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誰でもプロの作詞家・作曲家になれる本【4】

第4章 【作曲家 基礎編】作曲は誰にでも出来る
 
・子どもが紙にラクガキするように、歌をつくろう
 
 ここからの作曲のお話は、詞がついた「歌」を作ることに限定して進めていきます。歌詞のないインストゥルメンタルの話はしません。あくまで「歌のメロディーの作曲」についてです。
 
 第1章の自己紹介では省略したのですが、私は子どものミュージカルスクールを立ち上げる前に、音楽教室を経営していたことがあります。私は音大を出ていませんので、ピアノやリトミックの先生を雇い、およそ30名の生徒さんが通ってきてくれていました。
 
 その生徒さん全員に、月に一度だけ、私が「作曲」のグループレッスンを行なっていました。理論は一切教えません。0歳グループからありました。
 
 半年後、5歳以上の生徒さんは、全員、作曲ができるようになりました。
 
 どんなレッスンをしていたかは、また別の機会にお話できればと思います。簡単にいうと、「作曲する」ことを特別だと思っているのは、大人だけなのです。子どもはよく、自由帳にラクガキをしますよね。その時「うまく書こう」とか「私はプロの画家じゃないから・・・」なんて遠慮したりしません。
 それと同じなのです。
 
 好きなように歌えばいいのです。大人になっていつの間にか植えつけてしまった『難しい』という脳の前提を、取り払えばいいだけです。子どもがラクガキするように。
 うまくやろうとする前に、まずは自由になることです。
 
 

 
 
・曲は「記録者」がいれば作れる
 
 
 もうひとつ、大事な要素があります。
 それは、浮かんできたメロディーを「記録する」ことです。
 
 具体的にいうと、楽譜に書くことになります。
 
 自分で自分の記録者になれれば申し分ないですが、楽譜を書けない方も多いと思います。でしたら、誰か記録できる人に手伝ってもらえば良いのです。歌ってみたそばから記録してもらいさえすれば、曲は作れます。
 当たり前すぎて誰も言わなかったことかもしれません。
 
 私は、子ども向けの作曲教室をやっていた頃も、今のプロ作曲家要請講座の時も、私自身が生徒さんの記録者となっています。
 会話によって、その人の中にあるメロディをどんどん引き出し、ひたすら記録していくのです。気がつけば1曲できあがっています。ですから、私の講座では、自分で楽器が弾けなくても、楽譜が読めなくても、鼻歌さえ歌えれば、誰でも曲を作ることができます。
 
 こうして考えると、楽譜とはステキなツールです。よく
「楽譜を読むのは苦手だった」
と子ども時代を振り返って言う方がいますが、それは「読む」ことしか知らなかったからだと思います。
 
 楽譜は本来、自分で作った曲を、他の多くの人に「伝える」ために、作曲家が『書く』ものなのです。そして、それを演奏することによって、たとえ何世紀も前の作曲家の作品であっても、ちゃんと「再現」することができます。
 
 つまり、楽譜は本来、受動的に読むものではなく、自分の思いを伝えるものなのです。
 それがわかると、楽譜に対する概念が変わります。そして、自分で作った曲を楽譜にすることを経験すると、あとから多くの人にそれを再現してもらえる喜びがわいてきます。
 
 私の音楽教室の小さな生徒さんたちは、自作のメロディーを私が楽譜に書いてあげたら、それを喜んで、楽譜が大好きになりました。幼児用の大きな五線譜に、まだ直径1センチぐらいの黒丸しか描けないのですが、音符をぐるぐると書きたくてたまらないのです。
 大事なのは、その気持ち。やがて子どもたちは、楽譜を読むことも楽しくなり、ピアノもどんどん上達していきました。
 
 大人になってから楽譜を書けるようになるのは大変なことかもしれませんが、今は楽譜作成ソフトや、DTMの機能で簡単に作れるようになっています。
 鼻歌をスマホのボイスメモで記録して、あとからパソコンの無料楽譜作成ソフトに書けば、今すぐにでも曲が作れるというわけです。
 
 楽譜は自分の思いを届けるためのツール、と捉えれば、苦手意識もなくなり、楽しくなるかもしれませんね。

 
 
・理論で必要なのはこれだけ!
 
 
 この本では作曲理論の話はしない、と冒頭に書きましたが、ひとつだけ、頭に入れておいていただきたいことがあります。
それは、音楽とは
・メロディー
・リズム
・ハーモニー
の3要素でできているということです。
 
 これらの無限の組み合わせによって、すべての歌はできています。これに、
・歌声
・楽器の音色
が加わり、あらゆる音楽表現が生まれます。
 
 これを覚えてくれというのではありません。ここで押さえておきたいポイントは、ずばり
『何かに似ている、と言われることを恐れなくていい』
ということです。
 
 作曲のレッスンをしていると、よく
「なんだか、自分が好きなアーティストの曲に似ちゃうんですよね」
という生徒さんがいます。「盗作疑惑」を心配される方もいますが、ほとんどの場合、いらない心配です。
 
 なぜなら、たとえメロディーが似ていたとしても、他の要素であるリズムやハーモニー、さらにはどんな楽器を使うかで、まったく別の曲になるからです。
 
 それに、「いい歌」のメロディというのは、けっこう「型」があるのです。名曲といわれる作品の中には多くの共通点があります。
 何かに似ている、と自分で思ってしまうのは、少なくとも型を外していないということです。
 
 それであっても、毎年多くの新たな曲が世に出ていきます。音楽の要素の組み合わせは、それだけ無限だということです。
 
 ですから「何かと似たものになってしまう」ことなど恐れずに、どんどん作れば良いと思います。また、作詞の章でも言いましたが、人は自分が好きな音楽に少なからず影響を受けています。それは悪いことではなく、自分の大事なバックボーンとなります。
 むしろ、好きな曲を「作曲家目線」で分析してみることで、あらためて良いヒントをもらえるかもしれません。

 
 
・既存の曲で完成イメージを膨らませる
 
 
 既存の曲は、ヒントになります。
 どんなに「今までにない」「新しい」「斬新な」曲を作ろうとしても、音楽には理論がありますし、人間が聴いて心地よいパターンというのが存在します。今まで誰もやったことがない前人未到の曲を作ろうとしても、それが多くの支持を受けるかは、疑問です。
 
 また、よく「音楽に正解はない」といいますが、私はこれも間違っていると思っています。
 
 音楽に正解はやはりあるのです。それは多くの人が心地良いと感じるかどうか。そして、プロの作曲家にとっては、クライアントが満足するかどうかという、この一点においてです。
 
 以前、とあるアレンジャーに私の曲の編曲をお願いしたのですが、どうにも奇妙なコード進行や音色を使うので、修正をお願いしたところ
「まあ、音楽に正解はないですけどね」
と言われて驚きました。結局、何度か修正をお願いしてもまったく曲が良くならなかったので、最終的には引き取って別のアレンジャーにお願いすることとなりました。
 
 上達しない人ほど「音楽に正解はない」という言葉を使いたがります。
 理論をちゃんと学ぶかどうかというよりは、理論を
「使いこなせているか」
が大切です。
 
 もし、「作曲の上達を目指すには、理論をちゃんと学ばなければならないのではないか」と考えるのでしたら、理論書を一からを読むよりも、既存の「いい曲」だと感じるものをよく分析するのが早道だと思います。
 
 自分の好きなアーティストには、どんなメロディーの特徴があるのか。リズムはどんなものを使っているか。美しいハーモニーはどんな構成になっているのか。楽器は? テンポは? そう考えながら聴くことで、膨大な情報があります。
 
 また、これから1曲作る、という時に
「どんな世界観のものを作りたいか」
を考え、ぜひ、既存曲の中からイメージに近いものを3〜5曲ピックアップしてみてください。
 そうすると、その曲がどんなテンポか、リズムか、使っている楽器が何か、共通項があるはずです。
 それを踏まえながら、新たなメロディーを紡いでいきます。また、完成した曲をアレンジ(編曲)する時の、アレンジャーとのイメージ共有にも役立ちます。
 
 私たちプロも、ミュージシャンやクリエイター同士のイメージの共有には、既存曲のYouTubeを見てもらうというのは、よくやります。
「こんな感じの曲が作りたい!」
と思うものを、ぜひピックアップしてみてください。
 ここまで準備ができたら、いよいよ、名曲誕生を目指して、作曲を始めていきます!

 
 第5章 【作曲家 実践編】「名曲」と言われたい!作曲の極意
 へ続く。
 

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2024年は6月15日開講です。
月1回、全5回、10月5日までに自分だけの「歌」を作って修了します。

2024年は、すべての塾生さんの詞に、まきりかが曲を書きます。
プロを目指すまでではなくても、世界にひとつの自分の歌を作ってみたい。
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『おとだま塾』のページ
https://j2p23.hp.peraichi.com/
 

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