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常滑陶芸研究所


常滑陶芸研究所
堀口捨己 1961

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ヒロイックでないモダンデザイン

存在は知っていたものの、何となく行かないでいた堀口作品でしたが…
先日のNAKA賞トークで浅井さんが激推しされていたので、ようやく行ってきました。
個人的にはアイリーン・グレイのE1027ぽさがあるのでは、などと想像していました。
同時期の堀口作品である明治大学のキャンパス同様、水平ラインを強調した構成。メタボリズムが一世を風靡する前の、未来志向でもヒロイックでもないザ・近代建築。水平に伸びるキャノピーが光を含んで美しいです。
キャノピーを支える小梁は細かいピッチで反復していて、見え方としてはほぼルーバー。スラブは見せずに腰壁やルーバーなど垂直要素の展開で水平を見せています。

建物自体は大きくはなく、プランは2:1:1で展示室/エントランスホール/事務室&応接室+二階に会議室、あとはトイレや倉庫のみというごくシンプルな作りです。
正面玄関のキャノピーを境に左と右で構成が対照的。
左側は建物の半分を占める展示室側、大きな壁面で重い印象になる寸前ですが足元は地面から浮いています。右は壁面がほぼガラスで置換されておりキャノピーを大きく張り出して水平に伸びつつも、足下は接地しています。地面との関係の作り方が絶妙です。
展示室側の外回廊は具体的な用途があるわけではなく…ただただ地面と縁を切るために作られたのでしょうか、贅沢だなぁ。。(搬入口にはなっているのかも。)

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さすが、巨匠は自由だ

内部はエントランス入ってすぐ吹き抜けとなったホールを上がっていく階段がまず見所。片持ち+吊りの繊細な階段です。
段板は鉄板を曲げて強度を出し、吊り用横架材からアルミの角パイプで吊って段裏でビス留めしてあります。おそらく横架材もアルミ。上からブロンズ塗装を施してあります。結果として真鍮ぽく見える。踏面は床材と同じリノリウムを貼ってありました。

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バタフライのトップライトから採光を取る展示室も良いです。展示室の壁は細長いボーダータイルを縦使い、光を鈍く反射して美しいです。

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しかし何といってもルーバーキャノピーから光の差し込む2階バルコニーがこの建築の白眉です。
RCだから仕口がないんですよね…。納まりがない納まり。ここはやはり凄い。光が抽象的です。

外観は水平ラインの印象が強いですが、内部空間にはその水平性が出てきません。
4スパンをバサッと縦3つ割り。
水平に伸びるバルコニーは、我々が行った時は立ち入らせてもらえましたし、バルコニーで話している方々もいて、会議室よりむしろちょうどいいコミュニケーションの空間となっている模様でしたが、計画上は会議室からの部屋跨ぎでしかアクセスできないので、少なくとも一般来館者のための空間としては想定されていない。
というか、平面計画だけで言えばプログラムとは関係のない場所です。
となるとあの水平のバルコニー&キャノピーはもっぱらモダニティの表現のためなのか…?

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外装は藤色のモザイクタイルのグラデーションで、その淡い藤色が内部にも展開されています。
これが良い、という人もいますが、個人的には良いのかどうかはよく分からない。なぜ藤色である必要があったのかはよく分からないです。(遠回しにイマイチと言いたいのではなく、まだよく分からないの意。)
藤色のおかげでアルミなど青味のシルバーがむしろ緑っぽくみえるのは意図したものなのか…、そこにブロンズがあり、モルタル系の灰色があり、赤いリノリウムタイルがあり…しかしどれかが差し色というわけではなさそうだなぁ。

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タイルは練込焼成のモザイクタイルです。切っても割れても中まで藤色。釉薬がないため表面はマット、エッジもシャープです。このタイル、素敵…!あるなら是非使いたいですが、もう作っていないそうです。
サイズもとても小さいし(10mm角…)今のようにネットの裏張りなどはなく、これを一枚一枚壁面に貼り付けていくわけです。さらに一部グラデーションをかけています。ひぃぃ…。ラインストーンを建物全体に施すみたいな作業ですね。。

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贅沢な素材をふんだんに使うイメージと思いきや、まったくそんなことはなく、床も天井もごく普通のリノリウム、ジップトーン。トイレや応接間など小部屋の天井はセメント板やベニヤを市松に張ったり、使いようで見せるやり方。自由です。

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まさか、巨匠もコスト難ーフェイクと本物

建具枠は意外にも木にシルバー塗装でした。
なんでも堀口はアルミを使いたかったがお金がなかったので塗装木枠にしたとか。泣けます。巨匠を身近に感じます。
エントランス風除室の框戸も一般的な昔のアルミドアに見えますが、木にシルバー塗装とのこと。
でもそれにしちゃシャープだな、とコンコン叩いてみたところ、障子の框などはおそらく木の芯材にアルミの切板を貼っている模様。上からさらにシルバー塗装を施しています。枠は木でした。
結果としていかにも昭和っぽいアルミドアと寸分違わぬものになっていて、今の視点で見ると木でよかったのに(笑)とも思えますが、造作の丁寧さはすごいです。

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トップライトもガラスブロックと思いきや木枠+型アクリル板。ここも堀口は本当はガラスブロックにしたかったそうです。
コストのためとはいえ木枠を華奢にガラスブロックの目地と同じくらいに納め、いや、というより、おそらく木枠の限界に合わせて格子の寸法を変え、比率がガラスブロック的に見えるよう調整しています。トップライトのアクリル格子はガラスブロックのピッチよりも若干大きいのです。遠目にはガラスブロックに見えます。巨匠のフェイク技、さすが。。

というわけで、プランに対する割り切り、フェイクと本物を融通無碍に行き来する素材の自由な扱い、ルーバー…グレイよりも隈さんに通ずるものがありそう、かな?

吉村真基

吉村真基建築計画事務所|MYAO

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