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Vol.12【キングオブコント2021・結果総評】

2021年10月2日(土)は【お笑いの日】と銘打ち、お笑いミクスチャー、ソウドリ、お笑いベストワンそしてキングオブコントと、8時間お笑いがぶっ通しだった。流石のお笑い好きな私も寄る年波には勝てず、全プログラム視聴後は間髪入れず深い眠りに落ちた。

さて今年のキングオブコントだが、現代の若手コントシーンを彩る錚々たる顔ぶれと言っても過言ではない。ここに完全復活したかが屋が来年は食い込んでくることも予想されるので、新顔が果たしてどう食い込んでくるのか今から楽しみではある。

さて、普段はTwitterでやっている全ネタ診断を、今回はnoteで展開させていただければと思う。勿論素人の評価など見る価値も無いといった方も多いと思うので、その方々とはまた別の機会でご縁があれば。

1組目 蛙亭 461点

壮大な背景に矮小な笑いどころ。肝心の笑い部分が【ドロドロして気持ち悪い】のほぼ一点に集約されているため、見どころが植え付けられたままひたすらストーリーが展開されていく。この設定を思いつくだけでも相当な実力者だし、ネタ作成者のイワクラが醸し出す世界観は存分に発揮されていたが、クスリとできる部分がもう少しあれば見方も変わったのではないか。こんな評価私も若いころ相当に為されたな。

2組目 ジェラードン 462点

ジェラードンの名刺代わりのようなネタ。とにかく西本とかみちぃのおぞましい(?)キャラクターが繰り広げる鳥肌物の世界観に対して海野が遠巻きにツッコむ展開。ジェラードンが初見の人には賛否両論でしょうし、ジェラードンを知っている人達には温かい目で見ていられるネタ。トリオコントでは現在ジャンポケが頭一つ抜けているが、ネルソンズとの切磋琢磨で3年後迄にはジェラードンVSネルソンズのトリオコントのせめぎあいが見たい。

3組目 男性ブランコ 472点

正直今日一番、このコンビを初見だった自分を恥じたい。動きは少ないが存分に相手を引き立てるツッコミに強烈なインパクトを与えるボケの演技力。更に終盤に周到に用意された仕掛けに、視聴している此方は度肝を抜かれた。これは将来相当に伸びる若手…と思ったがどうやら2011年結成の10年目だった。来年果たして再びこの場に戻ってこれるかが正念場である。この1本目に勝るネタを今後観られる可能性を秘めている、そう思うだけで心がときめく。

4組目 うるとらブギーズ 460点

男性ブランコが今後陥りそうな袋小路に既にハマっているのがこのコンビ。構成も笑いどころもしっかりしている、だけど勢いが僅かに足りず敗北する。ここ数年はそんな展開が続くかもしれない。かつてはさらば青春の光がこの沼にどっぷりハマっていた。出続ける事で安定的な面白さが供給される一方、視聴者はそれ以上を求めてしまいたくなる。迷子を捜す父親が子供に課した異様なキャラに呼び出し係が耐えられない・・・という筋書きは十分に面白いのだが、もう一つ爆発するパワーが欲しい、贅沢な要求をしたくなってしまう。

5組目 ニッポンの社長 463点

もう一つ爆発するパワー、というのは言い換えればオチの強弱に掛かっている部分もあると思う。そういう意味では今回のニッポンの社長はバッチリ決まったのではないか。主要な流れの部分が【指導中に死球を食らい続けるオッサン】というだけの流れをきっちり笑いに持っていけるケツの動きは秀逸だし、オチの超綺麗なフォームで快音を連発するケツの動きも最高だった。更に特筆すべきはオチの部分がどう転ぼうと笑えたのではないか、と思わせられたのが割と本気で神懸っている。これでオッサンがヘタレで終わるなんちゃって指導だったという形でも笑えただろうし、況や本ネタでも…と思うと凄まじい。来年は本格的に優勝戦線に食い込むのではないか。

6組目 そいつどいつ 456点

ヒルナンデス!でみたネタといい今回のネタといい、暗転を上手に使えるコンビというイメージが強い。あとはネタの構成力か。ホラーっぽいけど普通の事をする彼女、という落差でネタの笑い所を生み出しているのに、最後の最後ホントにホラーチックで終わってどうするのさ…と、視聴後の爽快感に欠けたのが点数が伸びなかった要因の一つにあるのではないか。

7組目 ニューヨーク 453点

去年同様若干古い感じのコントが持ち味のニューヨーク。今回のネタも存分にそれが出ていたし、しっかり楽しませてもらった。嶋佐のキャラクターも屋敷のツッコミもダブルでドギツイのが心地良い。だが審査員には刺さらなかった。これは穿った見方かも知れないが、今回の審査員はキングオブコントで優勝経験のある者たちで構成されている。彼らは同世代のネタをふんだんに観過ぎてしまい、同世代の香り漂うニューヨークの芸風にハマらなかったのではないだろうか。こう表現すると語弊が生じるかもしれないが、蛙亭より点数が低いという結果が、審査員たちが意外性を求めている事の証左に思えて仕方がない。あとネタ後に松本に突っかかる屋敷という一連の流れは、M-1で世間的には無名の新人がやったから面白かったのであって、現在大ブレイク中の屋敷がやっても白けてしまった。

8組目 ザ・マミィ 476点

仕掛けに弱い審査員がバッチリハメられたコンビがここだろう。最終盤で汚いオペラをかますという仕掛けが見事に成功してこの段階でのトップに立ち、最終決戦へコマを進めた。正直言って中盤までの展開はありきたりで笑い所も弱かったが、この汚いオペラの存在があることで一気に全体像が見えてキュッと締まったネタになった。でも恐らく去年までの審査員、さまぁ~ずとバナナマンだったらここまで点数が伸びたかなと邪推するのはタブーでしかない。その禁忌を犯してでも言いたいのが、審査員に恵まれたなの一言である。

9組目 空気階段 486点

一同納得の出来である。実はそれまでの空気階段のネタに対し、私個人はそこまでの贔屓目は持っていなかった。どちらかといえば鈴木もぐらの演じるぶっ飛んだキャラクターに重点が置かれたネタが多く、そのキャラクターが受け入れられなければネタそのものを受け入れられないといった現象が多々あった。2019年のキングオブコントでやったタクシー運転手のキャラがまさにそれだった。だが今回は違う。【SMクラブが火事になり逃げ遅れた客】という、日常観に溢れた(?)設定を軸にネタが始まる。まずブリーフ一丁で縛られているかたまりだけでも異常な光景なのに、そこへストッキングを被ったブリーフ一丁のもぐらがやってくる。最高の出オチだった。かたまりのネタが、【もぐらに異常なキャラクターをさせる】構成から、【もぐらそのものが笑えるキャラクター】への脱却を図り、大成功した瞬間だった。その後の展開は言うまでもない。笑い所に笑い所を重ね続け、歴代最高得点を叩き出したのも当然の帰結であった。

10組目 マヂカルラブリー 455点

直前にかたまりのネタ構成における大幅な成長を感じただけに、このマヂカルラブリーでは【変わらない】ことがデメリットに作用していた。松本人志のコメントが完全に的を射ていたが、失礼を承知で記すが間違いなく【M-1優勝時のつり革ネタ】と大差無いのだ。電車に揺られているか低級霊が操っているかの違いなだけで、野田の動きやネタの展開が全然差がない。あのつり革ネタもM-1優勝時にあれは漫才なのか論争を巻き起こしていたが、そのネタをコントに持ってきただけにしか感じず、新しい事に挑戦し続ける野田クリスタルに期待した分ちょっと残念だった。

最終決戦1組目 男性ブランコ 463点

案の定1本目より点数は下がった。このネタは1本目で魅せた平井のキャラクターの濃さが鳴りを潜め、【山盛りのお菓子】に力を借りたようだが、やや不発に終わったようだ。実際見ていて展開の強弱に欠けた。着眼点は良かっただけに、もう一捻りあるともう少し点数も伸びたのではないか。

最終決戦2本目 ザ・マミィ 459点

はっきり言って1本目よりこっちのほうが好きだった。ただオチは最悪。恐らく見ている人の9割方読めた内容だったし、ニッポンの社長のように読まれたうえで笑いを起こすオチでもないので、1本目の仕掛けに大満足した審査員に刺さらなかったのも当然だろう。この時点でもしザ・マミィが480点くらい出していたらまだ分からなかったが、この結果で既に空気階段の優勝は確信に近いものを感じた。

最終決戦3本目 空気階段 474点

納得の優勝である。1本目にこっちを持ってきていても最終決戦に進めていたという事実(勿論展開のアヤはあるが)がそれを物語っている。こちらはそれまでの空気階段のネタを濃縮還元されたようなキャラクターコント。1本目での空気感と完全に別物ではあるが、最早1本目の影響で【もぐらが何やっても笑える】という確変状態に突入していたし、全然違うテイストのネタの比較になったのも高評価に繋がったのではないか。

というわけで此処までお読みくださり誠に有難う御座いました。今年の空気階段にはそれこそ2019年のミルクボーイのような無敵感があった。もぐらとかたまりそれぞれ個人もフューチャーされ始めている現在、更なる飛躍を期待されるコンビへと成長したのではないか。

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