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南海トラフと二地域居住を想う

おとといから夏休みに入りました。

でも南海トラフ地震の注意警報がでてから、何となく落ち着かないですね。旅行に行く気持ちにもあまりなれませんし。

首都圏で大災害が起きた場合に備えて、地方に疎開できる場所をつくりたいと10年くらい前から漠然と思っています。

もともと、都会と地方を行き来するような生活に憧れていました。誰にも干渉されず、気ままな猫のように生きてみたい。

移住は家の事情や仕事の関係で、私には無理なので…月の半分、あるいは1週間くらい地方で暮らすような生活が理想的です。

そんなわけでコロナ禍でリモートワークが浸透してきたあたりから、「二地域居住」に注目してきました。

二地域居住…都市と地方のそれぞれに生活拠点を構えるライフスタイルのこと。今年の5月に国交省が中心となり、二地域居住の促進法が国会で可決。東京一極集中是正のためにも、関係人口の拡大、深化のためにも普及が期待されている。

先日、とある勉強会に参加しました。二地域居住の法制化の旗振り役を務めた衆議院議員の越智さんと国交省の国土政策局長の黒田さんの話を聞くことができました。

以下、二地域居住の最新状況をまとめました。あまり知られていない情報だと思いますので、興味のある方はお読みください

推進事例① 交通費の公的補助

私は知りませんでしたが、すでに一部の地域で導入されているそうです。たとえば、長野県佐久市では二地域居住かつリモートワークをしている人に「新幹線乗車券等購入費支援金」として 2万円(月額上限)を支給しています。条件は佐久市に住民票を移すことです。

NHKの報道によると、移住者と住民がアイデアを出し合いクラフトビールを商品化するなど地域活性化の効果も出ているということです。

お金ではなくポイント還元も始まりそうです。たとえば北海道で二地域居住していることが証明できれば、鉄道会社や航空会社と連携して、ポイントやマイルがたまる形での補助を国交省は検討しているそうです。

推進事例② 疎開保険

鳥取県智頭町では全国で唯一「疎開保険」があります。毎年、保険料を年1万円(1人)から2万円(4人まで)払えば、災害時に町内の民泊で7日間(3食付き)受け入れるというものです。

ただ、首都圏で大災害があった場合、線路や道路の崩壊は十分あり得ると思うので、どうやって鳥取まで行くのかという疑問はあります。

ちなみに、災害がなく疎開しなかった年は、特産品を届けたりするなどの関係を築いているそうです。ふるさと納税に近い感じですね。

南海トラフ地震の警戒が急速に高まっている中、同様の保険を始める自治体は増えていくように思います。疎開先までの移動手段をどうするかは今後真剣に議論されていくでしょう。

一方、二地域居住には大きな課題があります。それは税金と教育に関するものです。

課題① 住民票・ゴミ出し

現在日本では2つの住民票を持つことができません。住民票のあるところに住民税を払うわけですから、自治体にとってはシビアな問題です。

たとえば、二地域で月の半分ずつ生活する人はどっちを選べばいいのか。ガイドラインがないため、本人の意思で決まります。

また、住民税や町内会費を払わないのにゴミ出しをしてもいいのか。そんな素朴な疑問も出てきます。

課題② デュアルスクール

今の時代、親はリモートワークで場所を選ばず働けますが、子どもの学校はそうはいきません。都会と地方の学校を行ったり来たりするなんてありえないと普通は思いますよね。でもできる地域があるんです。

徳島県など一部の地域では二地域居住の子どもを受け入れるデュアルスクールを実施しています。

ここでも素朴な疑問が色々でてくると思います。

たとえば、東京の小学校に通っている小学生が親の都合により毎月2週間徳島の学校に通うようになる。

その場合、それぞれの学校で勉強している内容がズレているのではないか。そもそも教科書が違うではないか。先生はその子にどう対応すればいいのか…。

これらについて徳島の場合、デュアルスクールの子どものフォローをするための民間のコーディネーターが存在し、他の地域で就学したい家族と、他の地域から人を受け入れたい地域の学校とをつないでいます。勉強の個別フォローも先生に代わって行います。

私も取材をするまではそんなにうまくいくのかなぁと疑いの目を持っていましたが、うまく機能している印象でした。都会の子どもにとって、地方の学校に通うことがいい体験になっていると感じました。逆もしかりです。

以下、徳島でデュアルスクールの運営やサテライトオフィスの誘致を通じて二地域居住を推進している㈱あわえの動画です。3年前に取材しました。よかったら、ご覧ください。

あわえの吉田社長(右)と

ただ、全国的に見るとデュアルスクールの普及は10%以下。教育委員会が受け入れOKを出さないからです。教育はある意味聖域のようなところがあり、普及には相当時間かかりそうです。

で、二地域居住は普及するのか

推進役の越智議員の見立てでは、二地域居住の本格的な普及は10年がかりになりそうです。

この数年は実績を積み上げて、それから総務省と議論するそうです。総務省としては住民票の問題が大きいので、安易に協力できないのです。

また、二地域居住の普及のためには、全国に900万戸ある空き家の活用や週休3日制の推進も必要になってくると思います。

人口が減っている中でいまの日本の社会システムを維持するためには、一人の人間が複数の役割を持つ必要があります。そういう意味で、複業、二地域居住は時代の流れに合っています。

ただ、日々のゆとりが感じられなければ、二地域居住をしてもあまり意味がないように思います。そこが北欧と日本の大きな違いかもしれません。

誰が書いたか忘れましたが、「完璧を求めすぎていることが少子化の原因ではないか」みたいな文章を最近読みました。共感して、思わず写メを取りました。

私も完璧を求めすぎて、結果疲れてしまったのかもしれません(苦笑)

最後に写真家の星野道夫さんの言葉を引用します。

何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時間を、大切にしたい。
慌ただしい、人間の日々の営みと並行して、
もう一つの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。
そんなことを、いつの日か、自分の子供に伝えてゆけるだろうか。
「ワスレナグサ」より

長文を読んでいいただき、ありがとうございました。

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