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2022年 個人的年間ベストアルバム

 2022年は来日アーティストのライブに行ったり、音楽フェスに参加したりと、比較的以前の生活が取り戻せるようになってきた一年でした。

 そんな2022年もほぼ終わりに近づきつつあります。毎年のように、今年も何もやらなかった…、と焦燥感を抱えつつ年末を迎えている気がします。なので、何か一つやって今年を終わろうということで、今年は個人的ベストアルバムについて簡単に記事にしてみました。

まえがき

 今年は、年間ベストアルバム10枚+その他良かったアルバム16枚の計26枚を選出しました。一応トップ10は決めていますが順位付けはざっくりです。また26枚には雑なコメントをつけています。なんか色々と中途半端になってしまったのは面倒だからです。自分を許そう。

 自分の選出の基準としては、繰り返し聞いた作品(これからも繰り返し聞きそうか)を軸にしています。なので完全に個人の趣味・主観による選出です。そんなに多くの枚数は聴けていないのと、自分の新譜の探し方はTwitterが80%+大手レビューサイトが20%とかなので、メジャーどころ中心で面白味のない内容になったのは否めませんが、それでも良ければ本編へどうぞ。


良かったアルバム16選

MY REVOLUTION / ゆうらん船

Songwhip

 前作では古き良き日本語のインディーフォーク/カントリーの曲を独自のスタイルにアレンジして聞かせているイメージだったが、今作ではかなりUSインディに接近したサウンドに。曲はよりシンプルになった一方で耳に残るメロディーが増えた。余白を感じるミニマルなアレンジが格好いい作品。

I Walked With You A Ways / Plains

Songwhip

 Waxahatchee と Jess Williamson によるコラボプロジェクト。一聴して完全に自分の好きなタイプのやつだった。カントリー色強めながもキャッチーで、ボーカルのハーモニーが美しく温かい。一回きりのコラボらしいけど、頼むからもっとやって欲しい。

ILYSM / WILD PINK

Songwhip

 沁み渡るボーカルに雄大という言葉がめちゃくちゃ似合う。前作でも感じたけど、彼らのアルバムを聞くと旅をした気分になれる。後半のまるで1曲のように自然にかつドラマチックに展開していく流れがとても秀逸。フロントマンのJohn Rossが癌になった経験を経て作られた作品ということで、病から回復してこれからも素晴らしい音楽を届けてくれることを願う。

This Is What I Mean / Stormzy

Songwhip

 ヘビーなラップは少なく、落ち着いて語りかけるようなラップと良いメロディーの歌を聞かせる作品。ピアノやエレピをフィーチャーしたR&B調のメロウなトラックが良い。HIPHOPはほとんど門外漢な自分でも入り込み易かった。

Les Micé blue / syrup16g

Songwhip

 再結成後の作品は何となく聞けておらず、今作にて久しぶりに聞く。サウンド、歌詞ともにどこまでも五十嵐隆節が全開であることに何故か安心した。相変わらず、聞いているとふとした瞬間に心に刺さる歌詞を放り込んでくるので困る。

C'MON YOU KNOW / Liam Gallagher

Songwhip

 リアムのソロ後の作品で一番好き。ボーカルのリアム節は健在だが、ビートルズを思わせるサイケ、パンク調、シリアスな展開な曲など多種多様な新しい試みが感じられる。遂にOASISの呪縛から抜け出せたのでは。

Dance Fever / Florence and The Machine

Songwhip

 完全に貫禄漂う存在になったFlorence Welchの厚みがあるパワフルなボーカルを堪能できる。「King」の“I am no mother, I am no bride, I am King(私は母でも花嫁でもない、王なのだ)”という歌詞に覚悟すら感じる。ダークな曲調ながら高揚感を感じる作品。

caroline / caroline

songwhip

 ロンドン謎の8人組音楽集団(らしい)。上手く言い表せないので雑に単語を並べると、シカゴ音響派、フォーク、アバンギャルド、エモ、等々。メロディーが良い歌ものと見せかけて、ラストから怒涛の即興性を見せだすトラック群に驚かされる。

Being Funny In A Foreing Language / The 1975

Songwhip

 前作の長大で少々散漫気味だった作品から打って変わってコンパクトに。またサウンドはアコースティックを基調としたものになりつつも、80年代風のキーボードやカッティングギターなどを取り入れ、爽やかで生き生きとしている。「Oh Caroline」は2022年の個人的ベストメロディートップ10に入る。

Betsu No Jikan / 岡田拓郎

Songwhip

 Twitterで知り、2022年最も印象に残った。ステータスを音響に極振りしたのかと思う作品(もちろん他の内容も良い)。とにかくこだわっているであろう音の奥行きと定位感が圧倒的で、その中をただゆるやかに流れていく音に良い意味で酔える。集中できる気がしたので在宅勤務中によく聞いていたが、聞く度に毎回違う発見があるアルバム。

Quality Over Opinion / Louis Cole

Songwhip

 リリース当初、20曲70分という長さに聞くのを躊躇してしまっていたけど、いざ聞いてみるとさらっと聞けてしまう作品。卓越したドラマーでもあるLouis Coleのソングライティング能力の高さが発揮された作品。あとバラードナンバーでのボーカルのファルセットが凄い。そして足をグネグネさせるのも上手い。天に三物も四物も与えられし者とは彼のこと。

 Misadventures Of Doomscroller / DAWES

Songwhip

 今年知れた中で一番良かったバンド。フジロック前にTwitterで紹介されていたところから。もう少し早く知っていれば現地に見に行ってた。アメリカのルーツミュージックから間違いなく影響を受けているであろう、いぶし銀で少し泥臭くもあるオルタナカントリーの雰囲気。「Someone Else's Cafe / Doomscroller Tries To Relax」の途中の展開で入ってくるジャムっぽいインストセクションが格好良く、コピーしたくなって久々にギターを引っ張り出してしまった。

Emotional Eternal / Melody's Echo Chamber

Songwhip

 フランス出身のMelody Prochetによるプロジェクトの3rd。ウィスパーボイスの儚げなボーカル、くっきりとしたベースラインと浮遊感のあるシンセや弦楽器のサウンドが神秘さとサイケ感を同居させている。どこか民族音楽っぽさを感じるメロディーが癖になる。

Weather Alive / Beth Orton

Songwhip

 静寂の中で美しい音楽が鳴らされているという情景が浮かぶ作品。自分の奥深くまで染み入る感覚。ハスキーで少し影のあるボーカルに浸れる。

Feed The Dog / Klein Zage

Songwhip

 これもTwitterで知る。"トリップホップとシューゲイザーの交差点"という触れ込みだけど、これはトリップホップなのだろうか。トリップホップ自体は正直あまり馴染んでいないジャンルだけど、ドリームポップっぽいギターや重ねられたコーラスがフックになって聞きやすかった。

SOS / SZA

Songwhip

 年末に滑り込みで入ってきたアルバム。トラックのリズムはR&Bらしい音だが、上物が鳴らす音は全体的に柔らかく、そこに軽快なボーカルが重なってとても聞きやすい。まだあまり聞き込めてないけど今後の付き合いは増えそう。2022年の個人的ジャケット選手権では堂々の1位。



年間ベストアルバム10選

10. EXPERT IN A DYING FIELD / The Beths

Songwhip

 NZ出身のポップロックバンドの3rd。前作までの良い意味での粗さ、ギターポップ特有の突っ走る感じは幾分落ち着いた一方で、洗練された曲に一層磨きがかかっている。とにかくグッドメロディな曲が多すぎて、外で聞いているときについ口ずさみたくなるのが困ったり。あとラストトラックでスローながらも徐々に盛り上がっていく感じが、アルバムを上手く締めていると思う。余談だけど、初見ではなぜかジャケットの魚に気づけず、あとからアハ体験した。

フェイバリット:「Expert In A Dying Field」、「When You Know You Know」、「2am」

9. Lucifer On The Sofa / Spoon

Songwhip

 アメリカのインディーロックバンドの10th。ギターロックが下火になって久しいこのご時世に、ミニマルなギターサウンドを中心に据えて勝負してくる心意気に惚れた。ソリッドでタッチノイズ満載なギターリフと、キーボードの絡みがとにかくカッコいい。活動期間はもうすぐ30周年を迎えるベテランバンドながら、アルバム毎に方向性を少しずつ変化させてくるところが凄いと思う。

フェイバリット:「Held」、「Wild」、「On The Radio」

8. Florist / Florist

Songwhip

 アメリカNYのインディフォークバンドのセルフタイトル4th。アルバムは19曲あるけどインスト/アンビエントがほぼ1曲ごとに挟まる構成となっている。これが曲間を緩やかに繋いでいて、まるで綿密に連なった1曲を聞いている印象に。優しい歌声に包まれながら穏やかに時が流れていき、秋の夜長にとても合う。あと「43」みたいなアコースティックに歪んだギターソロが入ってくる曲が個人的にドンピシャで好み。

フェイバリット:「Two Ways」、「43」、「Feathers」

7. Hiding In Plain Sight / Drugdealer

Songwhip

 これもTwittetから知って本作が初聴。サイケシーンで活躍するMichael Collinsのプロジェクトとのことだが、本作はサイケ感は薄く70年代のR&B/ファンクのヴィンテージな感じがうまく現代に落とし込まれている。全体を流れるゆるい空気感が、西海岸をクラシックカーに乗って走っているような心地よさを生んでいる。アメリカの風を感じにLAまで行きたくなる作品。

フェイバリット:「Pictures of You」、「Valentine」、「Posse Cut」

6. Surrender / Maggie Rogers

Songwhip

 アメリカのSSWの3年ぶり2nd。少し気怠さを感じさせつつも、力強く伸びやかなボーカルで歌いあげるのがどこまでも気持ち良い。少し抑え目なヴァースと、高音域で歌うコーラスとのコントラストが効いているな曲が多くて好き。結局こういうのに自分はグッとくる。コロナ禍で一時音楽活動から離れて大学で芸術を学んだらしく、やりたい表現が見つかったのか、曲のスケールが広がってドラマチックになったと思う。ぜひライブで聞きたい。

フェイバリット:「That's Where I Am」、「Horses」、「Begging For Rain」

5. 物語のように / 坂本慎太郎

Songwhip

 ソロ以降の作品はあまり聞けてなかったけど、今作は体を揺らしたくなる極上のポップアルバム。聞いた後は爽やかな気分になれる。素っ気ない少し気の抜けた歌い方に、オールディーズだけどフレッシュなサウンドがマッチしていると思う。坂本慎太郎ってこういうボーカリストだったのかというのが際立っており、個人的に凄く腑に落ちた。あと坂本慎太郎の歌詞って一見普遍的なんだけど、歌に乗ると異彩を放ってくるのがいつも不思議。

フェイバリット:「まだ平気?」、「君には時間がある」、「愛のふとさ」

4. PAINLESS / Nilüfer Yanya

Songwhip

 UKのSSWの2nd。ロックを軸としつつも、ソウル、グランジ、ジャズ他いろいろなジャンルの要素の美味しいところを取り出して、絶妙に00年代っぽさと混ぜ合わせた感覚。一曲目から人力ブレイクビーツのようなドラム、ドリーミーなギター、浮遊感のあるコード進行、少し冷たさも感じるボーカル、と畳みかけられて完全にハマった。何となくダークで憂鬱な夏といった趣きを感じさせる作品。

フェイバリット:「the dealer」、「midnight sun」、「try」

3. Blue Rev / Alvvays

Songwhip

 カナダのドリームポップバンドの3rd。何となく繊細なバンドという勝手なイメージを持っていたけど、今作ではダイナミックというか奔放になりつつもストレートに正統進化してきた。とにかく一曲一曲のメロディーが強すぎる。そこにケヴィン・シールズよろしくトレモロアームによる不安定な音程のギターが重ねられ、さらにサウンドの輪郭がはっきりしたことでドライブ感が増した先の情景。いつの間にかインディーポップシーンを完全に牽引する存在に。タイトルはカナダ東部の島のアルコール飲料が由来らしい。味が気になるところ。

フェイバリット:「Pharmacist」、「Tile By Tile」、「Belinda Says」

2. Dragon New Warm Mountain I Believe In You / Big Thief

Songwhip

 USインディーロックバンドの4th。タイトルも再生時間も長い。しかし、ここまでに紡ぎ上げた彼らの物語の集大成となっている。4ヶ所のスタジオセッションで作り上げたというサウンドがバラエティ豊かで聞いていて楽しいアルバム。前作までに漂っていた緊張感は後退し、比較的キャッチーで聞きやすい上に、カントリー、インディーポップ、フォークとなかなか幅広い作風を感じさせる曲がずらっと並んでいて飽きさせない。しかも今作は50曲書き上げその中から20曲を選曲したというからその多作ぶりには驚く。ぜひアウトテイク集、というか新アルバムも出して欲しい。あと(来日ライブを経て)、個人的にBuck Meekはいま一番信用できるギタリストの一人だと思っている。

フェイバリット:「Time Escaping」、「Little Things」、「No Reason」

1. BADモード / 宇多田ヒカル

Songwhip

 今年の個人的ベストアルバムで、間違いなく2022年一番聞いた作品。いわゆる"人間活動"からの復帰後の3作目。近作に引き続きトラックはシンプルな構成でありつつも、生楽器と電子音が上手く融合した繊細で豊かなサウンドが凄く好み。「BADモード」の一音目の優しげなエレピの音からしてヤバい。このあたりは参加プロデューサー陣の功績が大きいのかなと。そして、そこに軽快に語りかけるようなボーカルがうまくマッチしているし、やはりボーカルの表現力は飛び抜けていると思う。アルバムのド初っ端から入る絶妙なフェイクや、「え?そこで?」みたいなブレスの切り方等、聞いていてハッとさせられる瞬間がとても多い

 人間活動前の作品は世代的にドンピシャだけど、個人的には聞いていてどこかサウンドの心地悪さを感じていた。しかし復帰以降の作品、特に今作はそれが感じられず、ボーカルの良さが最大限引き出されている。宇多田ヒカルを真に知れた作品になったのではと思う

 あと本作のスタジオセッションの音源が非常に素晴らしいのでぜひ聞いて欲しい。こっちが裏ベストかも。Netflix契約してる人は映像でもぜひ。これ見るために再加入したぐらい良かった。

フェイバリット:「BADモード」、「Find Love」、「Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー」



あとがきに代えて

 実は7~8年ぶりにWEB上で記事を書いたので、何をどう書こうかとか、昔はどんな文体で書いていたかとか、全く思い出せず、正直かなり難航しました。

 自分は00年代後半~10年代前半ぐらいが恐らく一番音楽を聴いていた時期で、就職して仕事が忙しかったこともあり、音楽(その中でも特に新譜)にはあまり触れずに過ごしてきました。その後2019年あたりからまた触れるようになったのですが、その中でも2022年は一番新譜を聞いた年になったと思います。せっかくなので聞いて感じたことを日記のようなものにでも残しておこうと考え、今回記事を書くに至りました。なお文章を書いていて、「自分の語彙力のなさが恨めしい…」となったので、もう少しアウトプットを増やせればと思っています。

 最後に、おまけとして選んだアルバムから選曲したプレイリストを残しておきます。まだ未聴の曲があればこちらからどうぞ。

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