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『虎に翼』第8週「女冥利に尽きる?」〜号泣させられました

先週のNHK朝ドラ『虎に翼』〜第8週「女冥利に尽きる?」の回は泣いた!
いやぁ、泣きました。
特に木曜から金曜にかけて。

このドラマは主人公の寅子を演じる伊藤沙莉さんがとにかく素晴らしく、
それまでも達者な役者さんだとは思っていましたが、今作でもう徹底的にやられています。

特にテレビドラマという性質上、表情のアップが多いのですが、セリフには出さなくとも、揺れ動く心の動きが目線、眉、口元、表情全体でびしびし伝わってきます。

この週は、数少ない女性弁護士になり、弁護士事務所で働きはじめるも、
「いや、女性の弁護士はちょっと。担当違う人にしてくれ」
とことごとく依頼者たちに断れてしまい、
これは20代も半ばの女性として結婚もしていない自分は半人前だからだ、
だから信頼されないのだ、と半分やけくそ的に結婚を決めるも縁談話はてんで来ない。
もはやこれまで万事休すとなった時に、
ずっと寅子のことを想い、陰から応援し続けていた優三と無事に結ばれる。
というところからの物語。

結婚したおかげかどうかは分からないが、仕事がやっと舞い込むようになるものの、なかなか上手くいかない。
依頼人の女性のことを考えて弁護した裁判も、実は依頼人からも騙されていたと知りひどく落ち込む。

先に弁護士になっていた法律学校時代の先輩であり、かつ女性弁護士としても同士だった彼女も夫と地方へ疎開するという。

そんな中、優三との子供も身籠るが、そのことを隠して仕事を続ける寅子。
それもこれも、同じ道を目指して道半ばで去っていった同士の女性たちの分まで自分が頑張らねばという使命感が彼女に精神的にも肉体的にも相当な無理を強いていた。

そして、その無理がたたりとうとう心労疲労から講演会を任せられるも当日に倒れてしまう。

周りは子育てに専念すべきだと寅子を諭すが、それが寅子にはかえって辛い言葉となる。
自分はやはり無用なのか、女性の地位向上のためには何も出来ないのか、でも今自分が退く訳にはいかない。
そんなヒロイックな感傷でがむしゃらな寅子をよねさんは見透かして厳しい言葉を投げかける。

もはやこれまで、行き詰まり。
もう見ていても辛すぎる。

子供を産むために弁護士事務所に辞職届けを出し、荷物を片付ける寅子。
法律の道へ進むと決めた時に母が結婚支度の代わりに買ってくれた六法全書を箱に仕舞う時に、六法全書を抱え込んで一粒の涙を流す寅子。

つい数十年前までは、やはり同じようなことが多くの女性にあったんだろうな。

それでも、家庭に入り法律の世界から一歩退き、普通の暮らしの中で無事に娘も出産し、寅子を優しく支えてくれる優三との生活が寅子を癒やしてくれる。

しかしそんな平穏無事な生活はつかの間で、日本はさらに戦争に突入していく。

兄の直道は出征し、やがて優三にも召集令状が届く。

いつもドラマでは見慣れた光景だが、出征が決まると周りの人間は
「おめでとうございます」
と言わなければならない時代。
とんでもない話だ。
おめでたいはずがない。

このドラマでは出征した若者たちが戦地で次々と命を落とすところまで描かれていないし、寅子の家族が戦地へ赴くことがどれだけ命を賭したことなのか分かっていたかまでは分からないけれど、
酷いことになる、と知っている現代の目で見るとこれほど残酷なことはない。

出征の朝、万歳三唱で送り出さなかればいけない家族達。
どう考えても酷い話だ。

出征前に優三と寅子が川辺でデートをするシーンには号泣するしかない。
それにしても、仲野太賀の演じる優三はなんて素敵な男性だろう。
出しゃばらず、激さず、寅子のことを一番に想い、彼女の才を信じているからもし、彼女が一番輝けるようにいつも暖かく見守っている。
きっと仲野太賀が演じているからこそ、優三はこれだけ魅力があるのだろう。

『虎と翼』は戦前から物語がはじまったので、戦時中の厳しく暗い時代の話は避けられないのだろうと思っていたが、今週と来週辺りがそのピークになるんだろうか。

今、戦争のことを知らない世代が多くなってきている。
そういう自分も真には知らない。
祖父母に話を聞こうにも、ほとんどが他界してしまっており、
父母の世代もかろうじて戦時中ギリギリに生まれたが、その話を聞くことも出来なくなった。
そして、世界では戦争が日常となっている国が依然としてあり、それは遠い世界の話ではなく、かなり身近に感じられるようにもなってきた。

そんな今、こうしてドラマの中だけでも戦争により、普通の暮らしをしていた市井の人々がその生活を奪われるということを描き続けることは、意味があることだと思う。
惜しむらくは、そうしたドラマは若い世代には届かないということだけど。

さて、来週で戦争時代は一段落するのだろうか。
優三は無事に寅子のもとへ帰ってきて欲しい。

<了>

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