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指導者の在り方を学んだ最初

 整体師という仕事はその人の人生にまで携わる仕事だなと感じている。最初は「人の身体のゆがみを正して、歪みを整える。」それが仕事だと思っていたがとんでもない。全く逆で来てくれる人のおかげでこちらが成長させていただけるのだ。そして整体師という仕事を通じて様々なことを考えさせられ「整体」とはどういうことなのかという事をも知らさせることになるのです。もちろんまだ最終的な答えにまでは到着していないのだが。

 私の短い期間だがそんな整体の仕事を通じて私自身の価値観の形成や、人間的な部分にもたくさん影響しているのです。

 今回はそんな影響を受けた中の一件をお話します。

 一人の40代女性。彼女は子どものころに「脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)」と診断され、今までに手術やコルセットなども勧められてきましたがそのままの身体でいることを望んでいました。
 その方と出会ったことで一度私の施術を受けてみる事になりました。

 身体の歪みをチェックしてできることをやっていく。そうするとだんだん変化が出てきて最初の頃の歪みの角度が変わってきました。
歪みがあることによる腰痛や喘息もましになりとても喜んでいただけました。
 しかし、ほとんど通院していなかった専門の病院に行かなくてはならないことがあり、病院の先生と話していたら手術をする方向に話が進んだというのです。
 ご本人の心境は、「手術をしたい!」というものではなく「じゃぁ、そういわれるなら手術します。」という感じだったのです。
 素人では判断できませんし、専門の先生に言われたらそうなのかなと思うのは普通ですよね。
 そんな事情があったという事を私は聞き、ご本人は私に「どうしたらいいでしょうか?」と聞かれてまだまだな私は完全に請け負ってしまいそれから数週間悩み続けました。誰も出せない答えを探してずっと考えました。しかし答えは出るわけもなく日は過ぎていきました。
 好きな身体のことを仕事にしたい。そう思って入ったこの世界だったけど「自分にはどうすることもできない。」と当時は自分の無力さにがっかりしていました。よく言うと、正義感の強い。悪く言うと思いあがっている。当時の私はとにかく一生懸命だったんですね。
 そんな中、師匠に聞く事ができるタイミングがありこのことを相談してみました。その話を説明する中で、なぜか涙があふれてきてきました。誰にも相談することもできない中、唯一わかってもらえると思うと、日々悩んでいたことが身体に緊張として溜まっていてそれが涙と共に身体からあふれてきたようでした。今想い出しても涙が出てきます。責任感の強さ、一人経営、自分は強い。そう思っていた自分自身がいつの日か悩みを打ち明けることのできない人になっていたのです。「なんでも自分でできるようにならないと!」そう思っていたのですね。その時に、師匠に言われたひとことは本当に心も身体も軽くなる一言だったのです。

「本人がどうしたいのか?というのが一番大切だけど手術が悪いわけじゃないからね。手術にも整体にもどちらにも良さがあるよね。」

 それを聞いた瞬間、「そっか!!!」
と、急に軽くなったのを覚えています。
 知らない間に「手術はよくない」というどこからの根拠かわからない思い込みをしていたのです。それに気づいたときは自分でも驚きました。

 そして同様に同じ感覚をご本人にも感じてほしいなと思ったんです。
「どうしたらいいでしょうか?」という問いに、「あっ!そっか!」と思う答えを導かせてあげたかったんです。楽になってほしいと思ったんですね。
 そして彼女にその後会った時にこう言ってあげました。
「〇〇さんは今はどうしたいと思ってる?本当の気持ちを聞かせて。そして手術が悪いわけじゃないからね。自分がどうしたいのかを大切にしてね。」

 そして数日後、最後の予約日に来た彼女は、まっすぐな目で、ほんの少し背が高くなり、スッとした姿勢になっていて
「マキ先生。私、手術することに決めました。」
そう話してくれたのです。

 人が物事を決意した時、体の歪みが整って凛とした一本軸ができることを初めて知りました。
 それは他人が入れた軸ではなく、本人が決めたことで自然と入った軸。本当の人の強さを知った氣がしました。

 私も師匠にアドバイスをいただいて一本軸が入り、そのおかげで患者にも一本軸が入るアドバイスができた。

 指導者の在り方の大切さを学んだ一番最初だったかもしれません。

 「治療家が自分の力で相手を変えるんだ!」という傲慢が出ていたのです。そうではないのです。自分自身がどうしたいのかという想いがその人の身体に影響する。それを導き出し、サポートしてあげることが整体師の仕事なのかなと思います。

 現在も様々な方に、様々な内容の相談を受けますが今もこの考え方は私の細胞の中に素粒子レベルで入っています。
 今こうして人の相談を受けれるのもこの経験のおかげです。
感謝。

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