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【セルフライナーノーツ】#01. Re:Structure【Re:Lease】

[前記事]
#00.はじめに



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【クレジット&歌詞】

作詞:小田貴音 作曲:小田貴音 編曲:万貴音


【楽曲解説】

ハンドメイドCD「Prototype」シリーズ、そしてアルバム「Re:Lease」が生まれるきっかけになった、全ての始まりとも言える短い歌。

2022年の年明け早々にこの楽曲名を冠した主催ライブを告知したものの、「まん延防止等重点措置」適用を受けてイベントは延期。歯痒い思いをしながらライブは2/5→3/27に延期されました。

ただしこの延期期間がなければ、楽曲は今と違う形になっていたのかもしれません。というのも、ライブ告知当時はまだ楽曲タイトルしか決まっていなかったからです。制作期間が1ヶ月半ほど伸びた結果、「Re:Structure(再構築)」という楽曲は皮肉なことにタイトルに+1の「再構築」をされて完成した、という経緯があります。

コロナ禍により、ミュージシャンとしてファン・イベンター等との関係性は物理的に強く分断されました(「消滅」ではありません)。か細くなってしまった糸をもう一度繋げたい、という思いでタイトルに「Re:」を冠した楽曲を作ろうとコンセプトを決めたのに、イベント延期。また性懲りも無く邪魔をしてくるのか、と本当に哀しくなったのを今でも覚えています。

当時はどんなタッチで曲を書けばいいか随分悩みつつ、「もうくよくよ悩むなよ、また頑張っていこうぜ!」みたいなカラッとしたポップな歌詞を最初は書こうとしてました。今でこそ色んな楽曲を作ってますが、自分の作風は「ハローハロー」「スマイルカンパニー」のようなポップな文体が本質だと思っているんですが、どうでしょうね?

実は最初に書いた歌詞のタイトルは「リライヴ(Re:Live)」でした。闘いの記録が残ってたので晒してみる。

クリエイターの深淵を晒す

歌になっていない言葉ってまだ結構あるんです。

文調はやや硬いけど、「Re:Structure」よりもダイレクトに前向きですね。ここからどう広げていくかっていう段階なんですけども、この方向も別に悪くはない。実際に仮オケを組んでメロディも作っていってました(どうやら「Re:Structure」制作時に未練を断ち切るべくプロジェクトデータ削除した模様)。

が、何だか空元気な気がしてしっくりこない。みんなに「どうあれ今生きてんだ、元気出していこうぜ!」って背中を押したかったのに。

やっぱりあの時間は真っ向からしんどくて、真っ当に寂しかったんだと思います。空元気に救われることは多々あれど、それまでの自分にマスクをして進むのはなんだか違う気がして。

結果、前述した通り前向きポップ方面を「リストラ」して1から作り直しました。テンポの良い旧バージョンのオケを破棄して、まだ言葉にならない感情を表す音から探して、手繰り寄せていく。

最初に出てきたのが、あのメジャーなのかマイナーなのか分からないピアノの重たいリフ。 どう頑張ってもその部分しか出てこなかったけど、相方に共有したら程なくしてボイスメモでメロディの欠片のようなものを送ってきてくれました。楽曲の1%にも満たないようなものに対して何か強いものを感じてくれたようで、今までほとんどなかった反応だったのを今でも覚えています。

「あ、この反応は間違いないわ」と思い、ピアノリフを展開し、歌詞を書き、メロディをつけていきました。六畳の狭い部屋で一人、書いては消して、を繰り返しながら。


【作詞振り返りメモ】

・「うたかた」
今の自分なら素直に「泡沫」と漢字表記にしたかも。水面に浮かんでもすぐに消えていく日常と希望。

・「いき苦しさ」
先行シングル「優しい言葉」にも出てくる表現。当時の解説に書いてなかったんだけど「息苦しさ/生き苦しさ」の意味です。

・繰り返される「行かなくちゃ」
明確な決意ではなく、焦りを含んだ覚悟が出てきてる感じ。「行くぞ…せーので行くぞ!」と自らを駆り立てないと進めなかったんだと思います。


【作編曲振り返りメモ】

・調性感、コード感
イントロのピアノリフ、コードはCadd9から始まるんだけど三和音の真ん中(三音)を省いてます。「ドミソ」を代表する三和音の三音は「明るい/暗い」など響きの方向を明確にする意味を強く持つ機能があるんですが、それを抜くことで響きをニュートラルに、あるいは無機質に。後に入ってくるメロディが抜けたその部分を補完する形、というデザイン。

・ずれた手拍子
Aメロ後半から入ってくる手拍子、今までの楽曲よりも明確にずらして鳴らしてます。例えばオーケストラの弦楽器陣(ストリングス)は大人数が演奏する上で微妙にピッチやリズムがずれることで広がりを表現することができるんですが、今回の狙いはそうではなくシンプルに「定まらなさ」を表現するための処理でした。発想の元になったのは浪人時代に聴いていたブライアンイーノ&ピーターシュワルム「Drawn from Life」の「Like Pictures Part#2」という楽曲。

・時計の針の音
確かに、同時に無慈悲に進んでいく時間。この時点でアルバム全体を通して核となるアイコンにしようと考えてました。全ての生物に平等に与えられているのが「時の流れ」です。

・EP盤との違い
EP盤では時計の針の音で終わるのに対し、アルバム盤ではコーラスのリフレインがリバーブ(残響)なしで追加され、夢から現に切り替わる様を表現してみました。


今回のシリーズでは作詞・作編曲について細かな解説をやめて、やや濃いめのメモ書きという形で書き記しておこうかなと思います(ただしマニアックな内容は遠慮なく書きます)。かわりに楽曲解説で濃いめに書いていこうかなと思いますので、今シリーズも楽しんでいただけたら幸いです。

ではまた。

万貴音 小田貴音


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・シングル「にらめっこ」
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