち」の選択が取りやすくなってるのが良いと思います。
シートがもし動かないのであれば、「めちゃくちゃ良いところに展開されたシートがどうしようもなさすぎて、消えるまで待つしかない」といったことが起きる可能性が高そうです。
シートが動くことで、無視できる場所まで動くのを少しの時間待つ、ということが許されます。
このあたり、使う側に都合が良すぎない仕様になっていることで、他の部分(シートの大きさ、デバフ)を派手にすることが出来ているんじゃないかなと思います。
ウルトラチャクチ
戻ってきた最弱スペシャル。
これが本当に良いリワークがされていて、紹介したいです。
ウルトラチャクチを使用された側は次の択があります。
避ける
本体を撃ち落として相打ちになる
ほとんどのブキは本体を落としにいくと、拳の爆発で倒されて相打ちになる
本体を撃ち落とした上で、拳も撃ち落とす
ほとんどのブキで非常に難しいが、頑張れば行ける・・・かも?
フィンセントのような一部のブキでは比較的簡単に実行できる
周りに味方がいれば、うまいことやってくれるかも
本体を撃ち落として、拳の爆発を避ける
立ち位置によってはこっちが可能
スーパーチャクチのときは、「本体を撃ち落とす」のがあまりにも簡単すぎるため、使われた側は基本的にそれだけを考えればよく、駆け引きとしてはあまり成立していませんでした。
(自爆スイッチにならないために、使い手がめちゃくちゃ工夫する必要があった)
ウルトラチャクチでは、「爆風範囲を広げる」「撃ち落とせなくする」などのつまらない解決ではなく、「拳を壊せる」「拳の爆発が本体より遅れて発生する」の2つの仕様を入れることで、
使われた側にスーパーチャクチでは無かった新しい選択肢を与えつつ、単体での強さが理不尽になりすぎない、ということを実現していて面白いです。
おわり
ウルトラチャクチ、こんなに良くなって戻ってくると思ってませんでした。作った人はかなり頭いいと思います。という記事でした。
自分の持ちブキの仕様から、相手にどういう選択肢を迫れるか?を考えてみると、ちょっと自分の行動を変えられて、ウデマエが上がる・・・かもしれません。
スプラ以外でも、いろんなゲームの駆け引きの作られ方を考えてみるのも面白い・・・かもしれないです。年末年始に遊ぶゲームで分析してみるのもいいんじゃないでしょうか。