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9月の記憶(後編)
突然ですが、「旅行者下痢症」って病気ありますよね。
私はその真逆です。環境が変わると出なくなるんです。
入院中もそうでした。とはいえ、9月前半~中盤は、栄養源が点滴のみでしたので、「大」についてはさほど気にはかけていなかったんですが。。。
経口摂食が少しずつ始まり、1週間ほど過ぎた頃のことです。
「ヤツ」は、何の前兆もなしにやってきました。
てか、1週間出ないってのも異常ですよね。ということで、看護師が「下剤でも追加しましょうか?」と、これまたロクでもないことを提案してきたんです。
正直、私、下剤嫌いです。きっつい腹痛伴いますから。
コーラックとかヤバいですよね。ハラは痛いのに出ないってか出る気配すら見せない。
看護師が提案してきたもう一つの選択肢は、「坐薬型下剤」。
これもっとあかんに決まってるじゃないですか。入れるんですよ。私これ、経験あります。もっとも、当時はぶっとい指の節くれだったおっさん医師でしたので、はい、ただ痛いだけでした。
ここは総合病院。入れるのは看護師の細長い指。ヘンな声とか出ちゃうじゃないですか。看護師の中には「秘技」を心得た曲者がいるって噂もどこかで聞いたことがあります。知らんけど。
いいですか?私、職業ヘアメイクです。美容を職としています。看護師さんの前で「老若男女問わず、誰でも美しくします!」と大見得切りました。
そんな誇り高き美のプロデューサー、ヘンな喘ぎ声など絶対聞かれる訳にいかないじゃないですか。
「飲み薬でお願いします('A`)」
即答でした。
とはいえ、どんなタイプでもそいつは「下剤」。お通じを激しく容赦なく誘発する悪魔の薬です。
尿の時に既に学習しました。自己制御する筋肉は、まるで役に立たなくなっているということを。
そう、そいつは、既に迫り来てました。
ナ、、、ナースコール。。。
看護師は、その5分後やってきました。
今度こそ私は、あらゆるチューブを引きちぎってやるつもりでした。血まみれになって死んでも、「美のプロデューサー」としての誇りは捨てるまい。人としての尊厳は守って死にたい。
そんな思いも虚しく、看護師が来る前に、私の顔は屈辱の涙に濡れそぼちていました。
皆様、理解できますか?腹筋や肛門括約筋がすべて衰え、フリーパスとなり果てた時の無力さを。
不健康な時の「大」は、今だかつて誰も嗅いだことのない、沈泥のような異臭がするということを。
そいつに、あろうことか「オムツパッド」の中身を完全凌駕されているという、不潔極まりない不快さを。
すべてを諦め、私は命と引き換えに、「患者」という「人格も尊厳もすべて奪われたただのヌケガラ」になった。
舟を~出すのなら九月~~♫
(汚い話は一旦ここで終わりとします)
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