【ケアストレスカウンセラー】Part1 Step1-5 人が「人らしくある」ということ①
みなさんこんにちは。このシリーズでは、『ケアストレスカウンセラー公式テキスト』に準拠した内容を自分なりにまとめています。テキストの内容だけにとどまらず、周辺知識も含めるようにしました。さらにテキストだけでは分かりにくい部分は、他の資料にもあたった上で執筆しています。
前回は、人にこころがあるからこそ、錯覚が起きるという話でした。その時のこころの状態や経験により、何に注意を向けるかが変わってくるんですね。
前回の記事はこちら。
今回は、学習とこころの関係について書きます。記憶・動機づけの話までいくと長くなるので、これらは次回に譲ることにしますね。
1.「学習」はこころのはたらき
以前の失敗をまた繰り返してしまった時、「学習していないな」と自己嫌悪に陥ることがあるかもしれません。この場合の学習とは、学校の科目勉強とは異なり、過去の失敗の経験を生かして、同じ間違いを繰り返さないようにすることを指します。
このような学習も、こころのはたらきの一つなのです。例えば、以前買ったメーカーのコーヒーが美味しくなかった、という経験をしたら、次回買う時には別のコーヒー豆にすることでしょう。
そして、買い直したコーヒーが美味しかったら、今後もそのコーヒー豆を愛用し続けることがあります。このように、経験を通じて行動に継続的な変化が生じることを学習といいます。
さてこの学習ですが、一体どのような経緯をたどっているのでしょうか?研究者は長年にわたりこれらを研究してきました。その変遷を見ていきましょう。
古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)
私たちは「梅干し」と聞いただけで、口の中に唾液が溜まります。これは、梅干しの酸っぱさを知って学習した結果です。
この刺激と反応(反射)の関係を実験で示したのがパブロフという生理学者です。
パブロフの犬のベルと唾液のように、もともと無関係の刺激と反応の間に意図的な結びつきをつくることを条件づけと呼びます。このように、パブロフの研究は、人や動物のあらゆる行動は、刺激に対する生理的反応にすぎないとする行動主義の主張の基礎を築いていきます。
試行錯誤学習
試行錯誤学習とは、人が何かの問題に直面したときに、試行錯誤を経て解決していくことをいいます。アメリカの心理学者ソーンダイクは、猫を使った実験でこれを確かめました。
この実験から、ソーンダイクは以下の二つの結論を引き出しました。
①人も試みと失敗を繰り返しながら、適切な解決方法を学習する。
②満足が得られる行動は繰り返しやすくなり、一方、すぐに効果が得られない行動は繰り返さなくなる。(効果の法則)
オペラント条件づけ
上記のソーンダイクの実験をさらに発展させたのが、アメリカの心理学者スキナーによるオペラント条件づけの実験です。
この実験からスキナーは、人の自発的な行動もまた、性格などの内的要因ではなく、報酬や懲罰といった外的要因が引き起こすのだと結論づけました。
サーカスの動物たちが芸を覚えるのもこれと同じ方法による学習です。
それでは人間も動物も、学習の方法は同じなのでしょうか。上で述べた例では、程度の差こそあれ、基本はほぼ同じといえます。
観察学習(モデリング)
しかし、人間の優れた学習能力は、他人の経験を自分の経験として取り組むことができることにあります。つまり、観察や模倣の能力(観察学習)が際立っているのです。ここが動物とは違う部分です。
この観察学習(モデリング)を実験で示したのはカナダ出身の心理学者バンデューラーです。
私たちは日常生活の中における習慣の多くを、他者の行動を観察することによって無意識的に学んでいます。これを観察学習(モデリング)といいます。もし他の人(観察対象)の行いが良い結果をもたらすことを観察すれば、それに倣おうとしますし、悪い結果を招くのを観察するなら、その行いを避けようと学習するでしょう。(代理強化)
こうした事実は、行動主義が主張するオペラント条件づけの理論では説明できません。
このように、人間は動物とは違うこころのしくみを持っていることがわかります。人同士で学び合えるのです。さらに、観察や模倣だけでなく、知識を教育や学習により社会的に積み重ね、共有していくこともできます。今の時代はもちろんのこと、後代にまで知識や経験を残すことができます。ここが、人が「人らしくある」所以ですね。
さて、次回は記憶と忘却のしくみがこころとどう関わるのかについて書きますね。
今回のポイント
練習問題
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?