戦略ミサイル攻撃とは?
初めに
最近見たネット情報の中で、一番気になったのはこれです。
厳密には「民間インフラに対する独裁政権による長距離ミサイル攻撃」は、歴史上成功したことが無い、という事です。今日は、そんな話をしてみます。
戦略/戦術/戦技
まずは歴史の勉強です。
良く使うこの言葉ですが、定義を聞かれると微妙な方も多いと思います。まず、前提条件として、ここを明確にします。
戦技:
戦う時の技術/技量のこと 銃の打ち合いなら、射撃技術の良し悪しを示す。戦技を高めるには、練習あるのみ?真珠湾攻撃で日本海軍の航空隊が浅い湾内で魚雷攻撃が出来たのは、戦技によるということ。
戦術:
ある戦いの中での、限定的な勝敗を決する際の作戦計画等の技術の事。兵の配置や地形の利用、いつ移動してどういう補給を受けてどう戦うか?の技術であり、主に司令部や師団/連隊の将官の技術となります。一般的に「軍師」とか「〇〇の戦いの優秀な司令官」のような話は、これですね。
戦略:
そもそも戦争を始めるかどうか?も含め、最終的な目的(例:自国民が安全に暮らしていける)につながるのか?を考えるのが戦略です。どんなに熟練の兵士が高い戦技を持ち、将官が作戦立案に才能を表しても、結果としてどうなりたいのか?どういう形で戦争を終えればよいのか?という出口を考えることです。実際の戦争で戦略を考えるのは、各国の代表者級の政治家の仕事と言えます。
ジェットとロケットとミサイルの違い
次に工学の勉強です。
何らかの物質(通常は燃焼後のガスが多い)を後方に噴射し、その反作用で推進する方法自体の事を「ジェット推進」と言います。
また、推進剤と酸化剤を搭載し、外部から酸素を得なくても燃焼できるジェット推進の事を特に「ロケット推進」と言います。更に燃料と酸化剤の状態によって、固体と液体があります。固体ロケットはシンプルで常温保存できますが、いったん燃焼が開始すると構造上途中で止めたり推力を変更することが難しく、NASA や JAXA が使う際には補助ブースターとしての利用が多いです。H3の場合、主エンジンの倍ぐらいブースターの推力はあります。
一方、ミサイルは「飛ばす」「投げる」のラテン語 mittere から英語の missile が出来ています。現在ではミサイルとは、目標に向かって誘導を受けるか自律誘導によって自ら進路を変えながら、自らの推進装置によって飛翔していく軍事兵器のことです。誘導弾(英: guided missile)や誘導ミサイルと呼ばれることもあります。
この推進装置に「ロケットエンジン」を使うことが多い訳ですが、例外的にトマホーク等の巡航ミサイルはジェットエンジンを使います。
では本題
「民間インフラに対する独裁政権による長距離ミサイル攻撃」を分解して、解説します。「民間インフラに対する」攻撃は、戦場での直接的な勝ち負け(戦術級)ではなく、相手の国の産業や戦意をくじく為なので「戦略」と言えます。ブログ記事では、ミサイル戦略爆撃の失敗の歴史を、以下としています。
第二次世界大戦末期のロンドン/アントワープ都市攻撃(V1、V2)
V1は飛行爆弾とも言われ、現在の巡航ミサイルのご先祖様です。パルスジェットで飛んでますので、ロケット推進では無いです。
V2ロケットは液体燃料を使った、こちらもその後のロケットのご先祖様です。射程は300kmですが、その後の米ソ宇宙開発+軍事利用の元となります。
ロンドン空襲の結果、イギリス人は強くナチスに反発し、有名なチャーチル首相の演説に繋がります。先日、ウクライナのゼレンスキー大統領も「我々は森で、野原で、海岸で、通りで戦う」と言ったそうですが、これはチャーチル首相の演説が元です。
イラン・イラク/湾岸戦争の「都市の戦争」(スカッド)
イラン、イラク双方がスカッドを打ちあい、湾岸ではイラクからサウジやイスラエルに攻撃をしています。その後、イスラエルはアイアンドームというミサイル迎撃システムを作ったのですが、これがウクライナに提供される?という話もあります。歴史は繰り返すのでした。
なぜ失敗するのか?
これぐらい予備知識があると、冒頭のブログが読めると思います。戦略面としては、兵器と言えども経済性が重要であり、安いミサイルでは誘導精度が低く効果が出ず、高いミサイルはそんなに沢山は打ち込めない、というジレンマです。しかも、上記「アイアンビーム」は1発500円で迎撃できるとなると、また新たなゲームチェンジになりそうな予感もします。
ブログの最後には、こんな風に書かれています。
専門家として、こういうコメントが書きたいものです。
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