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【セルフライナーノーツ】#20. NO WORDS S(W+ING)【Ancient Collections】

とうとうたどり着いた、ラス1!長かったような、短かったような…いややっぱ長かったわ。配信リリースが1/30、ライナーノーツを書き始めたのが2/3、そして現在4/29。早く書かなきゃせっかく持ってもらった興味が薄れてしまう、と思いながらの連載開始でしたが、結局2ヶ月以上かかっちゃいました。

今やサブスク音楽サービスもしっかり浸透して、万貴音だけでなく広島のアーティストもたくさんサブスクで聴けます。月額課金で聴き放題、いい時代になったもんだ。ぜひご活用くださいねー。


・楽曲概要。

・2nd Single「モーニングサービス」(2007.8)より
・作曲:小田貴音

歌詞、ありません。


・楽曲解説。

テレフォンショッキングのゲスト登場曲のような雰囲気の(調べたらあの曲、編曲が鷺巣詩郎さんらしいですよ!)ハッピースウィング曲。ライブの登場SEとして使うことも多かったこの曲、当時はその目的で作ったわけではなくて、本当にライブでやれる曲として書きました。結果、やったことはないんだけどね…。

「ラララ」「シャバダバ」のように、歌詞ではない発音で歌うことを「スキャット」と言います。クラシックでは似たものとして「ヴォカリーズ」というものがあるけど、あれは「アー」とか、母音のみで歌うのが特徴だそうで。ポップスジャンルでヴォカリーズやると歌でリズムが出せなくて大苦戦しそうですね。笑

この曲でやりたかったことはタイトルそのまんま、です。たまに出てくる算数タイトルで格好付けてますが、「S(W+ING)」は「SING + SWING」。おまけの印象づけとして自由のイメージ「WING」。歌を歌うって、意味のある言葉を紡いで具体的にストーリーを作るものがほとんどなんだけど、声自体がとっても素敵で優秀な楽器でもあるわけで。さらに、全く同じ声の人はいない。言葉がなくても音楽できるし、聴く人の心をスウィングさせることが出来るんじゃないか、という万貴音の挑戦でした。

クラシック上がりでジャズ好き(やったことはない)の小田と、こっち系ジャンルは全く未経験の中原。「どういう感情で歌えばいいんでしょう?」と、まーー相方大変だったと思います。笑 今まで「嬉しい、切ない、好き」のような感情、「夕暮れ時の帰り道」みたいな情景、そこに自分の声を乗せていたわけなので、歌詞なしでどうしろと?って思うのは必然。

大事なのは、楽曲の雰囲気やメロディをそのまま感じること。楽しい曲なのか、切ない曲なのか。メロディは力強い?ちょっと影がある?滑らか?トリッキー?これ、メロディ先行で後から歌詞が付く楽曲制作でのボーカルの準備でも非常に役に立つと思います。鼻歌みたいに自然に自分の体に入れていく、というか。

そんなアドバイスも当時したのかな。お互い経験値不足は否めなかったので、先に作ったメロディをしっかり確認しながら歌っていきました。アドリブでシャバダバできれば格好いいけど、万貴さんは間違えないように無理やりでも言葉を書いてましたねー、「ぱっぱー、でぃびでぃらすぱっぱー」って。笑 それでいいんだ。

歌詞がないので好きに発音を当てていいんだけど、何度か歌っていると自然に口の運びは明確に方向が決まってきます。メロディとリズムに適した発音ってのはあると思う。タメとか伸ばしとかに従って、一番口が気持ちいい方に進むもんです。面白いね。


・楽曲の特徴。

明るく元気なハッピースウィング。ちょっとジャズ寄せの曲はいくつか作ってきましたが、なんだかんだ好みなのは、こういった明るいやつなんだろうなーと思います。ドラム、ベース、ピアノ、フルアコ(エレキ)ギター、そしてスキャットボーカル2つ。

解説ではボーカルに焦点をがっつり当てましたが、この曲にはもう一つ特徴がありまして、それが3人目の主役である「ギター」です。改めて聴いてもらえると分かると思うんですが、スキャットボーカルにはずっとギターがユニゾンで絡み付いています。言葉はなくとも歌は歌える、を目指したボーカル同様、「楽器も歌う」を目指したのがこの曲。ライブでやるとしたら俺、ギターボーカルでは無理かもしれぬ。笑

当時大好きだったOrange Pekoeの影響もモロに受けてると思います。ボーカルのナガシマさんの素晴らしさは言わずもがななんだけど、ギターの藤本さんの歌うようなプレイが凄く好きで、自分もやってみたくなった。当時フラットラウンド弦を張ったフルアコギターがあったから、というのも挑戦できた理由かな。

ギターソロも頑張って弾いたけど、注目はその後の中原ソロパート(アドリブメロディ)に「ハモる」ギター。小田の声でハモる選択肢はもちろんあるわけだけど、楽器でハモりを入れることで、より歌と音が溶け合って一体感をもたらせた気がしています。

ディープなジャズファンからすると「これがジャズ?」って鼻で笑われるかもしれんけど、それでもいいんです。この曲は作りたかったものがしっかり表現できたと今でも思うし、今でもすごく好き。聴いてくれた人がハッピーになれますように。


ということで、リバイバルアルバム「Ancient Collections」全20曲の解説を書き終えました。随分長くかかってしまったけど、辛抱強く待って読み続けて下さった方、偶然覗いて読んで下さった方、一部のマニアックすぎる解説も我慢して(あるいは自分で調べて)読んで下さった方、感謝いたします。

改めて、このアルバムは万貴音が結成初期の2006〜2007年にリリースしたCD作品4枚をまとめたものです。音質的なものを始め、荒削りで未熟な面もたくさんあるかと思いますが、それも含めて自分たちの軌跡。自分で聴き返してみて、今では当時と同じことが出来るか分からないな、というぐらいの情熱とこだわりを感じる瞬間もたくさんあります。

セルフライナーノーツなので、どうしてもがっつりと個人の主観や補正もかかってしまうものだけど(あと自分の文章のクセもすごい)、それでも「ほう、当時そんな感じだったのね」と共感して、楽しんでくださる方がいれば、作者として、歌い手として、この上ない幸せです。

しっかり過去を振り返った分、これからまた今と未来を音にしていきます。誰かさんの言葉を借りるなら、「ぼくたちは今日も、明日の音楽を歌う」です。例え自分が死んでしまったとしても、その後もあなたの心に音楽が残っているかもしれない。音楽って本当に素敵な財産だ。

これからも万貴音をどうぞよろしくお願いいたします。

2021年4月29日午前 小田貴音 著


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・アルバム「Smile Co.」
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・シングル「クローバー」
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・シングル「優しい言葉」
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・アルバム「ノーマライズ」
https://linkco.re/350NZmQx
・アルバム「Ancient Collections」
https://linkco.re/SBDumrht


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