〝物価高〟なのに「割高商品」なぜ売れる? 食品スーパーで今、何が起きているのか(2023/10/25)
原材料価格や物流費の高騰を受け、食品や日用品の値上げをネタにしたステレオタイプの報道にうんざりする今日この頃。しかし、実際にスーパーに足を運んでみると、消費者は報道からイメージするような買い物の仕方はしていないようだ。読者に身近な食品スーパー「ライフ」を取材した。
4つのPBで消費者に選択肢
「安売り競争ではなく、当社オリジナルのブランドで勝負しています」
こう話すのは、近畿圏に167店を展開する大手スーパー「ライフコーポレーション」広報部の中田靖子さん。
同社は早くから〝同質化競争からの脱却〟を揚げ、価格だけで競うのをやめて付加価値を追求した経営を行っている。
なかでも象徴的なのがプライベートブランド(PB)だ。PBと言えば一般に各社1ブランドで展開する印象だが、同社には「スマイルライフ」「LIFE PREMIUM(ライフプレミアム)」「BIO-RAL(ビオラル)」「star select(スターセレクト)」の4つがある。
なかでも特徴的なのは「オーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナビリティー」をコンセプトに、健康や自然志向商品を展開するビオラルだ。
同ブランドの誕生の経緯は、社内公募で従業員から提案されたものだった。最初は「(従来品と)仕入れルートが違い、専門知識も必要なので難しいのでは」などと社内で反対も多かったが、健康志向の追い風もあり、現在は167店舗中、163店にコーナーを展開するほど事業拡大した。
売れ筋は「こめ油」だ。買い物客の40代主婦に話を聞くと「サラダ油の値段が上がった時に、こめ油も同じような価格だったので思い切って購入した。使ってみると揚げ物がカラッと揚がり、とてもヘルシー。それからずっと使い続けている」という。サラダ油の値段が落ち着いた後も売れ行きは好調という。
中田さんは「自分のお気に入りを探して見つけ、調理油はビオラル、ヨーグルトはライフプレミアムなどと、ライフのPBにはガッチリとファンがついており、集客の要になっている」と、低価格競争からの脱却を図るライフの独自路線について説明する。
強みのネットスーパー
PBに並び、ネットスーパーもライフの特徴だ。現在、自社版とアマゾン版の2つがある。自社版はアプリやシステム開発を行い、21年3月から「ライフネットスーパーアプリ」の提供を開始した。
ネットの強みは売り場に行かなくてもパソコンや携帯でいつでも注文可能なところだが、ライフは購入できる商品の価格を店舗と同じにしているのが特徴。
同店に買い物に来ていた会社員女性は「通勤時間や隙間時間に買い物ができ、忙しい現代人にとってはありがたい」と話す。
「小さな子どもを抱えるお母さんや買い物へ出かけるのが困難な高齢者にとって、かゆい所に手が届くサービスだと思う。自分の代わりに買い物をしてもらっているという感覚。ネットスーパーで儲けようとは思っておらず、ライフでの購入の選択肢を増やし、お客様の利便性を高めるのが第一の目的」と中田さんは話している。
価格は単なる選択肢の一つに過ぎない
報道を見ていると〝物価高だから安い物が売れている〟印象だが、実際にスーパーに足を運ぶと決してそうではない。
例えば、野菜コーナーでも割高なカット野菜が売れている。消費者によっては、安さよりも時短などの利便性を求めているためだ。冷凍食品の味も進化しているうえに、使う分だけ取り出して使えることで食品のムダも防げる。家庭ごとに重視するポイントは異なるので、選択肢の広がりは歓迎すべきことだ。
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