カミングアウトコンビニ2【毎週ショートショートnote】

数年前まで、ぼくの町にあったコンビニは万引き犯ゼロということで有名だった。

それも開店以来ゼロである。一人もいないというのはすごい記録である。

なぜゼロだったかというと、そのコンビニで盗みを働いた輩は、必ず何か不思議な力が働いて、自分の罪をカミングアウトしてしまうからだった。

これは実際にその店で万引きを試みた同級生の話なのだが、たとえば菓子パンをカバンに隠して店を出ようとする。と店を出る直前に、なぜか自分から盗んだ菓子パンをカバンから取り出して罪の告白を始めてしまうらしい。『わたしが盗みました』って。

だから店があったあいだ、一度だって万引きに成功したやつはいなかった。

ならなんでそんなすごいコンビニが潰れてしまったかというと、雇われ店長だった男が店の金を横領したのをカミングアウトして捕まって以来、店長のなり手が見つからなかったことにあるらしい。人は誰だって、嘘のひとつくらい吐きながら働きたいと思うものなのだ

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