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「価値がある」とはどういうことか?〜愛着、唯一性、そして価値〜

「意味」や「価値」という言葉を何気なく使っているけれど、実際にそれは何を意味するのだろう。「意味という言葉そのものの意味」を問うこと自体が底が見えない深遠さを抱えているように思えます。

書籍『価値があるとはどういうことか?』を読み進めていると、まず「価値」という言葉を下支えるいくつかの要素にスポットライトがあたります。その一つが「愛着」という言葉。

「価値がある」と述べるとき、そこには価値があると評価する対象への愛着があり、その愛着とは私と対象との間に発生する関係性であり、その関係は唯一性がある(と感じている)。

では「愛着」とは何だろう、という問いが自然と浮かぶわけです。

「愛着」とは「愛」が「着く」ということですが、「着く」というよりは「着いている」と捉えるほうが自然なのかもしれません。ふと気付いたときに自分と対象との間に「つながり」を感じている。

たとえば歩き慣れた道、よく足を運ぶ場所。

回数を重ねてゆくと、その場所が自分の隅々にまで行き渡って自分の一部になっているかのような、どことなく安心したり、心地よさを覚えたり、落ち着く感じがする。

そうした「愛着」が「価値があるということ」を下支えているのだとすれば逆に「価値がある」という言葉の裏側に「どのような愛着が存在するのか」を問うてみる。

もし、そこに愛着がないのだとしたら「価値がある」という表現にどこか虚しさを覚えてしまうのは気のせいでしょうか。

私たちは、運がよければですが、強い愛着心に包まれて世界を自覚するようになります。この愛着心が、本人に固有のものであれそうでないものであれ、愛着を持続させる私たちの能力を形作ります。それら愛着は、各人にとって唯一(unique)であり、唯一のものと理解されるものです。徐々に世界は私たちの前に開かれて行き、私たちの愛着の対象はその唯一性を失います。これが危機の瞬間です。生き続け、成長するためには、私たちは自分の愛着の対象が唯一のものではないかもしれないという認識と、アイデンティティを形作る深い愛着との折り合いをつけなければなりません。

ジョセフ・ラズ『価値があるとはどのようなことか』

私が思うに、星の王子さまもこれらすべてに多くの真実が含まれることを否定はできないでしょう。ただ、これらの事実は彼が危機を乗り越える助けにはなりません。彼は唯一であることの大事さを信じています。彼は唯一性こそが愛の本性であり、それは人とものに対するありとあらゆる特別な愛着の模範だと信じています。彼は、意味も理解も、悲惨も幸福も、私たちが持つ特殊個別的で、普遍的ではない愛着から生まれると信じています。後で彼がキツネから学ぶことですが、「人は、自分が飼い馴らしたものだけを理解する」のです。

ジョセフ・ラズ『価値があるとはどのようなことか』

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