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初めてのサードプレイス。

56歳。
保健室の先生だった私。
早期退職して半年が経ちました。

あらためて振り返ってみると退職までの数十年、家庭と仕事の両立は記憶も定かでないほどドタバタだったなぁ。

ヘンに真面目だから何ごとにも一生懸命(…自分ではそのつもり)。
だけど根っからの不器用サンだから、結果的には上手くいかない事のほうが圧倒的に多くて。

失ったり諦めたり、犠牲にしたものも数知れず。

ただただ人に恵まれ、許されて許されて生きてきた……。

ひとつのことが終わった時、初めて気づく事って、あるんですね。

家事と介護の合間に、せめて自分を慰めるみたいな気持ちでふと立ち寄った小さなカフェ。

それが発酵文化研究所でした。

古い民家を素敵にアレンジして、静かに佇む建物。
おうちの庭に咲いてるみたいな可憐な花が、ふわっと品良くセンスよく飾られた玄関。
厨房に立つ若いご夫婦は多くを語らず、でも常に包み込むような笑顔のお二人。

「いつまでおられてもいいですよ。」
と本当に思っておられるんじゃないかと勝手に錯覚してしまうくらいの空気感。

何もかもが自然で、時がゆっくり流れていました。

居心地がよくて、そして深煎り珈琲と絶品ナポリタンが美味しくて何度も通ううちに、ご夫婦と色んな話をするようになりました。

私よりもずっと若いお二人に、なんでも喋ってしまっている自分がいました。

私が書いた本を読んで泣いてくださって。
自らが出版社となり、その本を広めようとお世話してくださって。

不思議な巡り合わせ……これがご縁というものなのでしょうか。

「本を出して終わりではありませんよ。ウチで保健室したらどうですか?」

こうして始まった『まちの保健室』。

月イチ、発酵文化研究所のお座敷をお借りして開くM a k oの保健室も、昨日2回目が終わりました。

もう先生じゃない。
カウンセラーでもない。
何も持ち合わせてはいないこんな私。
誰か必要と思ってくれたりするのかしら。
誰も来てくれなかったら、むしろ恥ずかしい?

今さらだけど隠れたいような気持ちで朝から座って待っていると……。

1人、また1人、次から次へと。

あぁ……こんなにも、こんなにもたくさんのお母さんたちが、苦しく辛い子育ての毎日を、涙をこらえながら必死に頑張っておられるのかと思うと、こちらこそ胸がいっぱいになりました。

学校の保健室で働いていた頃、悲しそうな表情で立ちすくむ子どもを抱きしめながら、同様にお母さんたちにも寄り添いたいと、ずっとずっと思っていました。

教育現場は忙し過ぎて、その願いはなかなか叶えられずにいたけれど、私は、そう、ずっとずっと、こうしたいと思っていたんだ……。

たった1人のために。
誰か1人のためになるのなら。

何の力もない私に、何が出来るのかなんて、分かりません。

でも、長年の経験を通してたくさんの子どもたちから教えられた真実なら、この胸の中に確かに持ってる。

それを大事に抱えながら、今を必死に生きるお母さんたちに寄り添うことなら、出来るかも。

そっと動き始めた『まちの保健室』。

私自身が救われたこの場所で、私を生かしてもらえるのなら、こんなにありがたいことはありません。

もしもよかったら、どうぞ。
ふんわりと、お待ちしております。

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