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黒薔薇のひと -故・吉屋信子へ-

月をみて
まだ乙女が涙さしぐさんでいた昔

貴女はその涙で
乙女らに手紙を書いた

そのインクはブルー・グレー
高貴なる色 知性の色

手紙はその胸に
黒曜の鏡を持つ乙女だけに
鳥が届けた

あえかなる乙女たちは
はじめてその黒曜の瞳を鏡に映し
そうして気づいた

わたしの涙はブルー・グレー
高貴なる色 知性の色

そうして彼女らは涙をぬぐい
月を棄て 歩きだした

サッフォの彗星の降る夜
あなたの墓前を訪ねる

この黒薔薇はあなたに相応しい

かつてブルー・グレーの涙を流した
黒曜の瞳の貴女に!

#詩 #文学 #自由詩 #散文詩 #吉屋信子


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