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[AOF]第五話 ミッション外行動・遺跡探査

「俺の方がこの道のプロだから俺の後からついて来て。」
「分かりましたお願いします。」
 良いところを見せようとしているのだろうとエルは思って少しにやっとしてしまった。
 人が一人ずつ通れるようになっているが、入り口は明らかに人工的な階段になっていた。
 迷わないように一歩一歩入って行くとドンドン先が暗くなっていく。
 小型の懐中電灯で照らすと虫が這っていたりする。地下には小部屋がいくつかあって寝床のようなものが置いてある部屋ばかりあった。百人くらいは住めそうなくらい道沿いに部屋があった。中は外と比べれば涼しい。
 ボロくなって何年経過したか不明だが蛇口が無くなっている水道から絶え間なく水が流れている。日が当たらないせいか、白い苔が生えている。
 上下水道の設備があるらしいことが分かった。
 最奥に巨大なモニターのある設備があった。シュナイダーから通信が入る。
『そこから信号が出ています。解析したいのでVRゴーグルを使ってシステムを眺めてください。』トールはシュナイダーの指示通りにシステムを眺めると使い方などが見えた。
『解析完了。このシステムは『本国共通システム』のサーバー拠点です。』
 VRゴーグルにスイッチの位置や色々な使い方が表示されており、記録されているので電源を入れようとするも、当然のように電源は入らなかった。『蟻型オブジェは恐らく本国共通システムで駆動するロボットかと思われます。また、遺跡はそのまま人が住むのにすぐれています。この周辺十キロ以内に先遣隊百名を追加で呼べるよう我々の自治体に要請します。また、エンジニアと本国共通システム関係は支援を要請しましょう。』
 何と言ってもシュナイダーは搭載されているスピーカーがあまり良くないが、通信機越しだと音声がきれいに聞こえる。
「それも良いだろう。だが共通システムで本当に蟻型オブジェが安全かどうか確認する必要がある。分解作業をしてくれ。」
 シュナイダーがマニピュレーターに搭載されている色々な工具で蟻型オブジェを分解しようとした時だった。
 周囲の三匹が動き出してシュナイダーに攻撃を始めた。
『緊急事態です。分解を試みたところ襲われています。自治体に新型シュナイダーも要請しました。私が破壊されたら新型とレーザーキャノン付きの機体が来るよう手配しました。危険です。そこに引き籠っていてください。』

 こうなるとしばらく外に出れない。
 シュナイダー・・・逆関節式二足歩行型トラクター兼戦車、万能マシン。AI(学習記録型コンピューター)が搭載されている、今までトールとシュナイダーはたくさんの戦いを経験しているし、他の探査担当者に伝説的な強者が搭乗することでシュナイダーは強化されたトラクターだ。だがしかし、あくまでトラクターだ。

 もしかしたらあの数の敵と一体で戦うという無茶をシュナイダーはしている。トールはその様子を見に行った。

「危険なんでしょ! 行っちゃダメです!」
 エルはトールを止めた。

「あいつは俺の大事なパートナーだ。壊れたら俺も死ぬ。」
「冷静になって。既に自治体に要請したって言っていたし。危険は冒しちゃだめです。」

 遺跡の入り口から戦いの様子を二人で見ていた。
 シュナイダーは高くジャンプすると力強いキックで応戦していた。三対一が二対一の戦いになっていた。
『破壊方法の分析完了、これより残り二体を破壊します。』
 トールが見たことのないシュナイダーの戦い方。伝説の搭乗者のデータで動いていることはよくわかった。
『戦闘終了しました。』
 大きさ全長10m高さ5mの敵をおよそ半分(全高5m、全長2m)のシュナイダーは余裕で撃破した。

「勝ったかぁ」

 載ってなくてよかったとトールは思った。あの動きは恐らく自治体で行われていたシュナイダーカップ格闘大会の優勝者の乗りこなしを学習したものだろう。見たことがある。

「強すぎですね。シュナイダー。」
 エルはそう素直な感想を言った。

「まあな。俺の相棒だからな。」
 本当はここまで強いとは知らなかった。

「イエ、敵ガ、ポンコツデシタ。既ニ解析済デスガ。敵ハパフォーマンスを100%発揮シテイマセンデシタ。」
「お前もスピーカーがポンコツだな。聞き取りづらいぞ。」
「ジャア、マダ其処等ニ落チテイル機械カラスピーカーヲトッテ移植シマショウ。」

 スピーカーを取ってトールは取り付けた。

『スピーカーの移植が完了しました。』

☆☆☆

 百人の応援を要請したのは良いが、ここに置いてある変なオブジェをどう扱うかが問題だ。誰が何のために設置したのか、遺跡の守りだということは何となくわかる。しかし、本当にそうなのか。

「シュナイダー。こいつらの技術は何だと推測される?」

『例えばこの回路を見るに基の技術は地球と仕組みは同じです。良く見ると、トランジスタやCPUが確認できました。基盤に記されている言語は、英語なのでやはり地球人がこの惑星へ一度来た痕跡があるかと推察されます。ただ、バッテリーが故障しており、正常に作動するマシンはあまりないと見られます。すべてを同じ状態なら片っ端からぶっ壊すのに二時間あれば行けると思いますが、動力が100%の状態で動かれると私は壊れるでしょう。』「シュナイダーさん強いんですね。」
 エルがそう感想を述べた。
「シュナイダー。こいつらの再プログラミングや修理はできるか?」
『可能です。ですがバッテリーが故障していると思われるので補給と応援が到着しだいでなければ無理かと思います。』
「シュナイダー、破壊した蟻型オブジェから使える部品でお前自身を強化できそうなものはあったか?」
『奴らは電力不足で使えないようだったのですが『レーザー砲』と、『鋭い爪』が入手可能です。マニピュレーターも一つ追加できそうです。』
 『マニピュレータ』と『鋭い爪』を背中に設置すると、まるでサソリのようなデザインになった。後ろから来た敵を倒せると同時に地面を耕すこともできる。
 レーザー砲は頭部に設置した。
 レーザー砲は直に照準を合わせられる。段々いかついオリジナル機体が出来てくる。

 これなら暗殺者も怖くない。

☆☆☆

 彼らはどこの誰なんだ?

 分かりません。ただ、我々とあまり変わらない人種です。同じ地球から来ていると思います。話している言葉から推察するに基はヨーロッパの人々かと思われます。

 久しぶりの『外交』をしないといけないな。

 しかし、『赤蟻』を撃退できるほど強いロボットだな。

 ああ、まるで恐竜のような見た目だ。

 我々アジアの自治体『日本国』と彼らは共存できるだろうか。

 基本的にそうだよな。宇宙で出会った人間同士、共存しないといけないだろう。

 それに『赤蟻』だ。あれが起動できれば広大な砂漠を草原にも森にもできるだろう。

 しかし、彼らはまだ少ない。二人だけじゃ心細いだろう。

☆彡


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