虎詣

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Perch.のお手紙 #144

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そして思った。打ち上げ会場に向かう真っ暗な田舎道を歩きながら、こうしてお料理を続けていれば、きっとそのお料理が私をどこかに連れて行ってくれるだろう、って。



倉林さんのお料理を初めて食べたのは一体何年くらい前の事だろう?

地元吉祥寺の仲間たちに連れられて、麻婆豆腐がおいしいという中華料理屋さんへ伺った。駅から随分離れた、古風な一軒家は自宅を兼ねているとの事だった。


それまで私が知っていた中華とはちょっと違って、優しくてシンプルだけれども、独特のレイヤーのあるお料理はとてもおいしかった。ほんわかして掴み所のない倉林さん(私たちはその店名から「虎」と呼んでいる。)の印象と重なる様な、そんなお料理。


その後虎は西荻に1年限定のお店を出して、4年程前に突如長野に移住をした。


物件を見つけDIYでお店を作り、縁もゆかりもなかったその場所で着々と根を張っていったのだ。


昨日と一昨日、そんな長野富士見町の「茶虎飯店」の虎の声掛けで、吉祥寺の仲間たちで、お酒とお料理と音楽のイベントをお届けさせて頂いた。


梅雨入り前のよく晴れた水曜日。


お酒とお料理を味わいながら、中と外を行き来して、おしゃべりしたり。

散歩中の犬を撫でたり、暮れていく空の色を眺めたり。


15時から始まったイベントは、22時を過ぎても熱気に包まれて、たくさんの笑顔に出会うことが出来た。


POP UPのイベントでは、ゲストのお料理に人気が集中することが多い。けれどもたくさんのお客様がその日、今日の倉林さんのお料理は何ですか?と聞かれた。

信頼のある関係性なんだなぁ、と静かに感動をした。


虎はその日オーガナイズとお料理以外にバンドとしても出演して、チェロとバイオリンを披露した。多彩過ぎる。



決して離れ離れになることのない自分のお料理が、自分をどこかに連れて行ってくれる気がする。ふと、そう思った。


仕事が自分を縛るものではなく、自分を自由にするものでありますように。