小声コラム#40 『赤本』と受験生
そういえば、受験シーズン真っ只中なのだと気がついた。
普段は在宅ワークをしていて、人と関わることがほとんどないうえに、ニュースを見ることはおろか、SNSすらあまり見ないこともあります。
そうすると、もう世間から断絶されてしまって、オートマチック浮世離れ状態。過去自分がそうだったにも関わらず、受験生がいることすら頭から抜け落ちていました。
なぜ気づいたのかというと、書き物をしようと入った国道沿いのマクドナルドで、若者が広げていた『赤本』のおかげ。
過去自分もお世話になった、表紙に大学名が書かれた真っ赤な分厚いやつです。
過去問の傾向が当日の問題と全然違くて、大学受験に失敗したあれです。(自分がわるい)
そういえばそういう時期かぁと思いながら、リュックからノートPCとコクヨの方眼ノート、黄色の筆箱、カバーがついていない小説を取り出しました。
テーブルにならんだそれらを見てハッとした。
取り出した本は『化物語(上)』
奇しくも表紙にタイトルが書かれた真っ赤な分厚い本。
これでは赤本で勉強しようとしている浪人生ではありませんか。
なんだか恥ずかしい。
受験生が赤本に向かって勉強を頑張っているなか、こちらは娯楽も娯楽、ファンタジーに向かおうとしているのですから。
旗から見たら、受験生の勉強セット。
実情は、大人の現実逃避セット。
赤本に向き合っていた受験生の自分が、10年後にこうなっているなんて、まったく想像もしていなかった。(なりたい像もなかったけれど)
10年後の自分は
クーポンを使うように催促するメールを送ってくるホットペッパービューティーの勢いに負けて、予約した整体ではクーポンが適用されていなくて、「あ、クーポン使ってます。」とは言えなかった人です。
松屋で食券を買うのに後ろに人が並び始めたら、これじゃなかったなって思うメニューの食券を買ってしまう人です。
それでもね、受験生。過去の自分。
受験が思い通りにいこうが失敗しようが、そのうち笑えるようになるし、自分で自分を笑えたら、大人もそれなりに楽しいですよ。
元気ない日がほとんどだけれども、
こうやって、文章にするエネルギーになるから。
そして、マクドナルドで赤本を広げて頑張っている青年。
どうか笑って迎えられる春になりますように。
#40 『赤本』と受験生
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