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60.タリンの芸術村Telliskivi Creative City

 一日二日で、その国を判断するのは早計であるが、エストニアに来て感じたのは、割りと英語が通じることである。
 Skype発明した国とか、電子政府であるとか、そのへんで若者が英語を得意とするのかもしれない。
 2007年に大規模なサイバー攻撃を受けたことから、NATOのサイバーテロ防衛機関が設置されていたり、2018年には「データ大使館」という国民の情報を守るために国外(ルクセンブルク)に設置したり、電子政府として一歩先をいっている感じである。
 お昼に友人のテートが市場を案内してくれて、BAOJAAMという店ランチをとることになった。ここは台湾インスパイア系というか、台湾バーガーと呼ばれている刈包(グゥアバオ)をエストニア人好みにアレンジしたものを出す。じゅるじゅると汁溢れるおいしさを堪能していると、突然あの寺内タケシのエレキサウンドが店に響いた。店主が東京に行った時に手に入れたカセットテープだという。なんとレアな。エストニアは、ソ連に組み込まれてしまった時代もあるから、日本人アーティストでソ連ツアーをやっている希有なミュージシャンなので、もしかしたら寺内タケシはタリンに演奏に来たことがあるのかも知れない。
 タリン芸術大学では、今回招聘された件の「ミュージックビジネス」談義がはじまっていたが、少しだけ参加して、街を散歩した。おいしそうな蜂蜜や、焼き立ての黒パンを買ったり、エストニアのテキスタイルアーティストKelpmanさんの作品などを見た。
 夕方のレセプションでは、若き女性大統領カリユライドさんの熱いスピーチがあり、「自由」を連呼するので、異様に盛り上がってしまった。たとえ日本にいてもエストニアの電子社会に参画できるという革命的な方法について語っていた。ぼくもe市民として登録しようかな。そうすればエストニアを中心にヨーロッパで活躍できる。
 大学の建物の4階では、真鶴の森の家で出会ったフィンランド人のジミ・テナーが、廃品から楽器を作るワークショップをしていて、その発表会の最中だった。こんなすぐにジミに会えるなんて奇遇だなぁ。
そして、Telliskivi Creative City という芸術村のような再開発地域の夜のコンサートでは、ヒカシューで参加したアルハンゲリスク・ジャズフェスティバルで会ったエストニアの歌姫Kadri Voorandのライブを観ることができた。そうだよ、彼女エストニア人だった。声をループ、変調させるエフェクターを巧みに使って、音を新鮮にゆがめてく手法は、以前より違和感がなく、成長が感じられた。
 ホール入口のカフェでは、サーミ人のアーティスト、Torgeir Vassvik
を紹介してもらったり、タリンの夜は更けていく。

巻上公一 2019年3月31日


Jimi Tennor
Kadri Voorand
Torgeir Vassvik

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