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アカデミアに転職するための情報収集術

近年、博士号を取得しても大学教員に採用されるのが非常に難しい状況が続いています。
任期付きの教員が増加し、安定したポジションを得るための競争は激化するばかりです。
2024年4月12日付けの朝日新聞によれば、国立大学では32.3%の教員が任期付きの雇用形態にあるとのことです 。
これは、現在、公務員や大企業に努めていて、さらなるステップアップで、アカデミアへの道を選択しようとする方々にとっては、見過ごせる状況ではありません。

今の勤務先の籍のまま、特任教授のポストを併任するなどでなく、安定した公務員などのポジションをなげうってまで任期付きポジションに転職という選択は、わたしは現実的ではない、、、というよりやめた方がいいと思います。

この現実を踏まえ、アカデミアへの転職を目指す際には、効果的な情報収集が不可欠です。

1. 公募情報の収集

大学教員の公募情報は主にJREC-IN(Japan Research Career Information Network)に公開されています。ここには国内外の大学や研究機関の求人情報が掲載されており、アカデミアへの転職を目指す人にとって重要なリソースです。しかし、ただ情報を閲覧するだけでは不十分です。適切な公募情報を見逃さないための工夫が必要です。

JREC-INの利用方法については基本的な操作だけでなく、検索条件の設定やアラート機能の活用が重要になります。
例えば、自分の専門分野や希望する勤務地を詳細に設定し、定期的に新着情報を確認することで、見逃しを防ぐことができます。

などと、知ったかぶりのことを書きましたが、この活用方法は、アカデミアに転職したあとに知ったことです。

正直に書きます。
わたしが現在の勤務校の公募情報を初めて知ったのは、Googleアラートからでした。

2. Googleアラートの活用

Googleアラートとは、特定のキーワードに関連する新しいWeb情報がインターネット上に公開されると、自動的に通知を受け取ることができるGoogle社のサービスです。
これを利用することで、自分の関心のある分野の最新情報を効率的に収集することができます。
すでに、多くのビジネスマンや公務員の方も、特に、自分の仕事に関係することや、趣味のことなどのキーワードを登録されている方も多いのではないでしょうか?

公務員時代は、業務に関連する国の省庁や、関連統計、シンクタンクの分析レポート名などをキーワードとして登録していました。

わたしは課長補佐級でしたので、県庁では本庁の課の中の班長の立場でした。
ですので、新年度初日には、班員を集めて、班のビジョン、ミッションを示し、全員に効果のある仕事術の共有を図っていました。

そこでも、このGoogleアラートの使い方も説明し、事務分掌に合わせた、過去から班内で蓄積してきたキーワードの一覧の共有も行っていました。

一方で、社会人大学院生として学ぶ中で、研究に関連するキーワードの登録もしていました。
こちらは、Googleアラートだけでなく、論文検索ポータルとしても秀逸な、Google Scholarが提供するアラートも併用していました。

ここで、GoogleアラートとGoogle Scholarの違いについて、少し、整理しておきます。

GoogleアラートとGoogle Scholarは、どちらも情報収集に役立つツールですが、用途や機能が異なります。
Googleアラートは、繰り返しになりますが、特定のキーワードに関連する新しいWeb情報が公開されると、設定したメールアドレスに通知を送るサービスです。これにより、最新のニュースやブログ記事、公募情報などをリアルタイムで把握することができます。

一方、Google Scholarは、学術論文や研究資料を検索するための専用エンジンです。研究者や学生が論文を探し、引用文献を追跡し、自分の研究分野の最新の研究成果を把握するのに役立ちます。
つまり、Googleアラートは広範なWeb情報の収集に適しており、Google Scholarは学術的な情報や研究資料の検索に特化しています。両方を活用することで、アカデミアでの情報収集をより効率的かつ効果的に行うことができます。

こうした中で、わたしは修士課程の「専攻名」をキーワードとしてGoogleアラートに登録していました。
その分野の情報収集に適する、キーワードだと考えたからです。
博士課程に進学後も、このキーワードを削除せずに残しておきました。(というか、単なる放置です)
そのため、たまに修士の専攻に関連する情報がGmailに届いていました。
そんなメールの中に、現任校の公募案内が紛れ込んでいたのです。

そのメールが届いたのは、3本目の査読論文がアクセプトされた直後でした。

これは単なる偶然ではなく、日常的に情報を収集し続けることが運を引き寄せたのだと思っています。

そのGoogleアラートからのメールに記載されていたのが、公募案内が掲載された、JREC-INのリンクでした。

過去の記事で、人生って、偶然の積み重ね、と思うことを書きました。

家族が書斎の机の上においた、書店の袋に封入されていた一枚のチラシで、修士課程での学び直しというあらたな選択肢が、わたしの眼の前に現れてきたことです。

そして、今度は、メールに乗って、わたしの転機の情報は運ばれてきたのです。

3. 情報収集の継続と工夫

アカデミアにおけるキャリア構築は長期戦です。そのため、情報収集も継続的に行う必要があります。
その点、Googleアラートは、いったん設定してしまえば、あとはGoogleが勝手に働いてくれるので、楽な方法でしょう。

さらには、以下のような方法も、併用すると効果的です。

ネットワーキング: 学会や研究会、セミナーに参加し、同業者とのネットワークを築くことは非常に有益です。これにより、非公開の公募情報や内部情報を得る機会が増えます。

ソーシャルメディアの活用: LinkedInやX(旧Twitter)などのソーシャルメディアは、研究者同士の情報交換や最新情報の収集に役立ちます。関連するグループやハッシュタグをフォローすることで、リアルタイムの情報を得ることができます。

メールマガジンの購読: 研究機関や学術雑誌のメールマガジンに登録することで、最新の研究動向や公募情報を定期的に受け取ることができます。

4. 朝日新聞の記事を参考に、アカデミア転職の現状を考える

冒頭に紹介した朝日新聞の記事ように、博士号を持つ研究者であっても、任期付きのポジションしか得られないことが多いのが、アカデミアを就職先と見たときの現状です。
この記事によれば、2023年度の任期付き教員の割合は32.3%であり、特に40歳未満の教員の59.3%が任期付きとなっています 。
この不安定な雇用状況は、研究者のモチベーションやキャリア形成に大きな影響を与えています。

国立大学の法人化に伴い、運営費交付金が11年で1,470億円削減されたことも大きな問題です。
記事の中でも、旭川医科大学の西川祐司学長は、「基盤的経費の配分が今後も減額され続けると、多くの国立大学は人件費を含めた経費削減に踏み切らざるを得なくなるのではないか」と懸念を示しています 。

最近では、国立大の財務について「もう限界」という、国立大学協会が異例の声明をだしたことが、各方面で注目を集めました。
このニュースを、ご覧になられた方も多いのではないでしょうか?

こような状況下で、安定した教員ポジションを得るのはますます困難となっています。

5. 最後に

わたしは、偶然のタイミングで、自身のニッチな専攻分野のポストがぽっかり空いた情報を、Googleアラートが運んできてくれました。

アカデミアへの転職は決して簡単ではありませんが、適切な情報収集と継続的な努力が成功の鍵となります。
特に、GoogleアラートやJREC-INなどのツールを駆使し、最新の公募情報を逃さずキャッチすることが重要です。
また、アカデミア業界へのネットワーキングも欠かせない要素です。

朝日新聞の記事にあるように、任期付き教員の増加や運営費の削減など、厳しい現状が続いています 。
しかし、このような環境下でも、自分の目標に向かって努力を続けることで、道は開けるはずです。

情報収集術を駆使して、アカデミアでのキャリアを切り開いていきましょう。

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