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人生に必要な「ムダ」のおはなし

  マネジメントの講義をする時に必ず内容に含めるのが、限りある資源をどのように活用するのかということです。

  資源とは一般に、「ヒト・モノ・カネ」と言いますが、最近では「時間」、そして「情報」なども含まれます。

  そして、個人的にこの中で最も重要視しなければならないのが、「時間」という資源だと考えます。

  何故なら時間とは、老いにも若きにも、金持ちにも貧乏人にも等しく与えられているもので、貯めることも前借りすることもできず、他者に分け与えることもできないという、特殊な資源だからです。

  ヒトは補充できる。モノも代わりが利く。カネは稼ぐことで取り返せる。しかし、時間という資源は誰がどう頑張っても取り戻すことができない。

  過ぎ去ってしまった「時」には、タイムマシンでも発明されない限り、もう二度と会うことはできないのです。

  だからタイムマネジメントは重要で、時間を有効にムダなく使いなさいと話します。キャリアに関する講義の時も、自分の人生の中長期計画を立てて、漫然と過ごした過去を悔やまないように、今をムダにしないようにしなさいと言います。

  毎日忙しくしていると、本当に一分一秒が大切で、ムダになんかしていられない、緻密な計画を立ててキリキリと動かなきゃ!と思っていることに気づきます。

  ですが一方で、やらなきゃならないことがある時に限って、だらだらとSNSを眺めたり、オンラインゲームを始めてしまったりすることもしばしばで。

  LINEに興じる中学生の娘に向かって、やることを先にやっちゃいなさい、時間がもったいないよーなんて、いったいどの口が言ってるんだ?!という体たらくな訳です。

  今まで生きてきた人生の中で、こんな風に無意味な時間を一体どのくらい過ごしてきてしまったんだろう、過去に捨ててきてしまった無意味で無駄な時間を全て集めたら、もしかしたら10年分くらいになるんじゃないだろうか、なんてことを考えていたら、ある時ものすごい自己嫌悪に襲われました。

  あーあたしったら、すっごい時間ムダにしてきたよ………もう戻ってこないのに。なんてもったいない!

  そう思いつつも、朝の通勤時間に電車の中で、少しでも仕事の準備をしておかなきゃと考えながら、ちょっとだけだからと自分に言い訳をして、仕事とは全く関係のないサイトを眺めていたり。

  人間というものは煩悩でできているのですね。

  確かに、ムダな時間はもったいないかもしれない。でも、そういう時間があるからリフレッシュできたり、アイディアが湧いてきたりするんじゃないかと、言い訳がましく考えたりもするのです。

  たとえば、ビールの専門店へ行って、その店こだわりのビールを、こだわりのグラスに注いでもらっている時間。

  泡をほどよくたてるため、時間をかけて3回に分けて注いでもらったビールを待っている時間。きめ細やかな泡がこんもり乗ったグラスが目の前に運ばれてきた時の、何とも言えない幸福感を味わうための、必要な待ち時間だと思うのです。

  ちなみにTOPの写真は球場で売り子さんから買うビールで、こちらはスピード勝負。待ち時間も泡も少なめで、スポーツ観戦を邪魔しないことが求められるので、ビールの専門店でいただくものとは全く違います。同じ種類の飲み物でも、これだけ意味が違うんです(ビールを飲まない方にはわかりにくい喩えですみません!w)

  とは言っても、私にとってはどちらのビールもリフレッシュに必要なもの。  ムダとは思いません。頭を休めたり気持ちを切り替えたりするために、通勤電車の中で遊ぶスマホゲームもSNSも大切。そんな時間がなければいい仕事もできないと思うし、家族に優しくもできないような気がします。

  一見ムダだと思えることの中から、アイディアやヒントが見つかるかもしれないと信じて、今宵もまたビールを飲みながら、ボーッとテレビを眺めている私なのです。

  


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