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建築事務所のいろいろ_給料の交渉


いきなりシビアなトピックですが。。。。

日本人は、というか私は、頼みごとをしたり交渉するのが大の苦手だ。。。何年アメリカに住んでも、いつまでたっても苦手は苦手。。。
それが給料の交渉ともなると、本当に嫌になってしまう。
アメリカでは仕事のオファーをもらう時、毎年の給料調整の時、不服ならカウンターオファーを出して交渉するのが当たり前なのだ。

黒川紀章事務所から初めて建築家としての内定を受けた時、自分の給料など注目さえしなかった。ましてや給料の不平を言うなど絶対に考えもしなかった。

アメリカでは内定のオファーに年間の給料が記載されて、それを受理する前に慎重に検討するのだ。その時のマーケットにおいて自分はいくらの価値があるのか、を検討する。今ではGlassdoor.comのようなサイトで出身大学や職歴、会社の人数などを入力すると自分の給料がいくらであるべきかを調べることができる。

検討すべき大切な項目の一つは健康保険だ。アメリカでは国民保険はないので、働く会社によって保険の内容や自己負担額が随分と違う。他にも福利厚生では、有給や産休などもチェックする必要がある。スティーブンホール事務所では産休はないに等しかったが、BIGでは4か月の産休がある。2か月の無給を足して、半年の産休を取る人もいる。

などなど、色々な項目を並べて、本当にその提示額はフェアなのか、ということを検討するのだ。

そしてこれは安すぎだろうと思えば、カウンターオファーをするのだ。この私でもBIGに入社した時はカウンターオファーを提示して、少しでもいい額からのスタートを切れるよう努力した。日本でも同じだと思うが、転職が給料をドンと上げる絶好の機会だからだ。

毎年の給料調整が厄介だ。言うまでもなく、毎年少しずつ物価があがるので、去年と給料が同じということは、給料が減っている、ということになる。だから毎年最低でも物価が上がった分だけは給料の調整がされなければならない。

大きな組織事務所ならこんなことはないだろうが、スティーブンホールのようなアトリエ系の事務所では、よほどのことが無い限り、基本自分から調整を頼まないと、給料は一生同じ額ということもありえた。

KPFという組織事務所を退社した後、あこがれのスティーブンホール事務所で働きだした。給料はKPFにいた時とそう変わりはしなかったが、年間の有給は10日から5日に減り、保険も随分とダウングレードになった。でもこれは自分への投資。やりたい建築ができるのであれば!と、あまりこの辺りのことは気にはしていなかった。

1年すぎ、2年すぎ、私の給料は変わらなかった。。。とうとうこの時が来たか、と思った。
何度も何度も書き直して、上司にメールを書いた。アメリカ人ならきっとメールのタイトルに、「給料あげろ」と書くのであろうが、そんな勇気は私にはない。「勤務評価のお願い」としてだした。そして、何度かお願いメールを出した後、やっと面談が行われた。私は一枚の紙にホール事務所で成し遂げた実績をリストアップして、打ち合わせに望んだのだ。数年で物価が上がったことも念のため述べた。そして最後に申し訳なさそうに、給料を上げてほしい、と申し出た。

リチャードマイヤー事務所で働いていた人の逸話だ。彼はその年昇給がなかったため、上司にこう切り出したそうだ。「給料が上がらないということは、使えない人ということですね。辞めた方がいいですか?」と。慌てて上司は給料調整をしたそうだ。

BIGでは初夏が毎年の給料調整の季節だ。先週、調整額が提示された。ありがたいことに、BIGでは自分から頼まなくても一年の業務評価が行われ、上司などと面談もされ、給料調整がされる。給料調整に不満のある人はマネージャーに申し出るように、との丁寧なメールまで受け取った。どうやら2018年は新しい事務所の移転などで出費がかさんで、思うような調整額ではなかったが、、、、私は、、、、去年に続き、、、またしても調整額を素直にのんだ。。。

日本では給料の交渉はあるのだろうか?どんな感じでされるのだろう。
黙っていては何も始まらないアメリカ。またこのあたりのことは後日書きたいと思います。

つづく

(写真は事務所の入った建物_左側、とマンハッタンブリッジ。今日、帰宅途中に撮りました。締め切りがあり、20時半に退社。サマータイムのお陰で9時少し前まではこんな風に空が明るいのです。今週は最高気温30度以上の暑い日が続きます。今日20時時点で28度。湿気はあまりないニューヨークの夏です。)


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