2018/12/26 人生のなかで最も奇妙な体験、すなわち死
『戦国策』には「聖人の事を制するや、禍を転じて福と為し、敗に因りて功を為す」とあり、『史記』蘇秦列伝には「臣聞く、古の善く事を制する者は、禍を転じて福と為し、敗に因りて功を為す」とある。失敗を元に成功を収めるという意味。「災いを転じて福となす」とも書く。http://kotowaza-allguide.com/wa/wazawaitenjitefuku.html
昨日は友人とムンク展へ。これがとにかくよかった。まず作品の括り方がよくて、ムンクの生涯と、そして作風が刻一刻と変わっていくさまがとても分かりやすかった。そしてムンクの生涯と、そしてその間に生み出された作品を眺めながら色々なことを考えた。
そのうちのひとつが「災い転じて福をなす」だ。ムンクは幼い時に母を、その後に姉を結核で亡くした。彼の初期の絵画はそんな身近な家族の死からインスピレーションを受けたと思われる作品群。その「死」の描き方がとても生々しくてぞくぞくして、特に姉を描いたとされるこの絵で息を飲んだ。
<<病める子Ⅰ 1896年/リトグラフ>>
その後もムンクは「死」をにおわせるような絵画を繰り返し描く。
<<浜辺にいる二人の女 1898年/他色刷り木版>>
<<マラーの死 1907年/油彩>>
幼い時に肉親を亡くすという過酷な経験が絵画という形で見事に昇華されていて、不謹慎かもしれないのだけど、災い転じて福と為す、そんなことわざが頭に浮かんだ。
更に「死」について、晩年の彼はこんな言葉を残した。
「我々は誕生の時にすでに死を体験している。これから我々を待ち受けているのは、人生のなかで最も奇妙な体験、すなわち死と呼ばれる、真の誕生である—一体何に生まれるというのか?」—スケッチブックより(1927-34年)
命の始まりが母の胎内から世界に出たその瞬間であるなら、誕生とはそれまでの世界、即ち母親の胎内との決別、ということになる。この世界と決別する時~つまり私達が「死」と呼んでるもの~は、いったい次に何を運んでくるのか?
晩年の彼の絵はパステル風味の色彩鮮やかなものなどとても華やかだ。その作品群をみながら彼が「死」について老年に至るまで考え抜いた結論に触れた気がした。
その他あったこと。ランチは上野で人気のラーメン店へ。
おいしかったけど再度来訪するほどでもなく、こんなことならもうひとつの人気店、「鴨to葱」に行けばよかったなと軽く後悔。
らーめん 鴨to葱
東京都台東区上野6-4-15
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13210392/
まあけど気になるならまたくればいい。上野までは電車で30分もかからない。東京住まいの特権。
夕飯はソーセージと大根のコンソメスープ煮。
野菜を使い切る目的で適当に作った割に美味しかった。
綺麗にもりつける心の余裕をいつも持てるといいなと思う。
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