「主と客」

ネットで客(きゃく)と検索すると

たずねて来る人。まねかれてくる人

Oxford Languagesの定義

また、主(あるじ)と検索すると

中心となる人。支配する者。家のあるじ。ぬし。家長。もちぬし。

Oxford Languagesの定義

と出てくる。
 しかしながら、主(あるじ)を寿司屋の店主とし、客を寿司屋の客としてみる。
 そうした際、寿司屋の店主にはシャリを一定分取れるようにする。鼻くそや汚物を持ち込まない。ヒモ(アニサキス)を処分する。皿洗いは丁稚奉公にやらせる。包丁やまな板は清潔なものを最初から最後まで使う。等々の事柄が要求される。
 そうした店主が守るべきマナーがあって初めて、客が守るべきマナーが成立する。

 世の中はサービスの提供、需要で大まかに成り立っている。客はマナーを守らなければならないが、客の需要に応えなければ、店はやっていけない。サービスの提供は需要ありきである。
 寿司屋にはマニュアルが無く、口伝でのみ、その製法が伝わる。マニュアルがあるのは皿洗いである。
 客は苦情を言うことができる。この寿司にはヒモが入っている。シャリの分量が均一でない。等々 この苦情は先ほど言ったように、需要であるから、サービスの提供に優先される。
 マニュアルが無いかと言ったらそうではない。先輩がマニュアルなのである。マニュアルを見れば後輩がどこで誤っていたかが一目瞭然である。上手くいかないときほど、店主の立場からすれば、先輩の立ち居振る舞いに従うのであろう。一方、皿洗いはマニュアルが完備されているから、マニュアルを頼って皿洗いをすることになる。
 客は需要を店主に与える。そして対価を払う。ここで注意しておきたいのは、人に頼る、メモを頼る、マニュアルを頼るである。
 メモを頼らず、口伝で寿司を握っているならば人を頼るべきであろう。また、皿洗いをしているならば、マニュアルを頼るべきであろう。マニュアル職場は寿司屋でいう皿洗いである。クリエイター職場は教育者であるから、見本となる先輩に従って、教育の現場に特色を発揮して携わる。研究職場は教育職場である。研究のコアとは関係のないマウスの定期的な飼育などマニュアルに沿った現場が皿洗いである。皿洗いの時給はいかほどか知らないが、寿司職人の時給よりは低いであろう。
 最後に、寿司職人の厳しい立場からすると、客の追い出しも最もである。しかしながら、強調しておきたいのは追い出しが先行するのではなく、寿司職人の厳しい立場が先行するのである。ここで、主一番と勢いはいいが、実力の伴わない寿司屋がいたら、真っ先に悪評価を食べログ等々でつけられ、スターの座から引きずり降ろされてしまうであろう。私はここで寿司職人の腕前を評価している立場にある、客である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?