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小沢健二「夢が夢なら」を聴くと思い出すこと

これをアップする時はもう過ぎているけども、今日は小沢健二の誕生日4月14日。
お誕生日おめでとうございます!

「4月の空はダイヤモンド」といえば「夢が夢なら」。小沢健二が感じる日本の四季を詩に乗せた曲。

この曲は自分の苦い思い出も詰まっている。
誕生日おめでとうな日に書くことではないんじゃないのとセルフツッコミ済みなんで許してください。

二十歳を少し過ぎたくらい、フリーターで働いていた頃、「正社員にならなくちゃいけない…!」と今思うと「そのまま働いてれば良かったのに」という結果になるんですが、当時はとても不安を抱えながら就職活動をしていました。

東京のとある美術商の仕事の求人があったので興味本意で応募し、書類選考通過、面接をするためiPodで小沢健二を聴きながら当日一時間ちょっとかけてその店舗まで向かいました。

面接時間の五分前に到着、そして店舗の中へ。とても薄暗い店内、でも人がいる気配はある。声量は控えめ、少し高めの営業トーンで呼びかけてみても誰も出てこない。そのあと間隔を空けて呼びかけを繰り返し、やっと10分くらい経ったところで中年男性が奥からまるで「誰だ?」というような顔で出てきた。面接で来たと話すと、なんとその担当(というかその店のオーナー)が外出中だという。その時点でないわ、と思ったけども緊急なことかもしれないしと思い直し、戻ったら連絡をするとその男性に言われたので店舗近くのドトールで連絡を待つことにした。

そわそわ、ガラケーをちらちら、そわそわ。
何を頼んだのかもすっかり記憶から消されているけど、飲みものもすっかりなくなって、カップの内部もカラカラになっても連絡はこない。

耳にはイヤホン、イヤホンからは「夢が夢なら」がループで流れている。
私は気に入った曲をずっとループで聴く癖がある。

3、4時間は待ったと思う。
すでに日は落ちて真っ暗。

もういいやと、とりあえず店舗へ向かった。
オーナーはまだ戻っていないという。中年男性は「今日は本当にごめんね」とだけ言って、オーナーが戻らないなら面接日を改めて設定するなどの提案すらないまま返され、その後もなんの連絡もなかった。

傷つかなかったといえば嘘になるけども、テキトーだなぁって呆れた感情は爆発した。こんなテキトーな感じで「正社員」ってできちゃうんだなって。今思うとそんなテキトーな求人を経費をかけて掲載するってどんだけだよと。

帰りの東海道線の中、ボックス席の進行方向側の窓側の席に座りながらやっぱり耳には「夢が夢なら」が流れていた。
気持ちがおさまらないまま聴いていると「僕は一人で生きることを学ぶさと思いながら」という歌詞が妙に頭にこびりついた。人間の感情とその時に流れてくる歌詞というのはなんてリンクしやすいのか。気持ちに寄り添ってくれるもの、同調してくれるもの、タイミングが良すぎなことって多い。

大好きな曲だけど、流れる度にあの帰りの東海道線の車窓からの紺色の景色と人が営む生活の灯火を思い出して少ーーーーしだけセンチになってしまうのもまぁ悪くはないかと思いながら聴いている。

#イラスト #小沢健二 #音楽 #コラム #エッセイ

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