第三の心臓




左利きのあの子の作り笑いが嫌いだった。
身体の奥底で苦しんでいるそれに気づいたような気でいただけだけど。

左利きのあの子の張りのある声が嫌いだった。
無理やり声を出す度なにかが千切れるような感覚がとても怖かった。



本当は私の傍から遠ざかるようで、それがとても怖かった。
それだけだった。
左利きのあの子に憧れていた。嫌われるのが恐ろしかった。
左利きのあの子の傍にいるために苦しんでいるのも壊したのも千切ったのも私の心だった。



壊れた心に絆創膏を貼るように右耳にイヤホンを付ける。

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