アイデアの流れと「社会的学習」
今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「創造性は個人の才能ではなく群衆の英知」を読みました。
情報やアイデアの流れに注目する。物理学が「エネルギー流れがどのように運動の変化をもたらすのか」を考察するのに対して、社会物理学は「情報やアイデアの流れがどのように行動の変化をもたらすか」を考察します。
人が何かを想像したり、判断する際には少なからず情報やアイデアを自分の内側に持っている、あるいは外から取り入れている。情報やアイデアの流れが変わることで創造力や意思決定の質を高めることができるのでしょうか。
スティーブ・ジョブズは、創造力を「物事を結びつける力」と表現しています。それでは、そもそも創造力とは何でしょうか。日常の中で何気なく使う言葉ですが、創造力が表す意味を実際に問われると案外答えに窮してしまうのではないでしょうか。
著者が引用したスティーブ・ジョブズの言葉「彼らは思いついたのではなく、目にしたにすぎない」に注目すると、「観察する力」「物事の眺め方」が関係しているように思います。ユニークな眺め方。
判断・意思決定の場面で多いものとして、問題解決の場面があります。問題をどのように眺めるのか。問題の構造を直観して、解に向かう道筋を見通すことができれば問題の半分は解けたに等しい。問題は眺め方次第で難しくも簡単にもなる。道筋が見えれば、あとは淡々と歩いていけばよいわけです。
アイデアはどのように発見するのが良いのか。あるいはどのように練り上げていくのか。情報やアイデアをランダムにつなぎ合わせてみても、選択肢がいたずらに増えるだけで、一向に進まないことがあります。もちろん、ランダムに組み合わせた結果が後で役に立つこともあります。
自分の外に情報やアイデアを探求すること。自分で咀嚼しながら深めてゆくこと。そのバランスを取りながら、人は創造性を発揮していくのだとすれば、かぎりある時間の中でどのように情報やアイデアを取り入れるのか。
「探求行為の成否を左右する戦略とはどのようなものか?」という著者の問題意識がとても興味深いです。
成功した個体の真似をする「社会的学習」という言葉を初めて知りました。
個人と集団。「群衆の英知」という言葉がありますが、集団を構成する個人がそれぞれ独立して情報を収集し、判断した結果を集約すると、個人が単独で判断・意思決定する場合よりも望ましい結果を得られる確率が高い。
逆に言えば、個人間が互いに強く依存している場合、個人個人の意思決定にバイアスがかかってしまい、集団としての意思決定の質が低下してしまう。
よって、適度に他者を模倣する、外部から情報を取り入れながら判断・行動することが望ましい。そうなると「適度であるかはどのように評価するのか?」という問いが浮かびます。
独立した行動を基本としながらも、他者とつながりあい、情報やアイデアの流れを「適度に」する。情報やアイデアの流れが速すぎると「同質化」してしまうし、流れが遅すぎると「学習が進まない」という課題に直面する。
情報やアイデアの流れを「適度な速さ」にするネットワーク構造や、フローのダイナミクス(動的変化)がどのようなものなのか。流れの測定方法と合わせて理解を深めていきたいと思います。