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情報やアイデアをいかに素早く広げ、協力を得るか。友達の友達の友達...

今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「迅速な組織編成と「レッドバルーン・チャレンジ」」を読みました。

人は誰かと協力することで、自分一人では出来ないことを成し遂げることができます。誰とどのようにつながるのか。そして、そのつながりの中で情報やアイデアの流れを整えることで、グループ全体として望ましい判断や行動を取ることができます。

では、「ソーシャルネットワークの力を解放する鍵」があるのだとすれば、それはどのようなものでしょうか。自分が持っていない情報やアイデアを他の誰かが持っているのだとすれば、自分が置かれている状況をメッセージとして伝達し、それに対する応答として情報やアイデアを得ることができれば問題を解決することができます。

著者は、題材として「レッドバルーン・チャレンジ」と呼ばれるコンテストを紹介しています。

それではここで、「レッドバルーン・チャレンジ」の例を取り上げよう。これは米国のどこかに設置された赤い風船(レッドバルーン)を見つけるというコンテストで、私達のチームはソーシャルネットワーク・インセンティブを使うことで世界規模の組織をつくり出し、数時間で課題を達成して、数百チームにも達する競争相手に打ち勝って賞金を手にすることができた。

もし自分が「レッドバルーン・チャレンジ」に参加したら、どのように課題をクリアするだろう。広大なアメリカ大陸で風船を見つけるためには、自分ひとりでは到底無理な話で、多くの人の協力を得る必要がある。

だとすれば誰に対して、どう呼びかけるだろう。呼びかけたとしても、呼びかけに応じた相手が協力するとは限らない。そもそも自分と面識のない人であればなおさらです。

いかに素早く不特定多数の人に状況を伝えるか。そして、協力を得るのか。経済的なメリット(金銭的報酬)を訴求する?共感に訴える?

レッドバルーン・チャレンジは、インターネット誕生40周年を記念して、米国防高等研究計画局(DARPA)が開催したコンテストだ。その目標は、インターネットとソーシャルネットワークを使い、限られた時間で何かを探し出すための最善の戦略を見つけることである。(中略)こうした時間が問題となる社会動員においては、マスメディアを通じて十分な規模の人々を動かすというのは、現実的ではないかまたは不可能であることが多い。全員に情報を届けるのに莫大なコストがかかったり、災害によってインフラが破壊されていたりする場合もあるからだ。そのような状況では、情報を拡散するためには分散型のコミュニケーションに頼らなければならない。

「インターネットとソーシャルネットワークを使って限られた時間で何かを探す最善の戦略を見つける」

FacebookやTwitterなどのSNSでメッセージを発信すると、それを受け取った人が更にシェアすることで、ネットワーク内でメッセージが次々に伝播していきます。「友達の友達は友達」と言うか、面識のある人が共有する場合、「何か力になりたい」という気持ちは強くなるのではないでしょうか。

マスメディアを動かすためには利害・関心(経済合理性を含む)を考慮しなければなりませんし、実際に動くまでには組織的な意思決定が必要ですから相応の時間がかかると思います。

その意味で、SNSが発達した現代においては、個人が個人に対して自主的にメッセージを発信・共有するほうが伝達速度は高まるように思います。他者に情報を共有したくなる仕掛け・仕組み。どのようなものがあるでしょうか?

私たちのチームは、他のチームとは異なる戦略を取ることにした。図12のように、バルーンの正確な位置を教えてくれた情報提供者に報酬を与えるだけでなく、そうした最終的な情報提供者を誘い入れた人物にも報酬を与えることにしたのである。優勝チームには4万ドルの賞金が与えられるので、1個のバルーンにつき最大4000ドルの賞金を割り振ることができる。そこで私たちは、個々のバルーンの正確な位置を最初に伝えてくれた人物に対し、2000ドルの報酬を支払うと決めた。そして最終的な情報提供者を仲間に引き入れた紹介者に1000ドルを支払い、その紹介者の紹介者に500ドルを支払い、そのまた紹介者には250ドルを支払い、という具合に順次報酬を支払うというルールを設定した。そして余った賞金は、寄付に回すことにしたのである。

10個の風船を探せば賞金総額4万ドルをもらえるので、1個あたり4000ドルの報酬を割り当てることができます。発見者には2000ドル、その発見者に情報を提供した人には半分の1000ドル…というように、賞金を半額ずつ与える仕掛けを作りました。(数学的に言えば初項2000、公比0.5の無限等比級数の値は4000になります。理論的には無限人の人がネットワークに参加すればちょうど4000ドルを消化できることになりますが、人口は有限なので、必ず報酬の総和は4000を下回り、一部を寄付することができます)

自分が風船の位置を知らなくても、情報をシェアするだけで報酬をもらえる可能性があるならば「とりあえずシェアしてみる」ほうが経済合理的です。

報酬を半分ずつにしていくルールは「成果への寄与度に応じた配分ルール」です。しかも面白いのは「時間的な順序が含まれている」ことです。何かをフェアに(公平に)配分しようと思うと、時間の概念を含めずに一斉に配分する状況を考えてしまうのですが、「順々に分けた結果として公平性が担保されていればよい」状況を作り出すことも一案というのは、大きな学びになりました。

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