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ふりかえるとよみがえる【毎週ショートショートnote】

うちの近所の古いお寺はとても変わったカエルの像があることで知られている。

こういった動物の彫像で有名なのは言わずと知れた日光東照宮の三猿だろう。『見ざる言わざる聞かざる』と言ったら、目、口、耳を両手で押さえた三匹の猿の姿が頭に思い浮かぶはず。

だが、うちの近所のやつはちょっと変わっていてパッと見ただけではよく分からなかったりする。

言い伝えでは『ふりカエルとよみガエル』となっていて、それにちなんだ一組のカエルの像が境内のあちこちに彫られているのだが、こっちを振り返っているカエルの像がふりカエルというのは分かるが、もうひとつの像は作者も作るとき相当悩んだのだろう、なぜか逆立ちするカエルの姿をした像になっている。だいたい蘇るを彫像で表現しようとするのが無理筋なのだ。

境内には、そんな『ふりカエルとよみガエル』の由来を記した立て札もあったりするのだが、振り返るといったい何が蘇るのか、寺の関係者も誰一人分からないそうである。

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