伝わった時、それは「面白い」になる

皆さん、「講談」という伝統芸能をご存知ですか?

「何だろう?」と思った方も、

神田松之丞(現:神田伯山)さんと聞いてピン!ときた方が、多いのではないでしょうか?

まさに、私もそんな一人でした。

今回は、そんな私が、すっかり神田伯山さんのYouTubeにハマり、お江戸上野広小路亭へ講談を観に行って感じた、「伝わる」と「面白い」のお話です。

十人十色の音

今回観たのは、「日本講談協会」定席。

伯山さんのYouTubeばかり観ていた私にとって、こんなに多くの講談師の講談を一気見できる空間は新鮮でした。

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講談師によって、声の大きさ、話の見せ方、表現の特徴も様々です。

特に興味深かったのは、「張扇(はりおうぎ)」の音

張扇は、講談師が使う音を立てる専用の扇子のことです。

講談師によって張扇の音の出し方も、会場での響き方も、全くの別物。

それは、「一種の言語だ…!」と、思うほどでした。

分かる!だから、笑いが止まらない

今回、YouTubeではなく会場で講談を観て、気付いたことがあります。

それは、「面白い!」と感じるために「分かる」が大前提で、そのためには「伝わる」が必要だということです。

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講談では、歴史に関わる様々な言葉が登場します。

伯山さんのYouTubeでは、字幕があるので「目」からも内容を認識できたのですが、リアルの講談は、もちろん「耳」から入ってくる情報だけ。

加えて、日本史が苦手科目だった私にとっては、多くの場合「どんな話なのか?」を理解することで必死…という状況でした。

だから、会場のお客さんが「ハハハ!」と笑っていた場面で、私は「?」となることも、しばしば(完全に、私の理解不足…💦)。

だけど、伯山さんの講談では、それが全くありませんでした。

まるで、私も江戸時代へタイムスリップして見ているような気持ちで、会場の皆さんと一緒になって「ハハハ!」と笑っていたのです。

表現の工夫が「面白い」へ

なぜ、このようなことが起こったのでしょうか?

それは、伯山さんの講談の内容を、理解できたから。

理解の背景には、初心者の私にも「分かる」ような、伯山さんの表現の工夫があるのだ、とも思います。

これは、自分の「医療×編集」という仕事にも通じると考えました。

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例えば、私は、日々、こんなことと格闘しています。

・馴染みのない病気の話であっても、患者さんに「分かる」と思ってもらうためにはどうしたらいいのか?
・難しい専門用語を、どうやったら易しく表現できるのか?

なぜなら、「分かる」という前提があって初めて、人は一歩を踏み出すことができるし、様々な感情を抱くことができると思うから。

これは勝手な想像ですが、講談師の方々は舞台に上がって「今日のお客さんには、〇〇だな…」と感じ取り、その日にお客さんにあわせた工夫をされているのではないでしょうか?

生の講談は、相手へ「伝える」ではなく「伝わる」ことの大切さを、改めて教えてくれた気がしました。

「今が一番面白い」=講談の魅力、だと思う

そもそも、私が伯山さんに惹かれたきっかけは、コピーライター・阿部広太郎さん主宰の『企画メシ』で講義された、九龍ジョーさんの本。

企画メシでは、講義ごとに課題に取り組みます。

九龍さんの講義の課題は、「「伝統芸能」を調べて、あなたが見つけた魅力を説明してください」。

自分は、こんな風に答えを出しました。

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実際に、生で伯山さんの講談を観た今も、やっぱりこの答えは変わりません。

講談師・神田伯山さんの魅力は、「今の講談が、一番面白い」と思わせてくれることなのではないでしょうか?

それは、どんな人でも講談の魅力を理解できるように、言葉の表現、語りの速さ、間の取り方など、伯山さんが独自に工夫されているということだと思います。

今回、会場の温度や、様々なお客さんの笑い声を聞く中で、そう感じているのは私だけではないのだと、確信したのでした。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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