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蕎麦屋の青年

人の振る舞いを
たった1分見ただけで
見た人のその後の人生を
豊かなモノにしてくれるかもしれない

大げさに聞こえるかも知れないが
私は今日、そんな青年の振る舞いを、蕎麦屋で見た。

窓際に、スーツを着た青年が座っていた。
決して目立つ格好をしていたわけではないが、彼の所作に、一瞬にして心を奪われた。

お茶を飲む彼の背筋はピンとのび、湯飲みにはやさしく手が添えられていて、こんなにも美しいお茶の飲み方があるだろうかと思うほどだった。


その瞬間、私は姿勢を正し、丁寧にお茶を飲んでいた。


人を動かすのは、心が動いたときだとハッとさせられた。
そして私は今後の人生で、彼のことをことあるごとに思い出し、姿勢を正すことがあるだろうと確信した。


彼はただ、お蕎麦屋さんでお茶を飲んでいただけだ。
誰かの行動に影響を与えようと思ってやっているわけではない。


自分の行動は誰かの気づきになるのだ。
良い行いも、悪い行いも。

何も特別なイベントの時だけではない。

通りすがりに交わした、あいさつであったり
手渡しするときに添える手の優しさであったり、
何気ない笑顔であったり。

その日誰かの一日が、ちょっとだけ豊になれる。
そんな経験を重ねていきたい。

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