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2022年7月の記事一覧
ビール傘【毎週ショートショートnote】
知り合いに登山に誘われたので同行することにした。
今回の目的地は彼女だけが知っている秘密の場所で、ある変わった山の恵みにありつけるとのこと。
山頂を目指すコースから横に逸れ、獣道のような険しい山道を登った先に彼女の言う山の恵みは存在していた。
それは黄金色に輝く傘茸(カラカサダケ)のことで、大地に自生するそれはまるで樽から出したばかりの生ビールのように美しい。琥珀色の傘の上にちょこん
チャリンチャリン太郎【毎週ショートショートnote】
茶林茶 倫太郎(ちゃりんちゃ りんたろう)は思春期を迎えたとき、両親に自分の名前のことについて訊ねた。
名前というものは生涯自分についてまわるものであり、とくに茶林茶という苗字はとても珍しく日本に4人くらいしかおらず、両親と自分を加えたらあと1人だけ。残りの1人は叔父さんで日本に茶林茶は彼が知ってる4人しかいなかった。だから気になるのは当然であった。
父はそんな倫太郎に、元々はね、茶林(
ふりかえるとよみがえる【毎週ショートショートnote】
うちの近所の古いお寺はとても変わったカエルの像があることで知られている。
こういった動物の彫像で有名なのは言わずと知れた日光東照宮の三猿だろう。『見ざる言わざる聞かざる』と言ったら、目、口、耳を両手で押さえた三匹の猿の姿が頭に思い浮かぶはず。
だが、うちの近所のやつはちょっと変わっていてパッと見ただけではよく分からなかったりする。
言い伝えでは『ふりカエルとよみガエル』となっていて、それにち
サラダバス2【毎週ショートショートnote】
晩御飯を食べ終えて、優雅に食後のコーヒーをたのしんでいたら、「今日は疲れたでしょう。先にお風呂に入ったら」と妻に勧められて、風呂に入ることにした。
だが、脱衣所に入ってすぐ、なんだかいつもと雰囲気が違うことに気づいた。
壁にかかっているバスタオルが、大きなレタスの葉っぱに変わっていたのだ。薄緑色の一反木綿みたいなそれは、どこからどうみてもレタスの葉っぱにしか見えなかった。ただし、ジャンボサイズ
サラダバス【毎週ショートショートnote】
うちの近所の池には、とても珍しい魚が棲みついる。
陸からも巨大な魚影は確認できるのだが、普通の疑似餌には見向きもせず、生き餌にもまったく反応を示さない。
これまでも何人もの凄腕アングラーたちがこの怪魚を釣るためにこの地を訪れたが、どれだけ頑張っても釣れないので泣く泣く帰る羽目になった。
そんな凄腕たちを苦しめる怪魚の正体とはいったいなんなのか。
実は、たんなるブラックバスなのだが、獰猛な肉
カミングアウトコンビニ3 【毎週ショートショートnote】
最近、家の近所に新しいコンビニができた。
その店の名は『カミングアウトストア』。そんなチェーン店まったく知らないよ。なんで『セブン』とか『ファミマ』じゃないの、というのができた当初住民の不満だった。
ただ、このコンビニ一風変わっていて、名前の通りいろんなことをいちいちカミングアウトしてくるのである。たとえば「ペットボトルの水は、天然水って書いてるけど、実は中に詰められてるの水道水ですよ」とか「
カミングアウトコンビニ2【毎週ショートショートnote】
数年前まで、ぼくの町にあったコンビニは万引き犯ゼロということで有名だった。
それも開店以来ゼロである。一人もいないというのはすごい記録である。
なぜゼロだったかというと、そのコンビニで盗みを働いた輩は、必ず何か不思議な力が働いて、自分の罪をカミングアウトしてしまうからだった。
これは実際にその店で万引きを試みた同級生の話なのだが、たとえば菓子パンをカバンに隠して店を出ようとする。と店を出る直
カミングアウトコンビニ【毎週ショートショートnote】
わたしの働いているコンビニは田舎にある。
田舎あるあるなのだが、深夜になると広い駐車場目当てに続々と暴走族が集ってくる。
見たこともないくらい長いマフラーだったり、極端なシャコタン車だったり。一言でいえば改造車の万国博覧会で、エンジン音をぶいぶい吹かせるから迷惑極まりない。
でも田舎町なので、いくらマスクをしたり髪を染めたりしてみても、なんとなく誰だか分かってしまうのだ。「あー、あの子は○○