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理想の最期

祖母を偲ぶため、いくつかnoteに書いてみようかなと思っている今。

先日天国に旅立った祖母。
母方のおばあちゃん。とにかく夫婦仲が良く、そろって95歳の同級生夫婦。結婚生活72年を超えるおしどり夫婦だった。

おしどり夫婦を表現しようとすると、だいたい祖父にスポットを当てたくなってしまうのは、祖父の愛情がとてつもなくでかいのが印象的だから。


70歳を超えた頃だろうか。祖母の足が悪くなり、歩くのもやっとになってからは、常に祖父が傍につきそい、手を添え、身の回りのほとんどのことを祖父がやるようになった。男児たるもの!な時代に生きてきた祖父がキッチンに立つことはなかったが、気づいた時には「男の料理教室」に通っていたのには驚いた。もうそれから20数年。

80を過ぎた頃には祖母の認知症が始まった。その後も、ずっと祖父母二人で暮らしていたが、祖父の負担が大きくなり、長年暮らしていた街を離れて、母(父方の実家)のところへ同居する形となったのが90歳。それから更に5年経った今。認知症は進み、10分間で何度も同じ話をリピートし続ける祖母を、変わらず近くで支えてきた祖父。誰からも祖父はすごい!と言われ、同じくらい祖母は皆にうらやましがられていた。

「おじいちゃんが先に亡くなったら、色々大変だろうね」

暗黙の了解にならないほど、皆口にしていた言葉。


平均寿命を考慮したら、男性側の方が先に亡くなるパターンが多い。周囲も夫が先に亡くなり、妻は悠々自適に暮らしているパターンが多かった。身体が徐々に小さくなっていく祖父と、身体も態度もひときわ大きくなっていく祖母。認知症の進んだ祖母がひとりになった時のことを考えると、実家にいない私ですら、大変だろうことは容易に想像がついた。


が、祖母の最期はあっという間だった。
母すら最期に間に合わないくらいに。


“みんな好き勝手に言ってたけれど、わし(私)の最期はこんなだよ、ほら。”

と聞こえてきそうで、どうだ!と言わんばかりの最期だった。

前日まで色塗りをしたり、着物をほどいたりして好きなことをしていたという。誰にも迷惑をかけることなく、最愛の祖父(夫)に見守られ、最期をむかえた祖母は、とても穏やかで安らかな表情をして眠っているかのようだった。お気に入りの着物で、たくさんの人に見送られながら。


理想の最期。



誰も自分の最期の形なんて選べない。
だけど、祖母のように逝きたい。最期の形をむかえたい。

眠っているかのような表情を見て想わずにはいられなかった。







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