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[AOF] 第六話 ミッション④~移住案内

評議会


トールとエルの報告が超高速通信により評議員会で行われた。

「この星の砂漠へ来てひと月が経とうとしておりますが、我々トール・バミューダとエル・コンキスタは生存しています。ここへ自治体ごと住めるかどうかそれは分かりませんが、ここはセオリーどおりにまず百人、次は千人と徐々に大規模に移住を開始すべきと現場では判断しております。最初の百人はこちらの地域、北緯19度東経15度のこの地域への人員の派遣を要請させて頂きます。残念ながら土地は肥沃ではないかもしれません。肥料や南国原産の作物の種子と農作業者を合わせて送っていただけるようお願いいたします。地球系の技術で作られたと思われる機器が多数発見できました。エンジニアの派遣も合わせてお願いします。細かい情報はデータで確認してください。」

 評議委員会はこの報告から始まった。
 アベル・コンキスタは自分の娘が無事だということに安心した。
 トール・バミューダと愛機のシュナイダーもその星の素材で色々な強化をされているのを見るとトールの自分の娘へのやさしさを感じた。
 調子は良さそうだ。

「先遣隊の報告は以上だ。百人規模で住める場所があることが分かっている。計画通り百人を送り込みたいと考えます。」

 アベルはそう言った。改革派が与党となっているこの評議員会は百人を送り込むことに賛成している。そのための降下作戦用の宇宙船は完成している。
「改革派はいつもその調子だ。何故無駄な派遣を続けるのか説明しろ!」   
 そうだそうだと保守派の評議員はやじを飛ばした。

「改革派の見立てではもうこの船の維持をする方が難しいと考えている。」

「この船は船団を組んでの人々が暮らしている。いいか、かつて人類の総人口は最大で百十億人いたが、もしこの船団以外の生き残りがいないとしたらもう七万人しかいないんだ。今ここで百人送り込み、千人、一万人と送り込むことで、この船で暮らす人々は徐々に減っていくが、減らさざるを得ないほど毎年保守の継続が厳しいという報告を作業者の連合組合からされている。みんな、いいか、この船は、この船団は、新天地を発見しなければ確実に滅ぶのだ。よく覚えておけ!」

 アベル・コンキスタはそう言い切った。

「アベル氏! あんたは沈む船から脱出させるために、自分の娘を送り込んだんだろう。」
 保守派の議員代表のアグリッパはそう言った。

「それはそのとおりだ。というか、保守派はそんなに安全な土地だったらまず自分の娘を送り込めと以前の評議員会で言っていたではないか。」

 保守派はアベルの高潔さに何も返す言葉もなかった。

「計画としては、十人乗りの脱出艇を指定された座標の十キロ圏内に落とす。更に十機のシュナイダーを降下して一班につき一機、シュナイダーの構成は一機が医療用、四機は戦闘用のアタッチメントをつける。五機は農耕用だ。そして食料一月分それでいいか?」

 議会が静まり返っている。

「保守派としても今度の星の開拓でこの宇宙船の人口を削減することは更に船を生き永らえさせることに繋がる。だからこの話は保守派に取っても良いはずだ。次回は航空機も送り込む予定だ。」

 アベルは評議会でそう発言した。

☆☆☆
 
 アグリッパは送り込んだ暗殺者を返り討ちにされたということを知っている。

 今回は戦闘用のシュナイダーを送り込めることになっている。改革派に内通者がいて、次は暗殺者の兵器として使える。降下部隊の一部隊十人は戦闘部隊だったが、暗殺者集団にした。

 何としてもエル・コンキスタを殺したいとアグリッパは考えていた。

 アベルの娘を殺せばアベルは激昂するだろう。そして、狂ってしまうだろう。そうなればあいつを評議員から締め出せるはずだという計画だ。
 アベルさえいなければ改革派はまとまりを無くす。アグリッパはただ単に権力が欲しいだけの人物だった。

☆☆☆

暗殺者の会話

 エル・コンキスタはターゲットだけれど前に降ろされた暗殺者を殺してしまったという情報があるよ。どうしてもしないとダメかな。私、この話から降りたいんだけど。アグリッパ氏は暗殺さえ成功させたら戻って来れるというけれど、それは無理だと思うんだ。

 俺もそう思う。アグリッパは多分、あそこにずっといるだけだから。それが保守派というものだろう。大体金払いも悪いし、いくら金を貰ってもあの星じゃ無意味だろう。まだ使いどころのない金すらもらってもねえ。

 暗殺辞めようか。俺、エルさん好きだし。

 え、好きなの?

 好きだよ。だって可愛いじゃん。

 まぁ、まぁ確かにね。俺も同じ高校卒業したけれどミスコン優勝してたものね。

 一人一丁のP990はありがたいけどね、モンスターもいるらしいし。

☆☆☆

開拓地


 まずエンジニアチーム男女十名と専用シュナイダーが送られてきた。
 寝床になる遺跡をエルが案内した。
「水はあるし、今は使えないけれど、中央の部屋に外の蟻型オブジェを動かすことに使われていたのであろう制御室のようなものがある。皆さんにはこれの修理をお願いしたい。また、外のオブジェを使えば、恐らく田畑を耕すことができる。」

 トールはエンジニアたちに現状を説明した。
 エンジニアは早速システムを確認し始めた。

「どこかにメモリーがあるはずだ。古いUSB規格のものやフロッピーかも知れない。ハードディスク、SSDとにかく、みんな、探してくれ。データが飛んでなければ我々のシュナイダーであの群れをコントロールするのだ。」

「了解しました。」

 エンジニアチームのリーダーはこの建物の設備を直すよりデータだけ何かしらの方法で抜き出して作った方が早いと判断した。
「お二人とも探査活動お疲れ様です。このチームのリーダー。マーク・サクライという者です。」
「私はエル・コンキスタです。こちらはトール・バミューダさんです。」

「マークさんさぼってないであなたも探しましょうよ!」

 そう言ったのはマークという男性と同じチームメンバーの女性ハルだった。マークは見た感じオタクっぽくて小柄でひょろい感じの男性で、ハルは色白でオタクっぽい眼鏡をした女性だった。

「いや、彼らが最初に探検してくれたから我々百名はやってこれたんだから。チームのリーダーとしてあいさつするのは当たり前だと僕は思ったんだけど。」
「ああ、じゃあ私ハルっていいます。小さい頃から同じ訓練を受けて来たこのチームが大好きです。」
 そういう自己紹介ならと渋々ハルも塩対応な挨拶をした。
 
 部分的で完全に平等なカースト制度。

 宇宙旅行をより効率よく進めるため、職業を家庭ごとに何をして何に特化して教育を受けさせるか、引き継がれて決められている。なお、給料は年功序列で何をしていても母船では徐々に給料が上がっていき、尚且つ同じ給料が支払われるシステムだ。ただし、その業務内で先進的なことができるとボーナスが付くようになっている。
 徐々に物資と共に医療班、武装した部隊も合流して来た。
 基本的に彼らは先遣隊の命令を聞くようにということになっている。
 医療班はまず、トールとエルの二人の健康診断を行った。
 トールとエルがこの現地で一番重責のあるポジションになる。

 この社会が安定したら代表者は選挙で判断される予定だ。

 どのような結果が出るかで本当にこの星に住んで大丈夫かどうか分かるが、二人には健康上の問題は無いということが分かった。
 百人の割合は男性二十人、女性八十人と女性の方が多い。
 船内は一夫一妻制で人口抑制するため一夫婦につき二人の子供を作ることが義務だった。
 体調その他、男性もしくは女性に不妊治療などが必要な場合はAIが判断し、離婚を促し、的確な相手をお互いに見繕うという人口減少も人口増加もないバランスを取り続けて来た。幼いころから相手はある程度決められている。
 しかし、最初に十万人だった自治体の人口は今約七万人となっている。理由としては持続可能な社会が崩れてしまったことも理由にあるが、船団の老朽化問題に伴い、人口を削減しながら旅を続けなければ近く滅んでしまうというAIによる計算結果が出ているからだ。

 早く移住先を見つけなければ滅ぶのは時間の問題。この星を発見できたことは奇跡だ。
 これからは人口を爆発的に増やすため一夫多妻、多夫多妻制にすることが船団の作った法律で決まっている。そのため、人口比率が男性より女性の方が多いといういびつなメンバーが送り込まれた。そして、この星では船内になかった自由恋愛が認められている。

 マークのチームは二手に分かれ、中央コントロール室と見られる遺跡の最奥の部屋の探索と、外のオブジェの分解、分析を始めた。
「マーク主任! このポンコツオブジェを分解しました。したところ分かったことですが。」
「どうした?」
「これは元々生き物だった可能性があります。そこに我々の技術の制御基板が入れられて動いていたようです。動いた物とトールさんのシュナイダーが格闘したものだけが完全な機械でした。それと他の蟻型オブジェは空洞になっています。もしかしたら生物の抜け殻かも知れません。」

 これはトールが万が一に死んだときに使用しているシュナイダーが情報を母船に送るシステムを応用したものらしいことが分かった。
「この生き物の電源を入れるのは恐らく危険です。資源として使うことを提案します。」
 確かに外骨格の材質が分析できていない金属質になっているが、シュナイダーで計測したところ、節は頑丈でそれ以外は簡易的な建物を作ることにも向いていることが分かった。

「トールッ氏! 農耕担当リーダーのミッチェンっす。水脈があることは分かっているし、この砂漠は見たところ、色々な夏野菜が作れるっす。ナス、トマト、キュウリ、何でも行けるんでえ、取り敢えず苗を作るためのハウスが要ります。この邪魔なオブジェをどかしてハウスつくりませんか?」

 ミッチェンは何だか変な若者言葉なのかギャル語をしゃべる。背が高く、茶髪の天然パーマでポニーテールをしている。日焼けを気にしていない感じで筋肉質な雰囲気の女性リーダーだった。

「あ! このシュナイダーの後ろについてる荷車は竹っすか? どこで手に入れたっすか?」

 トールは来た時に襲われたオアシスの肉食植物のことをミッチェンに話した。

「ああ。ハウスづくりにぜひ欲しい。てか建材にもできるしたくさん刈り取ってきましょうよ。この星で食べられるものは他にあるっすか? この星で取れるもので独自に食べれるものがあると栽培でも畜産でもなんでもできっすよ。」

「それならこれが食べれるよ!」

 エルはエイリアンみたいなものを写真で見せて説明した。

「最初は雑草かと思って引っ張ったら現れて襲われたんだけれど焼いて食べてみたらキャベツと肉を同時に食べているみたいな味だったよ。シュナイダーの分析によるとどうも動物と植物のハイブリッド種みたいなものらしいよ。」

「OKっすね。良いじゃないっすか。ヘルシーだし。食物繊維とタンパク質も取れるすごい植物っすね。あれだ。畑の肉だ。大豆みたいだけど大豆じゃない。ミドリムシが大きくなったような生物っす。てか一々襲われるんすね。何でそんなに食肉植物ばっかり生えてるんすかね。多分他にも動物がいそうっすね。」

「ああいると思うよ。まだ見てないだけで肉食動物もいたし。目が四つある虎みたいなのにも襲われたな。」

「へー。まじ人間殺しに来る環境っすね。」

 トールとエルは頷いた。

「植物を食べる動物がいないから。多分この星のこの砂漠地帯は食物連鎖の頂点に立っているのが植物なんでしょうね。でもさっきエンジニアが話していたようにあれが死体じゃなく抜け殻なら巨大昆虫もいるでしょう。怖いなー」

「まあこの虫の抜け殻も頑丈だし建材に利用できるだろう。」

「そうっすね。まだ農耕できる環境を作ることが先決何で、百姓五十名と、シュナイダー五機でこの辺一帯を開拓しましょう。」

ミッチェンはかなり頭が切れることが分かった。

 この頭が切れる農耕部隊五十人の代表者なので、派閥があるとすればこの農耕部隊のトップがこの集団のトップと見ても良い。

 この星の緑地の地域ではなく砂漠から開拓を進めるのは、生物が少なさそうだという理由で進められている。


☆☆☆

 暗殺部隊十名は、なぜか森と砂漠の堺の地域へ派遣された。

 アグリッパに言われたようにエルを暗殺しようとしていることがアベルにバレたと思われる。上層部の争いにはうんざりだと暗殺部隊隊長ゲルグは思った。

 森の方が安全なのか、それとも砂漠の方が安全なのか。

「隊長、俺ら『自治体』から捨てられましたね。こんなところに放り出されて。物資もこんなところに送ってこないでしょう。」

 部下のコバヤシがそう言った。

「隊長! 砂漠じゃ食べ物の確保も厳しいと推察されます! 我々は森に行きましょう!」

「いえ、合流を目指すべきです。」

 部下がやんややんやと意見を言いだした。

「仕方ない。我々は独自にやって行こう。とにかく。俺たちは間を取ってこれから森へ入っては外へ出るという冒険を行うぞ。今シュナイダーが一台しかない。バラバラにならないように。全員通信端末を使って離れたら連絡を取り合おう。外からの支援はまあ確認はしておこう。」

 追加物資の調達は彼らには厳しかった。

「了解!」

「あと、この端末で砂漠にある本体、トール氏と話せるはず。今一旦連絡を取る。」


☆☆☆

 

 後十人来るはずだと思っていたトールではあったが連絡があった。

 しかも堂々と暗殺者を名乗っている。
 どうしたものかと話を聞いて見ると、エルを殺すようアグリッパから言われているという話だった。そんなことがアベル氏か誰かにバレたのか遠いところに着陸したと言っている。最初からではあったがエルを殺すというチームではあったが辞めようということに自分たちで決めたという。

 母船でのごたごたがこっちにまで影響がある。ああ、うんざりだ。

 トールはそう思った。
 この中にもエルを暗殺しようとしているメンバーがいるかも知れない。
 エルを守らなければ。何で?
 トールはふと思った。
 しかし答えは出ていた。トールはエルが好きなのだ。自覚なく。
 大体から言って船内のAIで決められた相手、つまり婚約者がいるだろう。クローン人間のトールにはいないが。

「あの! トールさんこの百人の中に婚約者とかいらっしゃいますか?」

 エルが突然そう言いだした。ただの興味本位のようだ。

「いや。俺はいわゆるクローン人間だから婚約者なんていないんだよ。」「そうですか。私もです。」何だか嬉しそうに見えた。

「え! 船内に決められた相手がいてまだ来ないとかじゃないの?」
 エルは首を横に振った。

「私の婚約者はアグリッパの息子なんですが。そいつは嫌な奴なのでお断りしたのです。」
「そんなことが許されるのか?」
「嫌なのですよ。親の七光りのアグリッパジュニアなんて。あいつと一緒になるくらいなら一生独り身で良いと思っているのです。」

 アグリッパは保守派船内生活重視思想者だった。アベルは改革派船外移住優先主義者、AIはその組み合わせに政略結婚を薦めて来ていた。

 アグリッパとアグリッパジュニアは乗り気だったが、エルとアベルは拒否した。AIの意見に反することをするのは犯罪だが、移住探査に参加することで懲役などを避けた。また、これに関して、実は『評議員の不逮捕特権』をフルパワーで使っている。

 それが権力者の娘がわざわざこの星に来た理由である。
 ただし、この星では、多夫多妻という形での結婚が基本となっている。
 言い方を変えるとパートナーや家族同士の合意があればいくらでも不倫しても良い。そのかわりドンドン人口を増やさなければならない。そして、まずは、農耕部隊を中心に一万人の胃袋を満たせるだけの食料生産を目指していかなければならない。建築資材はあるにはあるが、それ以上にハウスを作るため、分解した蟻と、竹に近い殺人オアシスの竹で大量のハウスが完成した。

 次に来る千人、更に来る一万人に向けて準備を進めていく。
 今は遺跡の中に住む者もいるし外にテントを作って生活している人々もいる。
 このような人口調整は二十年周期でAIが計算していた。
 ここでも同じだ。二十代から三十代の若者が派遣されているが、当然二十年後は四十から五十才、その二十年後は六十から七十という年齢になり、徐々に人々は減っていく。

 一夫多妻制を取るのは、人口ピラミッドを正常にするために考えたときに働き盛りの二十代から三十代の人口を常に一定以上確保するために多夫多妻制をとっている。

 オブジェの蟻を全部片づけたら大量の建築資材として利用されることとなった。トールは理系っぽい考え方をしていたが、性欲は普通に強かったので妻がニ人から三人欲しいと思っていた。
 この百人のメンバーは男性一人あたりに少なくとも女性三人から四人の相手がいるようにメンバーが産まれた時から紐づけされている。ただ、開拓先ではそこは自由で良いということになっている。

☆☆☆

「中央コントロール室の解析が完了しました。」
 トールにエンジニアのマークから報告があった。
「ついでにシュナイダーや航空機やドローンの管制を行うためのシステムを導入したので、試しに使用して状況を確認しましょう。そう言えば、中央コントロール室の件なのですが、結局最初から作り直した方が早いと考えて作りました。」
 システムを分析して何をするために作られたシステムだったのか知りたかったが、できないじゃあ仕方ないな、とトールは思った。

「このコントロール室は再現できなかったですが、やっぱりあの蟻のオブジェを動かすためのシステムだったと推察されます。」

 マークはそこまでの情報は掴めていた。
 洞窟の最奥にあるのでここは冷暖房が必要なかったが、システムが起動すると若干熱いと思った。
「しかし、なんだなー。せっかく移住できそうな遺跡を発見したのに利用者が少ないなぁ。みんなは入れるのに。」

 トールは残念そうにそうつぶやいた。

「え? それはそうでしょう。だってプライベート空間が欲しいからみんなテントを作っているんですよ。だってここに密集して住むのはちょっと嫌でしょう。プライバシーが守れないから。良いんじゃないですか? まあ取り敢えずここは外で何かあったときのシェルターとして使えば良いかと思いますよ。」

 マークの話し方は大人の事情が分からない子供に説明するかのような言い方だった。トールはプライベートを守れないと聞いて、ああ、みんな仲がいいのか。そう思った。

「因みになんだけれど、マークは誰とか、何人と寝たんだ?」
「それは、まぁ同じエンジニアチームの・・・。」
「ちょっと! 言わないでよ!」
 ハルが恥ずかしそうに言うのを止めたので大体分かった。

「そうですよ。聞くだけ野暮です。」
 マークにそう言われるとは思わなかった。

「ところでこの遺跡なのですが。恐らく巨大な戦艦かも知れないです。」   
 マークは予想外のことを言い出した。

☆☆☆

 三十人の戦闘部隊は農耕部隊と協力してハウスやテントの作成、あとは外敵になりそうな巨大生物を狩りに出たりしていた。

「エルさん。水道工事他、ハウスもある程度完了してます。部隊を編成して更に奥地の探査に行きたいのですがいいですか?」

 遺跡内とエンジニアチームの中央部はトールの担当、外はエルが指示を出すなどしていた。
「良いけれど、守備が手薄になるのはなぁと思うんだけれど。どんな計画?」
「一応五人編成、シュナイダーは武装したものを一機使えればと思います。」
 エルはその人数なら守備は手薄にならないと思い良いと思ったが、一応トールにも確認しOKを出した。
「農耕できる生物を探してきて欲しい。特にこれ。襲われるから注意して群生地とかあったら見つけて欲しい。」
 エルはトールと食べたキャベツと肉の味がする生物を見せた。

「分かりました。それじゃ行って来ます。」
 この言葉にエルは彼らのやる気を感じた。

「行ってらっしゃい。私たち開拓団の誇りを胸に行ってください!」
 命がけの旅のつもりはなかった戦闘部隊五名だったが団体行動から離れて行った。

 このレイ・カーターが装備している戦闘部隊の武装はARC1118というレーザー銃と火薬を使った実弾を両方使える銃で武装している。この銃の特徴は、まずレーザーが到達し生物に焼けるようなダメージを与え、そのうえで追って実弾が着弾する仕組みになっている。非常に強力なタイプの銃だった。

「あ、その前に代表者の名前を教えてください。」

 エルは普通にこの百人全員の名前を知らない。代表者だけでも覚えておこうと思って何気なく聞いた。

「私は、レイ・カーターです。」

 代表者の男はそう名乗ると「では。」と言って探索に出掛けた。

 レイ・カーターは、背の高い男で髪の毛を肩まで伸ばしているイケメンだな~とエルは思った。

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