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クリプト運用~基礎編~

2023年秋くらいから「結局クリプトでどうやって儲けるのか?」という相談が増えてきたので、まずは基礎編として比較的難易度の低い手法について具体的に解説していきたい。既にDeFiでゴリゴリ運用している読者にとっては簡単過ぎる内容のはずなので、そのような方は次回の記事から読んでいただくことをオススメする。一応ヘッジ文言として記載しておくが、本記事は運用アドバイスではないのであくまで情報収集の参考まで。

運用手法をざっくり挙げるとこのような形になる。

  • 難易度低

    • ガチホ

    • ステーキング

    • RWAトークンのイールド(債券、株式、不動産)

    • デルタニュートラル戦略

    • レンディング

    • 流動性提供

  • 難易度高

    • Liquidator

    • Validator

    • 現物裁定取引

    • 金利裁定取引

    • MLモデル開発運用

    • マーケットメイキングbot開発運用

    • ジャッジメンタル裁量

本日は難易度低のケースについて1つずつコメントしていきたい。

ガチホ


自身が絶大な信頼を寄せるトークンを買ってひたすら値上がりを待ち続けるという手法。BTCとETHだけでクリプトの時価総額の70%前後を占めているため、これらに加えSOLなどのチェーンネイティブトークンやオラクルのLINKなどをガチホしている人が多い印象。

Coinmarketcap


世界各国が財政的に厳しく法定通貨の供給を増やしている環境下で、ブロックチェーン領域が伸びるという相場観の人は、基本的にそのシナリオが崩れなければドルや円建てで利益が出やすい戦略である。
ただ、クリプトは時価総額が大きいものであっても未だにボラが高いので、自身の投資仮説を明確に持っていないとガチホし続けるのは難しい。少なくともビッドコインスタンダードやBitcoinとEthereumのホワイトペーパーを読んで、自分の頭で投資ストーリーを作らなくてはいけない。そうしないと取引所破綻やハッキング、SECの規制など様々な要因で相場が暴落するタイミングでガチホするはずだった投資対象を損切りしてしまうことになる。
一方、自身の投資仮説が強固であれば、その仮説の前提が崩れない限り何もしなくていい楽な手法であるとも言える。どんなに知人に怪しいと言われても、「その知人が10年後に参入してきた時に出口流動性になってくれる」というマインドを持てるはずである。
そして、ガチホは余計な取引手数料がかからない点も良い。
しかし、ガチホするクリプトをどこで保管するかで足元を救われる場合があるので注意。日本の暗号資産交換業者は厳しい顧客資産の管理要件をお上から課されているため海外CEXに比べると安全度は高いが、やはり自身のハードウェアウォレットで管理して金庫に保管するような体制が望ましい。

ステーキング

LidoやRocketpoolなど、ETHをステーキングするとstETHやrETHといったLiquid Staking Tokenを受け取り利回りを受け取れるDappsがある。2024年4月1日現在、LidoでETHをステーキングして得られるAPRは3.2%となっている。

Lido


EthereumなどのPoSで動いているブロックチェーンは、そのネイティブトークンをステーキングすることがバリデーターの要件となっているが、Ethereumの場合はそれが32ETHと高額であったことが障壁になっていた。LidoやRocketpoolなどを使うと少額でETHをステーキングして利回りを受け取れる。さらに、自身でバリデーターとして活動するためのセットアップも不要。この利回りの源泉はEthereumブロックチェーンを運営するためにユーザーが払うガス代からきており、Ethereumのガス代に対してステーキングされている量が増え過ぎると利回りは減ることになる。
リスクとしてはプロトコルのハッキングが挙げられる。LidoやRocketpoolから資金が流出してしまった場合はユーザーのETHを引き出せなくなってしまう可能性がある。また、バリデーターが適切に運用されていない場合はステーキングしたETHが没収されてしまうリスクもあるため、どのようにバリデーターが選ばれているのかはdepositする前に調べてみるのがベターである。それに加え、ステーキングするトークン自体の価格変動リスクもあるので、ガチホの解説で述べたような投資仮説の構築はマストである(デルタヘッジするなら話は別)。
その他の注意点として、rewardがLST保有アドレスに降ってくる形式と、LSTの価格上昇として反映される形式があるのでそこは触る前に確認すべきである。

RWAトークン

トークン化された債券、株式、不動産などから利回りを得ることができる。代表的なものにはstUSDT、Ondo Finance、RealT、MatrixDock、BackedFinance、Aktionariat、OpenEden、MapleFinance、GoldFinch、TrueFi、Clearpoolなどがある。
期待リターンとしては伝統的金融と基本的には変わらない。2022年はクリプトの運用利回りが低下していた中で米国債で5%以上の利回りを出せていたことから米国債トークンの需要が高まっていた。クリプトのブル相場では後述するレンディング、デルタニュートラル、流動性提供の方が利回りが高くなる傾向がある(当然DeFi特有のリスクが含まれている)。

Ondo Finance


RWAトークンといっても商品ごと、プロジェクトごとにストラクチャーが異なるので一概に言えないのだが、基本的には各国のライセンスを取得した業者が金融商品を保管し、それと同量のRWAトークンを発行してオンチェーンに流すスタイルが多い。そのため、当該カストディアンが適切に資産を保管してくれるのかといったリスクがある。また、検閲耐性は基本的になく、マネロン等の理由をつけて政府当局からRWAトークンの流通を停止する命令をされたケースなどでは、強制的にトークンを没収されてしまう可能性もある。その他には、その投資対象のデフォルトリスクや価格変動リスクももちろんある。米国債で年利5%だったところを、新興国社債にして年利20%にするといったイメージだ。デフォルトリスクが高くなれば利回りも基本的には高くなる。なお、日本国債については特殊で、債務残高が非常に高いにも関わらず中央銀行が国債を買い続けているため国債利回りが強制的に低く抑えつけられている。そのため、日本は資金調達の場としては低金利で最適だが、国債の金融商品としての魅力は低くなり、グローバル市場であるパブリックブロックチェーンの上には日本国債トークンはほとんど流通していない。

レンディング

Aave、Compoundなど、スマートコントラクト上に構築されたpoolにトークンを貸し出して利回りを得る手法。金利は基本的にpoolにあるトークンの利用率の関数になっており、poolにあるトークンがたくさん借りられていれば貸出金利も高くなる。つまり、ブル相場で「トークンを借りてでも運用してお金を増やしたい」というユーザーが増えれば貸出金利が美味しくなり、逆にベア相場では借り手が少なくなるので貸出金利も低下する。

Aave


レンディングプロトコルの便利なところは、ETHのような比較的長期で保有したいアセットを売却せずに貸し出し、それを担保にステーブルコインを借りて他のDeFiプロトコルで運用することによって、ETHの貸し出し金利を得つつキャピタルゲインを狙い、かつ借り入れたステーブルコインでの運用益やエアドロップ等を獲得しにいけることである。フラッシュローンを活用して限界までレバレッジをかけることも可能であり、レンディングの存在によって資本効率を極めて高くできる。
貸し手としてのリスクはprotocolの資金が抜かれてしまうリスクがある。基本的にレンディングプロトコルはover-collateralizedであり借り手は担保率が閾値に達した段階でLiquidationされてプロトコルが債務超過にならないような設計になっている。この判定にオラクルを利用している場合が多いのだが、この仕組みの欠陥を狙ったexploitの事例は少なくない。
また、当然ではあるが貸し出ししているトークンの価値が下がれば損失が出る。ETHでもそうだし、ドルに何かあればドル建てのステーブルコインの価値は減少する。

デルタニュートラル

デルタニュートラル戦略は、資産の価格変動リスクを抑えつつ、安定したリターンを得ることを目的とした運用手法である。例えばETHを担保にAaveでUSDCを借り、USDCをdYdXの証拠金としてdepositしてAaveの担保のETHと同量のETH-PERPをショートすると、ETHの価格変動リスクは抑えた上でFunding RateをdYdXからもらいつつ、AaveでETHの貸出金利を受け取ることができる。

Aevo


この戦略の注意点としては、必ずしもファンディングレートがプラスになるとは限らないことが挙げられる。2024年までの傾向としては、ブル相場ではFRが高くなりやすく、銘柄と状況によっては100%を遥かに上回るFRが出ることも少なくない。一方で2022年のようなベア相場ではFRがマイナスになることも多い。FRの算出式は取引所ごとに異なるので、入金する取引所のDocsのFR解説ページには必ず目を通すべきである。
また、デルタヘッジをしたいトークンを証拠金として利用できない取引所も多く、その場合は取引所でポジションが清算されないように管理をする必要がある。多くの取引所では清算に罰則が適用されるので、基本的には損をする形になる。
また、取引所自体のリスクもあるため、価格変動リスクを負わないとはいえ依然として多様なリスクが残る戦略ではある。

流動性提供

Uniswap、Curve等のDEXで流動性を提供することで、Swap手数料の一部を受け取ることができる。期待利回りはプールによって大きく異なるが、ものによっては数百%になることもある。高い利回りが出る場合は基本的にswap feeが稼げるというよりかはrewardとして配られるガバナンストークンのAPYを高く見積もって表示されていることが多いので注意が必要である。
そして、インパーマネントロス(価格変動によって流動性提供者が被る損失)のリスクがある点には細心の注意が必要だ。

Curve

本記事では難易度が比較的低い運用手法について解説した。DeFiは数が多くキャッチアップが大変だが、組み合わせるとその手法は数えきれないほどあるので、利用経験のあるものが増えれば増えるほど収益の期待値を高められる領域である。とはいえexpolitは頻繁に起こり、全損リスクを常に抱えているは常に頭に入れておきたい。難易度高の運用については気が向いたら後日解説する。

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