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時間と空間を超えて触感を共有するということ

今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「テクノロジーを使って触感を取り戻す」「触楽をはじめよう」を読みました。

触感を作り出すテクノロジー。視覚優位な現代社会において、他の感覚を取り戻す上で意義深いもののように思います。

時間と空間を超えて触感を共有するということ

著者(テクタイル)は、触感をリアルタイムに伝送する装置「テクタイル・ツールキット」を開発したそうです。

触り心地の情報を記録し、それを増幅して出力するという装置で、これを使うと、例えばなにも入っていない紙コップの中に、「ビー玉が回っている感触」や「炭酸水のシュワシュワした発泡感」を生み出すことができます。技術的に難しいところはなく、機材と簡単な電子工作の経験があれば自作することも可能なキットです。

どのような想いからこのような装置を作ったのか。著者は次のように述べています。

これまで触感とは、いま/ここで/私にしか感じられなかったものでした。しかし、このツールキットを使えば、触感をだれでも簡単に記録しておくことができます。リアルタイムで隣の人に伝えることもできますし、後日再生すれば、遠く離れた他者にその感触を伝えることができるのです。

たしかに言われてみると、画像や音声はメディアに記録し、時間と空間を超えて復元、共有することができる一方、「触感を記録・共有・復元する」という機会はなかなかありません。

もしそのような装置があったとしたら、何ができるでしょうか。時間と空間を超えて握手する。あるいは大切な人を抱きしめる。安心する。懐かしむ。

「触れる」という感覚は、「手触りのあるつながりを保存する」感覚でもあるのかもしれません。つながっているようでつながっていない、浮遊した感覚ではなく、本当につながっている感覚。

何が現実(リアリティ)をつくっているのだろう?

著者はテクタイル・ツールキットについて、次のように述べます。

 テクタイル・ツールキットは、なにもないところにモノの感触や実在感をつくり出すことができる道具であり、私たちの現実(リアリティ)をつくっているものとは一体なにか、という問いに新しい光を投げかけるものでもあります。

「私たちの現実(リアリティ)をつくっているものとは一体なにか」

この問いかけがとても印象的です。リアリティをつくっているものとは何なのでしょうか。

自分の足で立っている。自分の身体を自分で支えている感覚。
深呼吸。自分自身の力で呼吸をしている。身体の隅々まで酸素が行き渡る感覚。

現実を実感するというよりも、生を実感するとも言えるかもしれません。
現実と生命。自分は生きている、存在している。

触覚と存在の関係について理解を深めたいと思いました。

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