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芥川龍之介「蜘蛛の糸」

本日は、芥川龍之介「蜘蛛の糸」を朗読しております。

おなじみのこの物語。初出は、童話・童謡の児童雑誌『赤い鳥』の創刊号(1918年(大正7年)7月1日発行)。創作童話「蜘蛛の糸」として発表されています。

「赤い鳥」

『日本沈没』の小松左京氏は、自作のパロディ「蜘蛛の糸」(ショートショート集『役に立つハエ』収載)のなかで――

(前略)
芥川龍之介は、オチョボ口をして、いかにもありがたそうに書いていたが――私はどうも、昔からこの話に腹が立ってならなかった。
(中略)
蜘蛛を助けたのは、彼なのだから、糸の権利は彼だけのものであるのは当然で、危険を感じれば、どなるのも当然だ。――我欲をおこしたから、すくわれそこねた、というが、他をもともに救わんとする心こそ、おのれを救うことになる、などという小うるさい考えが、相手を殺さねば、おのれも殺されるという修羅場を生きてきた泥的に、簡単にわかるはずはないではないか?
しかもシャカときたら、この男にこうしたら、そうなるのはわかっていながら、わざわざ、あだな希望を抱かせるようなことをしたのは――まったくもって残酷な話だ。(後略)

『役に立つハエ』(小松左京)

――と、こんなふうにディスったあと(苦笑)、犍陀多とお釋迦様が逆転したおもしろい話を書いていますが、私はこの前段のなかの、「オチョボ口をして」というのがツボです。

「蜘蛛の糸」芥川龍之介

それはさておき、この作品においても、芥川の話の運び方の巧みさと文章の美しさには魅せられます。特に、蓮の描写が好きです。
序盤の、「翡翠のやうな色をした蓮の葉の上に、極楽の蜘蛛が、一匹美しい銀色の糸をかけてをりました」。さりげないですが、きれいな表現ですねえ。

玉のように真っ白な蓮の花の、真ん中の金色の蕋からの「なんとも云へない好いにほい」というのは、アタマにもラストにも出てきて、この話に漂う血の匂いをやわらげているようにも感じられますが…当の蓮自身は、一連の出来事にも、お釋迦様の思いにも…「しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません」とあるのです。こういう書き方が、かっこいいんですよねえ。

ところで糸といえば~、一昨日、抜糸をしてきました。
先週、2泊3日入院して、おやしらずの抜歯をしたので、そのときのです。
むずかしい箇所に埋まっていたのとトシのこともあって、全身麻酔での手術。
執刀医の先生が楽しく頼もしい感じの方で、安心して受けることができました。
無事に終えて、ほっとしています☺️

芥川の作品はほかに、「仙人」「軽井沢で」「蛙」「カルメン」「ピアノ」「鬼ごっこ」「しるこ」「猿蟹合戦」「微笑」「南瓜」「詩集」「かちかち山」「夢」も朗読しております。
あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。