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何の夢もなく上京したあの頃を想う。

29歳になった。

10年前私は上京した。といっても住まいは千葉だったが、よく東京に遊びに行ったので、まぁ上京したとしよう。

田舎町出身で、周りは田んぼだらけ、最寄り駅までバスで30分もかかるようなところに住んでいた私は、ただ家を離れたいという思いだけで、関東の大学を受験して、そして合格し、上京した。

東京は夢の国だった。芸能人に会え、テレビで見た渋谷のスクランブル交差点に感動して、原宿でパンケーキに並んで。私の憧れていた東京がそこにあった。

ただ夢の国東京とは反対に、私には夢がなかった。ただなんとなく家を離れたいという思いだけで、関東の大学に進学した。専攻した化学も、ただ得意だったからだ。

そんな夢のない私に、東京は冷たかった。受け入れてくれなかった。上京しても彼女はできず、精神的な病気にかかり、就活はほぼ全滅。

もし、もし10年前に戻れるのなら、私は夢を持って東京に行くべきだった。それか東京で夢を見つけるべきだった。

たとえその後病気のせいで10年間を無駄にすることになったとしても。

東京で勝負する。戦う。多くの夢を持った同世代が集まる中で、私も堂々と夢を持ち、戦うべきだった。

あんなに嫌っていた田舎町に強制送還され、もう二度と上京することはないだろう現在の自分が、そう今思うのであった。二度と東京で戦えない。あの頃が最初で最後のチャンスだったのだ。人生は一度切りなのだ。

あの頃に戻れたら。

でも戻れない。

せめて今日を、今からでも夢を持って、生きていこうと思う。

どれだけ今が苦しくても。

以上。

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