いつかの朝 トロント
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Perch.のお手紙 #126
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時差ぼけのせいか、4時くらいには目が覚めて、17時の日本と仕事のやり取りをしたり、近しい人にメッセージを送ったりする。
まだ真っ暗な空を窓の外に眺めながら、小さく灯りをつけて読む本。
8時をすぎてゆっくりと顔を出す太陽。9時になっても開いているお店はまだ数えるばかり。道には人がまばらで、街はとても静かでほんのりと暗い。
トロントの朝は遅いのだ。
時差ぼけでヘンテコな時間にお腹が空くので、すぐ側の24時間営業のデニーズでパンケーキを食べるか、チャイナタウンで1番早くオープンするお店に歩いて向かうか迷って中華街でお粥を食べることにする。
冷たい朝を開店時間に向けて1人歩く。
知らない街の、朝は気持ちがいい。そしてほんの少し心許ない。
開店間際の、伽藍堂の白っぽい店内で、メニューに書かれた数字を小さな紙に書き込んで手渡す。鱈が入ってくるはずと思ったお粥には、謎のお肉が満載だった。
湯気をもくもくと上げる熱々でとろとろの中華粥を、上顎がベロりとなるのも厭わずにフーフーと食べた。
空っぽのお腹に、じんわりと広がる。
夢中になって食べていたら、トコトコと足音がして、鉄棒みたいな棒を前後に肩に担いだお兄さんが2人、焼きたての子豚をショーケースまで移動しているところだった。このお店はあれが名物だったのか。
ぱらぱらとやってくる中華系のローカルが次々に注文をする、揚げたての油條。
朝ごはんのテイクアウトに、バンバン切られて、ご飯にのせられていく焼きたての子豚。
自分の故郷を遠く離れて、この地に暮らそう、そして故郷のお料理をここで作ろうと考えた人たちの人生を想像してみる。
すっかり温まった胃を携えて、起き出した街を輝く方に歩き出す。
この先にはナイアガラがあるらしい。