見出し画像

11/100 二階堂奥歯著「八本脚の蝶」/これが最後の夜だから

テラスハウスに出演中だった方が命を絶たれたニュースに触れて、その後に生前投稿されたインスタの最後のメッセージをみた。番組をリアルタイムで視聴はしていなかったけど、以前から彼女の名前をネットニュースで見かけていたから存在やキャラクターは知っていた。

自ら命を絶たれた方の訃報に触れると、いつも同じように死んでしまった大好きな友人と、そして二階堂奥歯のことを思い出す。友人も二階堂奥歯も私も、同じ高校の同級生。二階堂奥歯とは大学も一緒。

大好きだった私の友人は出会った時からちょっとしたことで死にたがっていて、だから彼女の訃報を聞いた時、呆然としながらも、ああようやく死ねたんだ、という気持ちもあった。彼女がもう死ぬと泣きながら電話をかけてくるような時、私は彼女の気持ちを翻そうといつも必死だったのだけど、果たしてそれが良いことだったのかどうかを今でもたまに考える。死ぬのはやめて、死んじゃ嫌だよ、というのは私の都合でしかなくて、そして彼女にとって生き続けることが何よりの幸せだと心から言えたのか?

二階堂奥歯が飛び降り自殺にいたるまでの日記が纏められた「八本脚の蝶」を読むと、その葛藤というのはずいぶんと前から始まっていて、遠ざかっては近づいて、を繰り返しているのがわかる。世界をみる解像度が高いからこそ、絶望することも多いのだと思う。私だったら到底気づかないようなことを二階堂奥歯は感じ、表現し、そして少しづつ傷ついていったのだと思う。

最後の魔法のおかげで世界はとても綺麗です。私は生きている間。時々、一瞬だけとおくをかいま見ることができました。
結局そこに行くことはできませんでしたが、でも、ここも、とても綺麗です。
明日がこないからです。
これが最後の夜だからです。
二階堂奥歯著「八本脚の蝶」

インスタのストーリーでみたさよならのメッセージ、花さんの顔は穏やかだった。二階堂奥歯もこんな顔で日記を書いたのかな、そして何も残さなかったけど私の大好きだった友人も。

二階堂奥歯の最後に見た世界と花さんの、そして大好きだった友人の。シンクロしていればいい、それくらい穏やかだったらいい、そう願う深夜の心持ち。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?