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先天性耳瘻孔という病気

「先天性耳瘻孔」とは、生まれつき耳の周囲に小さな穴が空いていて、管(または袋状)になっている状態のものをいいます。
病気と書きましたが、ただただ小さな穴が空いた状態というだけで、ほとんどの場合自覚症状はありませんし、日常生活に何の支障もありません。
日本人の10〜20人に1人は耳瘻孔であると言われており、耳瘻孔を持つ人の大多数は、穴も小さく無症状だといわれています。

耳瘻孔の穴内面は皮膚と同じ。そのため、皮脂腺・汗腺などが存在しています。袋状のため穴の内面の皮脂や汗、剥がれた角質などが溜まりやすく、時に、白い分泌液が外に出てくることもあります。触りすぎるのは良くありませんが、おへそのケアと同様にたまに掃除してあげる程度で、多くの場合、全く心配はありません。ご自身やお子さんの耳にそういった異常があっても、腫れや痛みがなければ、病院で相談しても経過観察することがほとんどでしょう。

しかし頻繁にさわることで指先などから細菌が侵入して炎症を起こしやすくなります。穴が袋状なので、膿が溜まりやすく、再発を繰り返してしまいます。

わたしのケースは、炎症の再発を繰り返すパターンでした。そんなに「頻繁に触る」ってことはしてないと思うんだが。無意識のうちに気にして触っていたのかも知れない。
長年にわたり痛みを伴う腫れを年1〜2回のペースで何度も再発していました。
感染を起こして膿が溜まり皮膚が腫れる。穴の周りはもちろん、耳の後ろまで膿が溜まって腫れるようになっていきました。炎症が起こるたび、中で膿が破裂するような感じで、アリの巣状にどんどんと穴が深まっていったんだろうということでした。
見た目には全く分かりませんが、耳の前側の小さな穴が、発症のたびに少しずつ穴の体積を押し広めていたのか…。耳の軟骨を突き抜けて後ろの方まで穴が広がっていったっんだって。怖いね。

だからと言って、命に関わる病気とかそういうことはありません。緊急性はありませんが、再発を繰り返し、その度に強い抗生物質を飲んで炎症を治めていました。薬の効きがだんだんと悪くなってきていたのも事実です。

ついに二十歳の夏、耳瘻孔を全て除去する手術を受けることになりました。
「年に1度は発症しているんでしょう?それじゃ、もう取っちゃいましょう!」って医師から言われました。
穴がどこまで奥に通じているのかわからないという点、それに加えて患部(耳)は脳ととても近い部分であることから、手術は全身麻酔でおこなわれました。耳周りの直径2〜3センチ程度のことなのに、全身麻酔という結構大掛かりな手術でした。
わたしのような症例は珍しく、手術中は研修医さんたちの見学があったらしいです。わたしは麻酔で意識がなく全く知りませんでしたが、術後母から聞きました。
数時間の手術で無事に生還。命の危険がある手術ではないですけど、全身麻酔で、全身なんの感覚もなくなり無意識になるという体験は貴重ですね。

耳瘻孔は手術で全て除去し、術後20年が経ちます。しかし手術痕というのは厄介なもの。低気圧になると違和感が出たり、傷口が突っ張ったり、疲れて免疫力が低下したりすると傷口が痛んだりします。耳は頭に近いので、頭痛も併発します。20年経ってもです。発症すると厄介な病気です。

天気の悪い日や、疲れが溜まったときは、耳の手術痕が痛み、ある意味自分の不調の目安になっているのかもしれません。

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