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【ネパール親子旅行記#3】少女の生き神クマリに会う

次の目的地は、ダルバール広場。

王宮広場、という意味だ。ややこしいけどネパールには全部で3つのダルバール広場がある。その昔、このカトマンズ盆地にはネワール族による3つの王朝があって、それぞれに美しい広場が作られたのだそうだ。カトマンズ、パタン、バクタプル。実は今回、この3つを全て巡ることができたのだが、まずはカトマンズのそれに向かった。

広場に着く少し手前で車を降り、市民たちの普段使いの商店街を歩く。ネパールに来てはじめての路上歩きだ。わくわくする。

狭い道の両側には、生活雑貨や衣料品、金物屋や八百屋などあらゆる生活用品店が並び、水汲み場や小さな寺院もある。
その狭い道を、車も自転車も人も、所狭しとぎゅうぎゅうになって進んでいく。つまり、私たち素人にはとても危ない。
息子も早々に危険を察知したのか、先頭を進むガイドのディプさんの後ろにぴったりついて離れない。えらいぞ、正しい判断だ。

道中で夫が、ネパールのおじさんたちが被る伝統帽子を買った。
似合うを超えて現地化なさっていた。
井戸で水を汲んで歩く人も


ここでひとつ。カトマンズは空気がめちゃくちゃ悪い。

ヒマラヤのイメージがあるから、さぞかし空気も美しいのかと思っていたからこれにはびっくりしたのだけど、世界でも大気汚染が深刻な場所の一つなんだそうだ。
カトマンズ盆地の地形的性質もあり、汚染した空気が滞留しやすいらしい。その排ガスに加えて、土埃もすごい。私も悲しいけれどマスクをして歩いた。じゃないと、喉がすぐにヒリヒリして咳込んでしまう。

ダルバール広場に到着すると、そこはたくさんの観光客と、たくさんのハトで賑わっていた。中でもシヴァ像の化身、カーラ・バイラヴ像の前には人だかりが。一見ポップに見えるけど、剣を片手に生首を持っていて、ちょっと怖い。

この像の前で嘘をつくと即死するとか
狛犬ならぬ狛獅子


広場を歩いていると、あちこちが修復中で、崩れたレンガが寄せてあったりした。2015年にあった大地震で多くの建造物が崩れてしまったらしい。今も多くの建築が、元の形に再建されている途中なのだという。

つまり見える建物には、新しいのと、古いのが混じっているということらしいのだが、これが全然わからない。「このレンガよりこっちのが新しいでしょ?」なんて当たり前のように言われたけど、正直全然見分けがつかなかった。
でも、こんな手作業の建築物を、また建て直せるだけの職人たちが、まだネパールにはたくさんいるんだろうと思った。それは素晴らしいことだ。

あちこちが修復中
美しく復元された建物たち

そうしてあちこち歩いていると、ディプさんに呼び止められた。

「クマリの館に入れますよ、ちょうどクマリが出てくる時間みたいです。」

「クマリ」という少女の生き神がいる。そんな話は聞いていた。運が良ければ、顔を出してくれるから謁見できると聞いていたが、まさか会えるとは。
急いでクマリが住むという館の中庭に入る。すると、狭い空間にはたくさんの人が待機していた。
クマリのことは決して写真に撮らないでと何度も言われる。ぐるりと取り囲む窓の奥に、彼女とその家族が暮らしているのだという。

クマリの館


クマリはネワール族から選ばれる。選ばれるには様々な条件があるが、それをクリアしつつ、かつ水牛の生首が並ぶ真っ暗な小部屋で、一晩中泣かずに過ごした少女が選ばれるのだそうだ。そして初潮を迎えるその日まで、生き神として生きる。

この館にいるのはロイヤル・クマリ(王立クマリ)だった。時代と共にクマリのあり方も変わり、今ではスマホも持ち込んだり、家族と暮らすこともできるんですよ、などという話を聞きながらその生活を想像していると、突如、場に静かな緊張が走った。9歳くらいだろうか?少女が、正面の窓からふいっと顔を出した。
クマリだ。ガムを噛みながら、こちらを無感情な表情で見回す。しばし沈黙。
しばらくすると、するりと中に戻っていった。



この日、カーラバイラブ像とクマリの館で撮った写真には、どれも眩しい光が映っていた。


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