中国の金融システムで今何が起こっているのか

巷ではなんの根拠もない妄想で書かれたような中国金融崩壊本が何冊も売られていたりするが、個人的にも色々調べていく中でようやくリスクの所在のありかなどを整理することができたので、noteに初めての試みであるがまとめてみようと思う。
なお、内容については断片的には個人のブログに全て書いてあるが、全部遡ってみるの面倒くさいという方にここにまとめて中国の金融システムの実情と中国政府がどのように現在対応して崩壊するのを食い止めようとしているのかを記載しようと思う。
また今回記述するにあたっては特殊な情報源などというのは一切使っておらず、非常にわかりにくい中国の金融システムでも、丁寧に各方面から公開されている資料やニュースをつなぎ合わせるだけでもこれだけの情報は把握することができるということも示したいと思うので、各々の判断材料について随時エビデンスも記載しておく。
なお、あくまで中国の金融システムの現況について解説しているだけで、特に投資判断などは一切入っていないのであしからず。

結論からいうと中国の金融システムが本当に崩壊するのかどうかは中国政府が多額の税金を使う覚悟があるかどうかにかかっているが、なぜそのような結論になるか順に説明していこうと思う。

①全てのはじまりは中国の厳しい金融規制にある。
BISのレポートによると現在の中国の不安定な金融システム状況の種は下記のように蒔かれたとある。



<BISのレポート>
China's Shadow Banking: Bank's Shadow and Traditional Shadow Banking

中国では未だ金融が自由化されておらず、大手銀には様々な制約が課せられている。
貸出金利が規制されていたり、預貸比率も他国と比べて大幅に制限されるなど、他国より厳しい金融規制を敷かれており、大手銀は業績を伸ばしたくても、はめられている足枷が大きい。
しかし、中国人はことお金に関しては悪い意味でクリエイティブ性が高く、なんとかこの金融規制をかいくぐる手段はないかと考えてきた。
そのような状況を背景に育ってきたのが、よくニュースで話題になっているシャドーバンクである。
大手銀行は規制の目をかいくぐって低いリスクウェイトアセット・比較的高い利回りを享受するために、インターバンク経由あるいは投信を通じて預金が足りなく高い金利を払ってでもいいから資金が欲しい中小銀行へ資金を融通してきた。
このように金融規制から逃れて金を稼ぎたいと思う大手銀の供給と資金が足りない中小銀行の需要がマッチしたことが現在の中国の銀行システムの問題の発端だ。

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