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クレーマーとは

とあるコンビニでレジ打ちをしていたバイト時代の話である。そのコンビニは何故かコンビニ敬語とやらがあると盲信しているところで、敬語を使おうとすれば怒られる店だった。

ある時何故か立ち振る舞いからすでに只者ではない上品なご夫婦が印刷機のトラブルに見舞われ、どうすれば解消できるかを尋ねてきた。どうやらその印刷が失敗してしまい、大切なチケットが発券されていないのにアプリ内では発券済みになってしまったようだ。

彼らは最初は低姿勢だった。

私は紙を見て、確かに発券ができていないこと、印刷機の紙が切れたことでエラーを起こしたことは確認できた。大切なチケットがエラーになってご夫婦が不安そうにしている。私は解決すべく先輩のバイトの人に声をかけた。

そうしたら何故か彼はいきなりご夫婦に暴言を吐いた。

「クレーマーだ」

客観的に見てクレームではなくて印刷機の事故であるのに、それに困っている客相手にクレーマーと初手で発言するのはおかしい。その店員に対して「その言い方はおかしいですよ」と返した。

男性「そこの君、何故僕をクレーマーだと言ったんだい?」
店員「印刷機不良などと文句を言ってきたからだ。印刷機は悪くない」
男性「このエラーを起こしたチケットを見てごらんさない。このエラーを起こしたチケットは端が赤くなっているでしょう。これは紙が足りないと伺っている。だから我々がどうしようもないと思うんだが違うかね?」
店員「紙が足りないっていうんですか?あー、はいはい。今から足しますよ。」

言葉を失うご夫婦と私。とりあえず紙は切れていたことはその店員のメンテナンスで分かったが、謝罪をせずに「もう一度やってください、はーーー」と言い始める。

おじさんの方が少し怒りを隠すことができなくなりつつあり、対応をしながらもイライラしているのが見えた。

男性「君、結局発券できていないのに発券済みになっていて困っているんだ。多分そもそも印刷機に紙が足りていればこういうことにはならなかったと思うので、チケットを再発行できるように問い合わせてくれないか」
店員「できなかったものはできないでしょう。そうやって対応させるのって乞食ですよね。諦めてくれません?それ管轄外なんで。」
私「ちょっ、ちょっとその言い分すごくおかしくないですか?」
店員「は?????こういう非常識な客に対して敬意なんて持つ?????」
私「???????」

男性が流石に怒った。今もいやそれは流石に怒るよと私は思っている。

店員「そんなに発券しないといけないんですか?また買えばいいじゃないですか」
男性「そのチケットが私たちにとってどれだけ大切なものか想像できないかな。」
店員「はーーー、本当にしつこいですよ。お客さん。」
男性「そんなに理不尽なことを僕は言ったかね?」

奥さんが「無理でしょう。大声でクレーマーと言われるのは苦しいわ。もう諦めましょう…」と言ってから、男性が「いや、ここで折れると他の人も同じことを経験することになってしまう。反省するきっかけをこのコンビニには与えた方がいい。だから発券できるまでは待とう」と声をかけていた。

男性「先ほどから乞食やなんだと言ってくるだけで対応してくれないことに対して非常に困っているんだよ。こう言った場合に、電話して確認できるマニュアルとかは存在してないのかい?」
店員「あー、こういう乞食する人って低学歴で頭が悪くて職が悪いっていいますもんね。はーあ。」
男性「……君は学歴や職種で人を馬鹿にしたり、接客をしたりするのかい?流石にその発言はひどすぎるから本件は本部に連絡させていただくよ。」
店員「クレーマー!!!」
私「(いや、お客さんの話は残当やろ、それは…)確認しますね…!」
店員「勝手なことをするな!!!!」
私「?????」
男性「…お嬢さん、ごめんね、、よろしく頼むよ。」

返す言葉がなくなるとクレーマーをつければ住むと思っている人を見たことがあるだろうか。このコンビニで、丁寧な敬語を使うと非常に怒られ、入って1ヶ月であわあわしてると「障害者!」と罵られてきたので、おじさんがこう言われるのも「あーー(察し)」であった。ちなみにこの話に直接関係ないがGoogleでこのコンビニを検索すると平均⭐︎1.5で、どれもこれも「店員や店長に馬鹿にされるので二度と利用したくありません」「店長は敬語ができず、舌打ちしてきます」「何故かお釣りをバンと乱暴に置かれたのちに悪口を言われるので2度と使いません」というレビューがメインである。私も2度と使いたくない。

私「解決方法見つけました!本部がその数字を教えてさえくれれば再発行可能ですと!」
(作業をする。そして発券完了になる)
男性「あー、お嬢さん。ありがとう!」
私「当然のことをしたまでですよ」
店員「勝手なことを云々!!!!!」
私「後で聞きます……」

店員は滅茶苦茶怒気を放っていた。こんなクレーマー対応をする暇があるのかと。ただ、クレームには自分は感じられなかったので対応しただけなのだ。

男性「…お嬢さん、実は僕はね……」

そう小声で私を呼んだ男性は「僕は(TOPIX百銘柄企業)で20年働いている元技術者で、最近役員になったばかり。大学の同級生ではあるが某コンビニの本部の役員たちと繋がっている。どこでどう話が広がるかを想像できないのは恐ろしいことだよ。この件をその人に伝えるつもりはないけれど、学歴や経歴で差別をしようとする人と一緒に働くことは避けた方がいい。考えが彼から毒されたら醜くなってしまう。こんなコンビニにいる君が気がかりだ。」と言ってきた。身なりが上品だったし何か只者ではないと思っていたが、凄い人だったらしい。

そうして2人はチケットを発券できてミッションコンプリートなので去っていく。その後に「なんだったんだあのクレーマー。○○さん、もう二度とああいうクレーマーに対して対処しようとしないでくれよな」と言われ、店長からはきつい説教をされたのであった。

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