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車社会

免許をとってから「車社会」というものを知った
そこは不思議な世界だ

車の顔をした人間が
ものすごい速さで道を行くのだ

スクーター
バイク、自転車、歩行者

みんな同じ人間なのに
車の顔をした人間は
自分が強くなった気がするようだ

邪魔だ
邪魔だ
お車様のお通りだ

トラックやトレーラー
車体が大きければ大きいほど
その強さは増していく

中身は同じ人間なのにね

T字路で右折しようと
車の列が途切れるのを待っていると

右側から
ぬっ
と大きな車の顔が出てきた

左折しようとしている大きな、
ものすごく大きなトレーラーと出会ってしまった

今の私の車の位置では
どう考えてもトレーラーと接触する

トレーラーの運転手は
迷惑そうな顔をして手で何か言ってる

バックしろ、というようなジェスチャーだ

ドキドキしながら後ろに下がる

トレーラーはゆっくりと左折してきた

運転手はお礼を言ってくれた
そんなに怖そうな人じゃなかった。

…あれ?

そうか、もしかしたら
「すみませんがバックしてもらえますか」だったのかもしれない。

それを
「バックしろ」?
「迷惑そうに」?

トレーラーに乗っているというだけで
勝手に語尾を荒っぽく受け取っていた。

偏った見方をしていたのは
他ならぬ私だったのだ。

同じ人間なのに
同じ人間なのにね…

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