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映画「ウエスト・サイド・ストーリー」で撃沈した理由

衝撃と悲しみ。緊張と不安。ウクライナをめぐる情勢に、心が重く沈んでゆきます。

そんなときこそ、歌と踊り。映画「ウエスト・サイド・ストーリー」を観に行ったのは、心を軽くしたかったから。

少し前のミュージカル映画「イン・ザ・ハイツ」でも、心が晴れやかに吹き飛ばされるような勢いがありました。

ところが――。

涙がこぼれ落ちるようなロマンチックなデュエットの旋律も、野球のオオタニサーンにどこか似ていて応援したくなる健気なヒーローも、活気と野性味にあふれるニューヨークの街並みも、とっても素敵だったのに、私はこの映画でさらに打ちのめされてしまったのです。

原作となったブロードウェイの舞台は1950年代後半のニューヨーク。当時のギャングによる抗争が描かれています。ポーランド系とプエルトリコ系の移民が、シマ(縄張り)をめぐってけんかする。「ロミオとジュリエット」をもとにしたこの作品で、争いごとはあくまでも、ラブストーリーを際立たせる役割であるはず。

それなのに、世界情勢ゆえか、私には「戦う人たち」の心情がより、リアルに感じられたのです。

仲間を大切にする気持ち。正義感。目の前の理不尽な状況を止めたい。そんな思いから、やさしくて平和を愛する人が、やむにやまれず戦いに巻き込まれていく。

戦争や殺し合いはいかなる理由があろうと反対。そう思っていたけれど、もしいやおうなしに強い感情に突き動かされ、その先に戦いしかなかったなら、自分はどうするのだろう。

戦えば、取返しのつかないことになる。しかし、そんな判断さえ差しはさめない状況があるとしたら、行動するしかないのではないか。

戦う人たちにすっかり感情移入し、「自分だったら」と思いをめぐらせながら、映画が終ってからも、しばしあぜんとしてしまいました。

「ウエスト・サイド・ストーリー」はフィクションですが、抗争の舞台となったニューヨーク西側地区は、かつての荒廃から生まれ変わり、レストランや高級ホテル、高層アパートが立ち並ぶ地域となりました。「ヘルズ・キッチン」とよばれ、小室さん、眞子さん夫妻が住んでいるのもこの地域です。

未来がどうなるかなんて、誰にもわからない。目の前にあるのは、戦わなければいけない現実だけ。そんな状況を想像してしまうと、恋の輝きを歌う「トゥナイト」の甘いメロディさえも、はかない「今」を憂うかのように切なさを帯び、心に響きます。

はからずも世界情勢をめぐる心境と重なった「ウエスト・サイド・ストーリー」。次に観るときは歌に踊りに、恋の行方に、心がキュンとなるシーンを心ゆくまで楽しむぞっ!



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